繁殖引退の「柴犬」を家族に迎えたが、度重なる出産で体がボロボロ 衰弱した今も不登校児を癒す優しい犬

はやかわ かな はやかわ かな

新潟県新潟市中央区で、民間の子育てサポート事業「NOBINOBI(のびのび)」を運営する西林 琢也さん。西林さんの愛犬、柴犬の女の子、こはるちゃんは、不登校児童生徒を含むスクールに通う子供たちや保護者の方々の心を癒してくれるアイドル犬だ。

2021年11月に西林さんの元にやってきたこはるちゃんは、推定年齢11~12歳の繁殖引退犬。動物保護センターで初めて会った西林さんにも、尻尾をふってフレンドリーに接してくれたという。その健気な姿を見た西林さんは、「産むだけ産ませて、産めなくなったら用なしだなんて。せめて最後まで面倒をみてやろうという情けがひとかけらもないのか…。犬は人間のおもちゃじゃない」という憤りの思いもあり、こはるちゃんを迎える決心をした。

お迎え当初からこはるちゃんはとても我慢強く、「注射や点滴の際も、鳴いたり騒いだり逃げ出したり一切しない子でした」と、西林さん。散歩中も出会う人すべてに尻尾をふって穏やかに挨拶をするこはるちゃんの様子を見て、『癒し担当スタッフ』として、自らが運営するスクールの生徒や保護者の方々に必ず紹介するようになった。

すべての人に優しいこはるちゃん

西林さんが運営するフリースクール「NOBIONOBI」には、さまざまな理由から「不登校」になった生徒たちも通っている。中には、「犬に触れたことがない」「なんとなく怖い」という子供たちもいたが、どの子にも静かに尻尾を振り、ゆっくりと近づくこはるちゃん。「犬は苦手」と公言する生徒も、こはるちゃんなら…と手を差し出し、「初めて犬に触れた!」と、目をまるくして驚いていたという。今では、「こはるに会いたいがためにスクールに通っているのでは?」と思うような生徒もいるという。

それまで散歩やしつけをされた経験がないのか、お迎え当初のこはるちゃんは、「散歩もうまく出来ず、お手やお座りなどの基本的なことも出来ませんでした」と、西林さん。

「辛抱強く教えた結果、数カ月で覚えてくれました。今では『今日は○○さんがくるよ!』と声をかけると、玄関ホールにちょこんとお座りをして引き戸が開くのを待ち、生徒さんが入ってくると、『来てくれて嬉しい!』と言わんばかりに優しく尻尾をふって挨拶をします。生徒さんが帰る時も、玄関ホールで見送ってくれます。ひとつひとつが控えめなのに、どこか愛嬌も感じられる仕草で、関わる人たちをひきつけてやまないのがこはるの魅力です」(西林さん)

カラスのイタズラにも怒らない、心優しいこはるちゃん

2022年の大晦日。いつものように西林さんと散歩をしていたこはるちゃんの背後に突然、一羽のカラスが降り立った。カラスはこはるちゃんに近づき、なんと、こはるちゃんのお尻の綿毛をむしり取った。驚いたこはるちゃんはカラスの攻撃を避けるため、急いで横断歩道を渡ったが、カラスはからかうようにこはるちゃんの行く手に降り立ち、執拗にお尻の綿毛を狙っていたという。

「その様子を動画で撮影したのですが、15分以上ずっと、こはるはカラスにつつかれたり後を付け回されても決して怒ったり吠えたりせず、『何するの!?やめてよ~。知らん顔したら、あっちいくかしら?』といった感じで、カラスを無視するように背中を向けたり、自分から距離を取っていました」(西林さん)

カラスは巣作りの材料として犬のアンダーコート(綿毛)を狙うそうだが、カラスの巣作り時期は3月頃。西林さんによると、「素人目にも、”カラスの暇つぶしのイタズラ”としか思えない行動」だったそうだ。

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