熊野古道と水の爪痕と…1泊2日、南紀へ600kmの強行軍~鉄爺、旅の徒然#2

沼田 伸彦 沼田 伸彦

鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。

 

11月になってすぐ、1泊2日で和歌山県を訪ねた。サンテレビの友好局のひとつであるテレビ和歌山での打ち合わせの仕事があったのだが、コロナ前からあちらの柏原会長と約束していた熊野古道巡りをこの機会に実現しませんかと誘われた。願ってもないこと。同行する社の後輩の車に同乗させてもらい、まずは約130kmのドライブで和歌山市内にあるテレビ和歌山へ向かった。

打ち合わせの仕事を終えると、用意してもらった車にこちら2人、あちら2人が乗って再びドライブに。その前に和歌山ラーメンがお薦めの「山為食堂」で腹ごしらえ。久しぶりに麺と一緒に持ち上がるほどの代名詞の濃厚スープを堪能した。

前もって綿密なスケジュール表を渡されていた。和歌山から阪和自動車道を下る。田辺インターで降りて熊野大社へ向かい、途中熊野古道のチェックポイントをいくつか訪ねる。熊野大社から新宮市へ向かい速玉大社へ。新宮市で一泊し、二日目は16kmの熊野川下り、那智大社参拝をこなして和歌山市経由で神戸市の自宅へ。駆け足とはいえ熊野三山を制覇することになる。テレビ和歌山のスタッフからは「スケジュール的に無理ですよ」と笑われるほどの過密さ…らしい。

世界遺産に浸る旅の一方で、キリキリと胸にねじ込まれるような光景にいくつも出会った。2011年9月の紀伊半島大水害の生々しい傷跡だ。山の斜面に無数に残る爪痕のような山崩れの名残り。熊野川を舟で下ると、山から転がり落ちてきた大小の岩、崩落した道路の残骸が川岸を埋めているエリアがあちこちにある。

このとき、新宮市の熊野川では最高水位16m38cmを記録した。川下りの船着き場には、川面から10mほども高い所にある川岸に2本の鉄柱が建てられ、はるか見上げる場所に「最高水位」と記されている。地面からなんと8m27cm。その高さまで、見渡す限り濁流に飲みつくされたのかとイメージしようと思うのだが、あまりにケタが外れていて頭の中に描けない。周辺の家が、どこも真新しいのがなんとも生々しかった。

柏原会長は元々は和歌山県庁の職員だった。初任地が新宮市で、紀伊半島南部を担当して4年を過ごしたのだという。その南紀愛はとどまるところを知らず、来年2月6日には新宮市内の神倉神社で催される恒例の「御灯(御燈)祭り」という神武天皇由来の火祭りに自ら参加するつもりだ。

「地域外の者でも1万円で白装束と松明のセットを申し込めば参加できますよ」と胸躍らせている様子。「どうですか。一緒に松明掲げて社まで登りませんか」と指さされた先には、五百段を超える狭く急傾斜の石段が森の中に延びて消えていた。

 神戸から車で往復すると600kmを優に超える旅になる。さすがに即答は避けて帰って来たが、ここで怖気づいては鉄爺の名が廃る!?

 

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