「体にいいと思って食べていたのに…」善玉菌がお口のなかでは虫歯を起こす原因菌に 歯科医芸人に聞いた

山本 智行 山本 智行

高齢者の虫歯が増えているそうです。予防するにはどうしたらいいか。歯科医芸人の”パンヂー陳”こと陳明裕さんが解説してくれました。意外と知られていないのが夫婦間やカップルの間で虫歯がうつる可能性が高いこと。特に仲がいいと危険度が増すそうです。(聞き手・山本 智行)

陳明裕(以下陳):虫歯予防意識の広まりもあってか、近年、子供の虫歯は減少傾向にありますが、逆に高齢者の虫歯の増加が問題になっています。

--それは知りませんでした。

陳:厚生労働省の歯科疾患実態調査では平成5年から28年の約20年間で虫歯のある人の割合は14歳以下では1/3ほどに減っているのに、65歳以上の高齢者では明らかに増加していて、特に85歳以上では2倍近いです。

--何が原因ですか。遺伝とか?甘い物の食べ過ぎとかですか?

陳:虫歯は細菌感染なので宿主側の遺伝要因はほとんどないと言われています。みなさん、ちゃんと磨いてるつもりなだけで、実際には磨けていないからだと思います。

--細菌感染ってことは、キスでもうつっちゃうんですか。

陳:理屈の上では、虫歯の多い方とキスしたらうつると言えなくもないですが、入ってきた細菌がお口の中で住みつけるかどうかは、口腔内細菌叢の影響が大きいですので、仲のいいご夫婦やカップルなら、その可能性はなきにしもあらず。案外、口腔内細菌は夫婦関係のバロメーターになるかもしれませんね。

--歯医者で口腔内細菌を調べてもらって、夫婦関係がバレちゃうのもなんか嫌ですね。「お盛んですねー!」って思われるのも恥ずかしいですし。

陳:考えすぎです! 一緒に住んでると食器の共有その他、細菌が移動する機会はたくさんありますから。お互い、大切な人に虫歯を移さないように、虫歯はちゃんと治療して、口腔衛生状態を改善しておくことが肝要です。

--なるほど。

陳:「情けは人のためならず」といいますが、歯磨きは自分のためならずの精神で、歯磨きは自分だけでなく、自分の大切な人のためにもなるんです。特に、母親からの菌は母子間免疫寛容があり、細菌叢が似てきやすいので、出産前からの口腔ケアは必須です。

--虫歯の菌はお母さんからくることが多いんですね。

陳:あと虫歯を防ぐには歯磨きだけじゃなく、食べ物や食習慣も大切ですよ。例えば、同じ量の食事を食べるにしても、一度にさっと食べるのと、何回にも分けて食べるのとでは、後者の方が虫歯リスクは高いです。

また、同じ食材でも調理方法で虫歯リスクは変わってきます。例えば、お米をそのまま食べても、まず虫歯になりませんが、炊いてご飯にすれば虫歯の原因になり得ますし、お粥などベトベトに柔らかく調理すると、う蝕リスクはより高くなる。お餅にしてアンコを入れたりしたらもっと高くなるでしょう。

--いくらなんでも米のまま食べる人はいないでしょう。

陳:調理によって、食品の虫歯リスクが変わる例えで、お話ししただけです。あと、べとべとした食べ物で高齢者の虫歯リスクが高い食物といえば、ヨーグルトも要注意。ヨーグルトに含まれる善玉菌として名高いビフィズス菌も、実は虫歯を引き起こす可能性がありますので。

--健康のためにヨーグルトを食べている人は多いと思います。

陳:善玉菌と思われているビフィズス菌ですが、腸ではともかく、お口の中においては、ミュータンス菌同様、虫歯を起こす原因菌の1つと言われています。ヨーグルトを一生懸命食べるのは、腸には良いのですが、歯にとっては悪玉菌なんです。ビフィズス菌は、ツルツルのエナメル質にはとどまりにくいのですが、不良充填・補綴物があったり、歯茎が下がって歯の根面が露出していたりすると、象牙細管にはつきやすいので、そこに留まって虫歯を作るリスクがあります。

しかも、ビフィズス菌入りの乳酸飲料やヨーグルトの多くは糖分もたっぷり入っていますから、ミュータンス菌の酸産生の助けにもなっちゃいます。

--体にいいと思って、頑張って食べていたヨーグルトなのに、一体何を信じて生きて行けばいいんでしょう。もう、今日は帰って一杯飲んで、虫歯菌を殺菌して寝ます。

陳:その一杯飲んで寝る習慣も虫歯を作ります。お酒と虫歯の関係については次回にお話しさせていただきます。ただし、虫歯は遺伝ではなく、意思の問題。しっかりケアしてください。

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