繁殖引退の「柴犬」を家族に迎えたが、度重なる出産で体がボロボロ 衰弱した今も不登校児を癒す優しい犬

はやかわ リュウ はやかわ リュウ

感情を封印した「繁殖犬」から、不満や甘えを表せるように

カラスのイタズラにも怒らなかった、穏やかなこはるちゃん。しかし、長年の度重なる出産・授乳の影響なのか、今年に入って急激に体調が悪化。西林さんによると、こはるちゃんはお迎え当初から、「足が細くて筋肉もほっそりしているようにみえる」と、獣医師から診断されていたらしい。

「今思えば、度重なる出産で栄養を子どもたちに分け与え続けたことで骨が細くなっていたのかもしれません。急激な体調悪化も、そういったことが要因になっているのかもしれませんね…」(西林さん)

現在、こはるちゃんは高齢犬用のミルクと水分、点滴だけでなんとか持ちこたえている状態だという。

「それでもこはるは、生徒さんたちを喜んで迎え、見送ろうとしてくれます。長く繁殖犬として生きてきたこはるの犬生は、きっと苦しみと悲しみに満ちたものだったと思います。我慢してやり過ごす生き方を選んで来たのか、飼い主である私にも、完全には心を開いてくれていないように感じられます。

ただ不思議なもので、病を得たこはるは『フンッ!フンッ!』と、強く鼻を鳴らすことが増えました。それまであまり感情を表に出さなかったこはるが、『のどがかわいた!フンッ!』『おしっこ出る!フンッ!』『怒ってる!フンッ!』と、不満を伝えてくれるようになったのです。不満をあらわにして、少しだけ甘えてくれるようになったこはるを、今まで以上に愛おしく感じます。もしかしたら、こはると一緒に桜吹雪の下を散歩できないかもしれないと思うと、こはるとの時間が何ものにもかえがたく感じられ、一瞬一瞬を悔いの残らないように過ごしたいと思う毎日です」(西林さん)

大切なきっかけをくれた「こはるちゃん」

生徒たちを癒すアイドル犬として、今では教室を支える大切なスタッフの一員だという、こはるちゃん。こはるちゃんもそんな生活を楽しんでくれているのでは、と思う反面、「繁殖犬引退後に、こはるにストレスのかかる仕事を押し付けてしまったのではないか?ゆったりとした余生を過ごせた方が幸せだったのでは?とも思います」と、西林さんは言う。

「それでもこはるの存在が、繁殖引退犬を迎えるということ、生きものと共に暮らすということ、命を預かるということなど、本当の意味でのアニマル・ウェルフェアを考えるきっかけを、子どもたちだけでなく、私どもスタッフや保護者の皆さまにも与えてくれたと思っています」(西林さん)

日本の天然記念物にも指定されている「柴犬」。種の存続が危ぶまれた時期もあり、その血統を守ることは非常に大切だ。しかし、親犬たちの健康や命に関わるような無理な繁殖や劣悪な環境での飼育は絶対にあってはならない。

なお、現在、日本では、2019年に公布された「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、牝犬の生涯出産回数は6回まで、交配時の年齢は6歳以下と定められている。

■西林さんのInstagram「nishibayashitakuya_private」

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■西林さんが運営するスクール「NOBINOBI」(マンツーマン個別指導塾)

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