キャンプで楽だし、上級者に見える…缶詰の直火料理 「有害物質が溶け出す危険性」との注意喚起に「全く知らなかった」の声続出

福尾 こずえ 福尾 こずえ

昨今のキャンプブームで人気を集めている缶詰の直火料理。缶詰は持ち運びにも便利なうえ、洗いものや食べ残しも減り、いいこと尽くし、と思いきや…。缶詰の直火料理に警鐘を鳴らす投稿が注目を集めています。食品専門商社に話を聞きました。

「キャンプブームで缶詰の直火(オーブン含む)調理を紹介している記事や動画がよくあります。缶は金属腐食を防ぐ為、樹脂でコーティングされており、BPA(ビスフェノールA)が多く使われます。BPAは一般的用途での溶出はほとんどありませんが、120度を超える加熱では溶け出します」

こちらを投稿したのは、世界の缶詰を輸入販売する食品専門商社、三幸貿易の公式Twitterです。キャンプ飯として、缶詰を直接火にかけて、手持ちの調味料で味付けするスタイルが人気を集めている缶詰の直火料理。実際SNSでも自身の缶詰直火料理を紹介する投稿や動画が多く見受けられます。

しかし、危険の可能性についてはあまり一般には知られていないようで、三幸貿易のツイートに対し、「全く知りませんでした」「勉強になります」「ありがとうございます」というコメントが寄せられました。

「BPAは内分泌かく乱作用があり、発がん性や様々な健康被害が報告される物質です(日本政府でもEU、アメリカでも常温での溶出基準については厳格に管理されています)。缶詰の加熱は湯煎でお願いします。火を止めてからお湯に入れても充分温まります」と説明して、缶詰の直火料理が危険であると促した三幸貿易の伊藤さんにくわしい話をうかがいました。

「無味無臭と言われているため気づかない」

「缶詰を直火で料理すると、有害物質が溶け出し、健康を害する恐れがあることは、『公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会』から社会全般に向けて広く発信されています。ですが、残念ながら充分に拡散されていないような気がします」と伊藤さん。

 『公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会』とは、大手食品メーカーや缶詰メーカーなど約380社で構成されている団体で、缶詰めやびん詰め、レトルト食品のおいしい食べ方を提案。実際に、同サイトでは、「缶詰の直火かけは絶対に避けて頂きますようお願い致します」との記載があります(出典:公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会)。

缶詰は、肉類や魚介類、野菜類などさまざまな種類がありますが、「缶の素材やコーティングは、酸度など金属との相性があるため、中の食材によって変わるとされています。しかしながら、食品の世界では『安全が立証されていない物は全て危険』と言う論理に基づきますので、湯煎以外の安全性を確認していない以上、中身がなんであれ、危険ということになります」と伊藤さん。中身の内容がどのようなものであれ、直火料理による危険度はあまり変わらないようです。

一般的には内も外も樹脂コーティングされている缶詰。直火での温めはもちろん、丸鶏肉にビール缶を挿して蒸し焼きにするビア缶チキンのような料理もリスクがあるそうで、「BPAは無味無臭と言われているため、もし溶けだしていたとしても恐らく風味の変化は無いと思われます。気づきにくいのも怖い点ですね」と伊藤さん。

しかし缶詰の直火料理が危険だと知らずに、キャンプ動画やSNSでレシピを披露している人が多いのも現実。伊藤さんも「見た目がエモいのと、洗い物も食器の荷物も減るのでみなさんがやりたくなってしまう気持ちはメチャクチャわかります。また、リスクを理解した個人の行為にとやかく言う権利は無いのですが、人にふるまったり、情報を拡散する行為は『意図せずに』相手の健康を害する行為になってしまうので大変残念な状況と考えております」と危惧します。

缶詰を調理する際は、直火にかけることは必ず避け、鍋などで湯煎にかけて温めるか、缶から取り出して調理しましょう。

また、今回の投稿には「カップヌードルに熱湯入れるのはどうでしょう? プラスチックが溶け出てる気がしてしまうんです」との質問も投げかけられました。

「誤解を拡げたくないのですが、缶詰コーティングはエポキシ樹脂やPCBで、インスタント麺の容器はPE・PP・PSP等と、全く別の話です。いずれも120度程度での危険はありません。日本の厚生労働省は甘くないです。危険なのは「商品スペック以外」の容器と「指定以外」の使用法です」と答えてくれました。あくまでも危険なのは指定以外の使用法なのです。

◇  ◇

缶詰は直火料理以外にもいくつか注意点があります。

「缶詰は内部を高温高圧で無菌状態にする事で常温の長期保管が可能な食品です。そのため、保存性を高める物質は一切入っていませんので、一度開けた後は傷みやすいです。一度で食べきれない場合は、必ず別容器に移して冷蔵庫に入れ、早目に食べきって下さい」と伊藤さん。

もし缶に破損があった場合も簡単に腐敗してしまうために、見た目や味に異常が無くても、必ず廃棄するようにしましょう。

「缶詰は正しく使用すれば、便利で安全なだけでなく調理で残りを出すこともなく、ゴミも持ち帰りやすく、特にアウトドアシーンでのメリットが多い食品です。正しい利用で美味しく召し上がって頂きたいと思います」

 メーカー側が指定している調理法以外の方法で調理を行うと、知らないうちに健康を害してしまう恐れがあります。正しい情報を知り、理解したうえでおいしくいただきましょう。

■三幸貿易公式Twitter https://twitter.com/SANKO_TRADING

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース