意外と説明できない…「カスタマーサクセス」って何? 「カスタマーサポート」と似た言葉だけど、いろいろ違います

20代の働き方研究所/Re就活 20代の働き方研究所/Re就活

「カスタマーサクセス」について、営業に関わる概念であることは知っているけど、実際にはどういうものなのか知らないという方も多いでしょう。また、よく似た言葉として「カスタマーサポート」という言葉もありますが、二つの違いを明確に説明するのはなかなか難しいのではないでしょうか?

このコラムでは、カスタマーサクセスの概要やカスタマーサポートとの違い、詳しい業務内容やポイントについて詳しく解説していきます。 

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」という意味で、商品・サービスを利用している顧客がよりよい成功体験を得られるよう働きかけていくこと・その考え方を指します。また、同様の取り組みや、営業職の一部門の意味合いをもつこともあります。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスと混同されやすい言葉に、「カスタマーサポート」があります。どちらも営業プロセスの中で触れられる言葉ですが、二つには大きな違いがあります。

カスタマーサクセスは主にクラウドサービスを展開するB to B企業にとってメリットが大きい取り組みで、継続的な顧客エンゲージメントに能動的に貢献する方法です。一方、カスタマーサポートは、単発的に発生する顧客からの要望に応えるという受動的なサポートを指します。すでに販売した商品やサービスに対する満足度を下げないというスタンスでフォローする実務です。

カスタマーサクセスの詳しい内容については、次章で解説します。

※KPIについて: KPI(Key Performance Indicator)は、日本語で「重要業績評価指標」という意味です。目標を達成するためのキーとなる要件が適切に設定されているかどうかを知るための指標。

カスタマーサクセスが注目されている理由

・SaaSの普及
・市場の飽和
・「顧客体験」という概念の浸透

カスタマーサクセスは、近年急激に注目されている概念です。ここでは、カスタマーサクセスが重要視される理由について、3つの観点から解説します。

▽SaaSの普及
カスタマーサクセスが注目される理由に、「SaaS (Software as a Service)」の拡大が挙げられます。SaaS (サーズ) とは、ソフトウェアをサービスとして提供する方法で、代表的なところでは、「Zoom」や「Slack」といったプラットフォームがあります。
顧客を成功に導く営業戦略はこれまでも存在していたものの、サブスクリプションとして提供するようなSaaSベースのビジネス形態では、顧客満足が続くことが利益獲得の大きな要因となっています。そのため、これまでのような売り切りで顧客満足度を図るのではなく、持続的な商品開発や改善を基盤とするビジネスでのカスタマーサクセスへの関心が高まっているのでしょう。

▽市場の飽和
インターネットの普及で、商品やサービスが国や業界を問わず手に入りやすくなりました。消費者にとってはメリットですが、一方で競合他社との差別化が難しくなったともいえます。
そのため、商品やサービスそのものの品質向上に加え、体験的な満足度を追求するカスタマーサクセスという概念が重要視されるようになったと考えられています。

▽「顧客体験」という概念の浸透
カスタマーサクセスを語る上で重要なのが、顧客体験(CX=Customer Experience) との関係です。顧客体験(CX)とは、ユーザーが商品やサービスを購入する前から、実際に使用するまでの一連の体験を意味します。近年では、オンラインビジネスやSNSの発達により、顧客は対面以外で商品やサービスに接する機会が多くなっているのです。

顧客体験がいかにスムーズで有意義であるかが、商品やサービスの評価に大きく関わります。これはB to Cに限らず、B to Bのケースでも同様で、サービス自体の満足度だけでなく、カスタマーサクセスの対応も含めて、継続的にサービスを利用したいと思えるような顧客体験を実現することが、ビジネス拡大のカギとなっています。

顧客体験が重要視される時代だからこそ、カスタマーサクセスの取り組みに注目が集まるようになったのです。

カスタマーサクセスの役割

・LTVの向上
・解約率の低下
・サービスに対するフィードバックの獲得

顧客の成功体験実現のために重要なカスタマーサクセスの役割や機能について詳しく解説します。

▽LTVの向上
カスタマーサクセスの効果を知る方法に、LTV(Life Time Value)の算出があります。LTVとは、「顧客生涯価値」という意味で、ある顧客が取引開始~終了までの間に、企業に対してどれだけ利益をもたらしたのかを算出するための指標です。近年一般的になっているサブスクリプションのようなリピート商品において、顧客の平均単価、購買頻度、取引の継続期間の平均を掛け合わせて算出します。

LTVの数値(=金額)がかかったコストより高ければ高いほど、利益率が高いということになります。利益率を高めるためにLTVを向上させることがカスタマーサクセスに求められている役割の一つなのです。

▽解約率の低下
カスタマーサクセスの効率を図る上で大事なのが、解約率(チャーンレート)を下げることです。ユーザー数を基準にする場合は、「解約人数÷解約前のユーザー数×100」でチャーンレートを割り出すことができます。この数字が小さいほど解約率が低いことを表し、LTV同様にカスタマーサクセスの成功率を把握する指標として目安になります。

▽サービスに対するフィードバックの獲得
顧客のよりよい成功体験を実現するためには、商品やサービスを利用した顧客からのフィードバックをもとに、改善点や要望を洗い出し、よりクオリティの高い商品やサービスを提供するのが近道です。
また、企業が顧客のフィードバックを取り上げ、双方向的な関係性をつくることで安心感が生まれ、顧客の強い信頼とロイヤリティを築き上げることができます。

