長年お疲れさま…消えゆく神戸市営地下鉄1000形 地下鉄で日本初の「冷房車」、側面は“美意識”高く?阪急電車の車両にそっくり

新田 浩之 新田 浩之

西神・山手線・北神線で活躍した神戸市営地下鉄1000形13号車の引退記念イベントが12月2日・4日、開催されました。同編成の引退により、1000形は残り2編成となりました。

日本の地下鉄車両で初の冷房車

1000形は神戸市営地下鉄が開業した1977年に登場し、1987年まで108両が製造されました。登場当初から今日まで西神・山手線・北神線で活躍し、多くの神戸市民から親しまれてきました。

1000形の特徴は地下鉄車両としては国内で初めて冷房装置を搭載したことです。それまでの地下鉄車両は冷房とは無縁で、駅やトンネルに冷房装置を設置することで対応していました。

旧型の制御機器である抵抗制御は発熱しやすく、冷房装置からの熱が加わると、トンネル内はちょっとしたサウナ状態に。そのため、地下鉄では車両冷房に躊躇する事業者が多かったのです。

1000形は半導体を利用した当時の最新テクノロジーである電機子チョッパ制御を採用。消費電力が少ないため発熱も抑えられた結果、冷房化が実現しました。これらの試みが評価され、1978年に鉄道友の会のローレル賞を受賞しています。

ちなみに昨年引退した大阪メトロ10系は全国初の第三軌条方式で冷房装置を採用した車両でした。このように見ていくと、昭和の地下鉄車両史は少なからず関西がリードしていたことがわかります。

某有名大手私鉄に似ている車体

冷房装置が目立つ1000形ですが、私の注目してほしいポイントは側面。よく見ると、とある大手私鉄車両そっくりではありませんか? そうです阪急電車です。

3扉に1枚窓(1段下降式)、しかもアルミ製の鎧戸まで。この組み合わせは後輩車両の2000形・3000形にも引き継がれ、デザインの観点から阪急電鉄の車両を強く意識しています。

もっとも神戸市営地下鉄西神・山手線と阪急神戸本線との相互直通運転の計画はよく耳にしますが、1000形は阪急線を走ることなく引退するわけです。

後輩車両が誕生してもエースの座は変わらず

先述したように後輩車両にあたる2000形、3000形は登場しましたが、1000形が最大勢力であることに変わりはありませんでした。1997年から電機子チョッパ制御の代わりにVVVFインバータ制御に取り換え、2012年度に完了しました。

2019年に6000形が導入されると、1000形は順々に廃車が行われました。それでも検査切れにより2000形・3000形が先に引退する中、しぶとく1000形が残った点は個人的に興味深いです。

1000形は残り2編成となりますが、形式消滅が迫っています。また元北神急行電鉄の7000系も数年以内に廃車と見られ、西神・山手線・北神線は6000形で統一されることになります。

筆者も1000形にはよく乗車しました。もし出会ったら心の中で「お疲れさま」と言いたいですね。

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