「『こちらの写真お譲り頂けないでしょうか。』
突然届いた1通のメール。怪しい件名に内容を見ずに削除した。後日、同じ件名でメールが届く。またか…と、とりあえず内容を見ると、送信主は僕がブログに掲載してた山の頂上の写真を欲しがっていた。そんなもの、画像コピーすりゃいいのに」。
知らない人物からのメッセージに込められた思いは何だったのか。この話には続きがありました。
メールを送ってきた人物は子どもの写真を探す親御さんだったそう。その人は「息子を火災で亡くした時に写真も全て焼けてしまった。そのため、息子が過去に訪れた場所の写真をネットで探していた」と話し、偶然にも子どもの姿を見つけて連絡したとのこと。
親御さんが「画像の保存方法がわからない」と訴えていたことからも、パソコンの操作に苦労していたことが窺えます。そのような状況で、我が子の面影を1年も探し続けていたようです。
リプライには「たった1枚、何気なく撮った1枚にも大きな価値や意味もあるんですよね。」「必死になって探す親御さんの気持ち痛いほどわかります」「大切なわが子の写真はどれも大切。たとえ背中の写真でも愛おしいもの」「本当に「奇跡の一枚」ですね」など、感動を伝えるコメントが多数寄せられました。
どこの誰かも分からない人物からの唐突な依頼ながらも、画像をプリントアウトし郵送した投稿主のつっきーさん(@psypsytuki)に、詳しいお話を聞きました。
――約20年前の出来事をツイートしたとのことですが、今でも特別なエピソードですか?
「“1枚の写真から誰かを探し出す”というエピソードはよくテレビなどで紹介されますが、自分にもそういう出来事が起きるなんて…と、びっくりしたのでよく覚えています」
――問い合わせのあったブログの記事はどのような内容?
「地域で行っていた“科学教室”という集まりで、登山をし、山奥で生息している生き物を観察する体験を記事に書きました。写真は、山の頂上で撮影したものでした。
昔から文章を綴ることが好きでしたので、ふだんのブログでは、自分の心情を表現したポエムや、普段の日常で感じたこと、学生生活、風景の写真などを掲載していました。今思うとちょっと恥ずかしいですね」
――コンタクトを取ってきた親御さんのことをどのように思いましたか?
「内容の真偽よりも、シンプルに“なんとかしてあげたい”という気持ちが強かったですね。“子を亡くした親の気持ち”はわかりませんが、“会いたいのに会えない”というのは寂しいものだと、素直に感じました。
当時の僕は実家を離れて地方の大学に通っていて、初めての1人暮らしを経験していた頃でした。親のありがたみ、そして若干のホームシックもあって、その親御さんの思いが余計に心に響いたのかもしれません」
――ご自身にとって写真とは?
「“写真”とは”その瞬間”を閉じ込めたもので、見るだけで当時の事が蘇ってきます。その本質は今も昔も変わらないと感じています。
ただ、SNS・スマホの普及もあり“影響力”は高まっている印象を受けます。その影響力を“良い”ものにするか“悪い”ものにするかは私たち次第だと感じます。どうせなら“良い”ものにしていきたいですよね」
◇ ◇
最後に指摘されたように、写真の使用法については、さまざまな問題がつきまといます。最近は他人が撮影した写真や動画を自分が撮ったかのように投稿するアカウントも。オフィシャルのアカウントやブログの写真については、今の時代、簡単に保存できてしまいますが、著作権や肖像権があることを忘れてはいけません。気に入ったからとはいえ、無断で使用しないようにだけはご注意を。