カスタマーサクセス部門が担う業務

・サービスの導入・活用支援
・サービス導入後の進捗状況の確認
・ファン化した顧客をグレードアップさせる

企業の営業部署内のカスタマーサクセス部門が担う業務を大きく3つに分けて紹介します。

▽サービスの導入・活用支援
顧客がサービスの導入後をイメージしやすいよう、活用支援を行います。サービス導入によるメリットを把握するためのシミュレーションを提示したり、商品のお試し利用を行うなど疑似体験を提供できると、顧客のモチベーションが上がります。

▽サービス導入後の進捗状況の確認
サービスを導入した顧客には、進捗状況の確認を行います。顧客のエンゲージメントの度合いを知る上で活用できるのが、ログインや履歴から読み取る顧客の「ヘルススコア(※)」です。進捗が芳しくない顧客にはサービス活用のアドバイスをしたり、不満・要望を定期的にヒアリングしたりして、能動的に働きかけることもカスタマーサクセスの大切な業務です。
※ヘルススコアとは、顧客が自社の商品やサービスの利用を継続するかどうかを測る指標です。

▽ファン化した顧客をグレードアップさせる
カスタマーサクセス成功要因の一つに、顧客のファン化があります。顧客が自立してサービスを活用できる成功体験を得ると、継続的に利用したいというロイヤリティが芽生えます。企業側は、ファン化した顧客を広告塔として、開発やプロジェクトに関与してもらうことで、さらなるブランド拡大を狙うことができます。

カスタマーサクセス部門の業務上のポイント

・顧客データを効率的に管理・共有する
・顧客に合わせたサービスを提供する
・特に重要な顧客に対してアプローチする
・会社全体で取り組む意識をもつ
・サービスの質を高め続ける

カスタマーサクセス部門で働く際に知っておきたいポイントを解説します。意識的なアプローチや事務的処理などにも視点を向け、5つの要点にまとめました。

▽顧客データを効率的に管理・共有する
顧客への効果的な支援を進めるためには正確なデータの把握が必要です。顧客から受けるフィードバックなど、定性情報だけでなく、定量的に現状を可視化できるデータを収集しましょう。また、これらの集積データを商品やサービスのマーケティングに反映できるよう、データ管理・共有の仕組みや、エコシステムを整備することも重要です。

▽顧客に合わせたサービスを提供する
カスタマーサクセスの役割として、顧客の状況や利用進捗に応じたサービスを提供することも求められます。例えば新規顧客がサービスを導入した際には、正しく使いこなしてもらうための支援(オンボーディング)を行う必要がありますし、一定期間サービスを利用している顧客に対しては、更なる利活用促進のために、課題をヒアリングしたり、潜在ニーズを引き出すようなコミュニケーションをとることも求められるでしょう。

▽特に重要な顧客に対してアプローチする
カスタマーサクセスを成功させるポイントは、「重要な顧客」、つまりLTVの高い利用者に対して特にアプローチを重ねることです。顧客からのフィードバックやヘルススコアなどから得られる情報を統括し、顧客の状況や利用進捗に合わせた提案を行うことで利益拡大を目指します。

▽会社全体で取り組む意識をもつ
カスタマーサクセスへの取り組みは、部署・部門を超えて社内全体での実施が理想です。各分野で、カスタマーサクセスへの理解を深めるとともに、チーム体制を形成するシステムを構築するのも効果的でしょう。社内の横のつながりがスムーズなことで、迅速にサービスを改善できるようになります。

▽サービスの質を高め続ける
社会事情や顧客層によって、商品やサービスに求められることは変わりうるもの。その変化に対応してサービスの質を高め続けるために、カスタマーサクセスを通じて顧客からのフィードバックを引き出したり、ヘルススコアを収集・分析することが重要です。
継続的にロイヤリティを構築するカスタマーサクセスは、企業のブランディングにも貢献するため、カスタマードリブンな取り組みに注力したいものです。

カスタマーサクセスに必要なスキル

・コンサルティングスキル
・顧客・業界への理解
・コミュニケーション能力・調整力

「顧客の成功体験」をいかに創出するかが重要となるカスタマーサクセス。ここからは、カスタマーサクセスとして特に重要とされる3つのスキルについてご紹介します。 

▽コンサルティングスキル
顧客により適切な提案・対応を行うためには
顧客情報や顧客との対話などから問題を見つけ出す「課題設定能力」
客観的に情報を分析し、どのサービスで解決可能か探る「情報分析能力」
顧客に解決策を提案する「提案力」
など、顧客との対話から何が問題かを見つけ出し、どのサービスで解決できるかを提案するという、コンサルティングに近いスキルが求められます。 

▽顧客・業界への理解
顧客の課題を見つけ出すためには、顧客の視点に立つことが第一です。顧客の業務の流れを知り、PDCAを回して業務を改善するようなこともあります。そのためには、顧客の企業情報のみならず、顧客が属する業界やビジネスモデルについても深い知識が必要となります。

▽コミュニケーション能力・調整力
顧客満足度を高めるためには、当然顧客との円滑なコミュニケーションは必須です。また、カスタマーサクセスの仕事は1人で完結するものではなく、自社のあらゆる部門との連携が必要となります。複数の部門間で関係を円滑に保ち、より高い成果に繋げる能力もカスタマーサクセスに必須といえるでしょう。

カスタマーサクセスは現代の営業に必要不可欠

カスタマーサクセスは、顧客の成功体験が重視される現代の営業において必要不可欠な考え方、および取り組みです。SaaSサービスの拡大が今後も見込まれる中、カスタマーサクセスの需要もますます拡大していくことでしょう。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース