鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。
高校を卒業してから生まれ育った岡山県を離れ、京都で1年間の浪人生活、大学時代は4年間大阪で暮らし、就職してからの43年間は兵庫県に住んでいる。もうすぐ67年になる人生の中で、いわゆる故郷で暮らしたのはわずか18年に過ぎないのか、と思うことがある。
故郷を振り向く気持ちもどんどん薄れていく中で、2010年に思わぬきっかけを与えられた。岡山県庁に勤めていた中学時代の同級生が機会を作ってくれ、2期4年にわたって「おかやま晴れの国大使」、いわゆる観光大使を仰せつかったのだ。
定例の会議には知事も顔を出し、県幹部、他の大使のみなさんと岡山県の魅力をどうやってアピールしたものかというテーマに取り組んだ。
そのつながりでそれまで存在すら知らなかった「近畿おかやま会」という県人会に参加するようになると、同じエリアの出身者を中心に知り合いがどんどん増えていった。
こうした活動を通して、それまでまったく興味のなかった故郷の魅力、課題に自然と向き合うようになり、実は身の回りに多くの同県人がいて、自分さえ腰を上げれば様々な交友の輪が広がることを身をもって知らされた。
そうするうちに60歳を迎える年には卒業以来という高校の同窓会が組織された。2年に1度の集まりが定例化され、ここでは県人会とはまた違ったテンションの昔を懐かしむことの楽しさが加わった。
現在私が住む神戸市には「神戸おかやま会」という県人会組織があり、年2千円の会費を納める会員が50人ほどいる。かつてはその数倍の規模だったそうだが、この手の組織の会員減少、高齢化は全国共通の話。ぼやいていても何も始まらない。
10月27日、神戸おかやま会総会がコロナ禍をはさんで3年ぶりに対面で開催され、42人が参加した。何より驚いたのは、3年前の総会に比べて、参加者の平均年齢が若返ったように見えたことだ。来賓として横田有二副知事、近藤隆則高梁市長も遠路来神、にぎやかな再出発の会になった。
その総会において、新たに副会長に任じられることになった。新任の挨拶のため壇上に立ち、会場を見渡すと自分がちょうど参加者の年齢層の真ん中あたりに位置していることがよくわかる。上の世代と下の世代の橋渡し役を務める中で、会の活性化が実現できればと願う。
それが故郷への恩返し、とは少々面映ゆい。義務感などにとらわれることなく、出会い、再会、思わぬ縁を楽しむことが何よりだ。若い人たちも巻き込んでのにぎわいは、その先にある。