皮膚病で顔が真っ黒だった柴犬をお迎え→毛も生えて見違えるほどきれいに 先住猫とも仲良く幸せな日々

岡部 充代 岡部 充代

 今年のゴールデンウィーク、神戸市東灘区にあるショッピングモールの一角で写真展が開催されました。モデルは2頭の元保護犬。そのうちの1頭、柴犬のハルちゃんは昨年4月に奈良の動物保護団体『world love heart*』から、神戸に住む杉原世志子さんのおうちへやって来ました。保護当時は「めぶきちゃん」という名前でしたが、杉原家で「ハル」に改名。その理由は…。

「春に出会ったのと、実際に迎えるまで『は~るよこい♪』と歌いながら待てるなと。写真の勉強をしていて、写真展をするときは『ハルがきた!』というタイトルにすると決めていたこともありました」(杉原さん)

 歌いながら楽しそうにお迎えの準備をする杉原さんの姿が目に浮かぶようです。もちろん、写真展のタイトルは『ハルがきた!』でした。

 

介護や看取りまで考えて

 実はハルちゃん、里親さんはなかなか見つからないだろうと思われていました。推定7歳という年齢に加え、保護当時はひどい皮膚病で、顔や足、お腹が真っ黒だったからです。杉原さんが里親募集サイト『ペットのおうち』で見た写真もすべて、体のあちこちの毛が抜け、黒く色素沈着していることが分かるものでした。

「あのとき、あの写真を見てなぜ惹かれたのか分かりません。ただ、皮膚病の原因はマラセチア(皮脂などを好む酵母様真菌)ということだったので、ちゃんとケアすれば治るし、常在菌だから同居する猫たちに移る心配もない。7歳という年齢も、性格が穏やかだと分かっていて、お留守番できるならちょうどいいと思ったんです。介護が必要になるかもしれない時期と自分の年齢を考えても、ちゃんとお世話して看取れるなと」(杉原さん)

 介護や看取りのことまで考えたのは、先住犬の経験があったからです。杉原さんは30年以上、犬や猫と暮らしてきましたが、2020年9月に見送ったフランちゃんは大型犬のゴールデンレトリーバー。介護も大変でした。

「1年前に父を亡くして、働きながらひとりで介護しないといけませんでした。幸い職場が近かったので、仕事を抜けて家のどこにしているか分からない糞の掃除をしに帰ったり、犬友の協力があって何とかできましたが、本当に大変で、犬を飼うのはこれで最後だなと思っていたんです」(杉原さん)

 ところが、同じように愛犬を亡くした友人が新しい子を迎えたと聞いて、羨ましくなった杉原さん。里親募集サイトにさまざまな条件を入力していくと、該当する犬はとても少なく、その中の1頭がハルちゃんだったのです。奈良まで会いに行くと、譲渡が難しいと考えていた団体スタッフはとても喜んでくれたとか。トントン拍子に話が進み、昨年4月17日、めぶきちゃんはハルちゃんになりました。

 

ハルちゃんに春が来た!

 さて、ハルちゃんの皮膚病ですが、1年以上たった今も病院とは縁が切れません。マラセチアの数は正常値に戻り、毛も生えて見違えるほどきれいになりましたが、もともとアトピー体質だったようで、かゆみとの闘いが続いています。

「食べるものはカリカリフードと缶詰で対応できています。薬はステロイドの量を減らしつつ、今は抗ヒスタミン剤と免疫抑制剤で何とか。どういうときにかゆがっているかを観察してかゆみの程度を判断し、薬を飲ませるかどうか決めています。薬代は半端ないですが、うちに来たからにはうちの子ですからね。責任があると思っています」(杉原さん)

 

 最初は「無表情でいつも疲れているように見えた」というハルちゃんですが、家に慣れてくるとゴミ箱をひっくり返すなどいたずらもするようになりました。

「動物病院の診察室に入るのを嫌がりだしたときには、先生から『だいぶ犬らしくなってきたね』と言われました。いつもされるがままだったのが、自己主張できるようになったのはいいことですよね」(杉原さん)

 先住猫のサブ子ちゃんとアンジーくんとの相性も悪くなく、3匹で一緒にいることが多くなったそう。「もともと猫2匹はすごく仲がいいというわけではなかったんですけど、ハルが来てから“家族感”が出てきました」。そう話す杉原さんを、部屋の奥からじっと見つめるハルちゃん。保護当時はガリガリに痩せてあばら骨が浮いていてそうですが、今では体重が3キロ以上増え、毛並みもきれいになりました。ハルちゃんにも春が来たね!

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