創業200年超のグラスメーカーが復刻したプリントグラスが、異例の売れ行きを記録している。昭和に流行し、足付きのグラスなどに洋風の花柄や模様をあしらった「アデリアレトロ」と呼ばれるデザイン。2018年の復刻から4年間で120万個が売れており、「レトロでかわいい」と話題に。復刻の裏側には、若手と40~50代の社員との間に「かわいい」について世代間ギャップがあった。
アデリアは、名古屋市を拠点とする「石塚硝子」のブランド。1961年に誕生し、ガラス食器約2000種類を展開する。昭和40~50年代にかけて売られていたのが、プリントグラスだ。ポップな色合いのお花をはじめ、チューリップ、風船、おとぼけ顔が愛らしいトラ…。グラスやデザート皿、お菓子入れなどが食卓を彩った。だが、シンプルなものが好まれるようになり、姿を消していった。
昭和世代にとっては「子どもの頃、家にあったもの」
時はたち2017年。当時20代で、平成生まれの若手社員3人が企画書でプリントグラスについて「新鮮でかわいい」と復刻を提案した。だが、社内の昭和世代にとっては、子どもの頃に家にあったもの。「かわいい」をなかなか理解できず、「本当に売れるのか?」と疑問を持っていた。
若手社員は諦めず、インスタグラムでアデリアレトロの食器が投稿されている数を調べたり、陶器店に話を聞いたり。人気を裏付けるデータを収集して会議で何度も粘り、半年掛けてテスト販売までこぎつけた。2018年秋に3種類を発売するとたちまち話題となり、2022年10月に120万個を突破。今では30種類になっている。広報担当者は「デジタルネイティブであるZ世代を中心に、レトロなものや体験を求める人が多い。アナログなものが好まれる傾向があり、手に取ってもらえたのでは」と推測する。
昭和レトロブーム牽引、コラボ30社に
人気が爆発したアデリアレトロの食器は、コラボレーションの依頼が殺到。現在は文具や日常雑貨など30社と提携している。ヨーグルトなどの乳製品を扱う「日清ヨーク」もその一つ。昭和レトロの火付け役としてアデリアレトロに注目し、昨年12月にコラボ商品を発売した。果物と牛乳をミキサーにかけて作る純喫茶のミックスジュースをイメージし、りんご、みかん、バナナの果汁にヨーグルトを加えて仕上げた乳酸菌飲料。パッケージにはプリントグラス6種と喫茶店の看板のイラストをあしらい、ノスタルジックな文字や色合いでまとめた。
さまざまな分野に広がるアデリアレトロ。石塚硝子は「ガラスだけではなくアデリアレトロの世界観を、文化として広めていきたい」と話している。