【漫画】マルチタスクができない…発達障害の苦手を克服するライフハックを描いた漫画が話題「とてもわかりやすい!」

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「発達障害持ちが苦手な部分を、日々のちょっとした工夫で過ごしやすくするライフハック」と、漫画を投稿したのは水谷アスさん(@mizutanias)。自身も発達障害の診断を受けており、発達障害についての解説漫画を更新しています。

今回は、発達障害の方が抱えやすい困りごとや、それを解消するポイントについて紹介し、「とても分かりやすい」と反響を呼んでいます。

ちなみに、Twitterでも書かれている「ライフハック」とは、仕事や生活の質や効率などを上げる工夫や取り組みのこと。発達障害の特性を持つ人も、そんなちょっとした生活術によって、より日々を過ごしやすくできるといいます。

一体、どのような工夫をすると良いのでしょうか?

複数指示が覚えられない…日常の困りごと

発達障害とは、生まれながらの能力のバラツキから、できることとできないことの差が激しかったりして、日常生活や社会生活に支障をきたしやすいことです。

水谷さんは、夫と長女のハナさん、次女のマルさんとの4人家族。うち水谷さん本人、ハナさん、マルさんの3人は発達障害の一つである自閉症スペクトラム(ASD)と診断されています。

暮らしの中で発達障害の課題とは切っても切り離せない水谷さん一家。実際、水谷さんや娘さんたちには、その特性から色々な日常の困りごとがあるといいます。

例えば、水谷さんは複数のことを一度に理解・記憶することが苦手で、在職中は仕事の指示が理解できなかったり、忘れたりすることも多かったといいます。付箋にメモをして対処しようとしましたが、量が増えすぎてかえって混乱し、結果破綻してしまうこともしばしば…。

長女のハナさんも、多くの情報を処理するのが苦手で、いろいろな指示をされると固まって何も手につかなくなってしまうそうです。ですが、それが分かっていても、親としてはつい、畳みかけるようにたくさんのことを言ってしまいがちに。

また、水谷さんにといっては、服装や料理の献立、買い物などについて、日々「選ぶ・考える」といったことも、かなり「脳の容量を消費する行為」だといいます。

このように、日常的に当たり前に行われることでも、発達障害の方にとっては大変だったりすることもあるのです。もっとも、発達障害の特性は人によってさまざまであり、すべての当事者が同じ問題を抱えているとは限りません。しかし、それでもこれらのことが、日常生活や仕事での障壁になっている方が多いのも事実です。

このような問題を抱える人が負担を軽減し、より日常生活や社会生活をスムーズに送れるようにするためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

ちょっとした工夫で、日常生活を過ごしやすく

実は、上記のような困りごと・困り感を抱えている人は、指示内容について視覚的に整理したり、外部で記憶するツールに頼ったり、作業を効率化し選んだり考えたりという手間を省くような工夫をすることで、より過ごしやすくなるかもしれません。

水谷さんは漫画の中で、そのような観点から家庭内で実践されている工夫について、いくつか紹介しています。

「やることリスト」を作ろう

まず紹介されているのが、「やることリスト」。

娘さんに日々やることを実践してもらうために、有効な手段だったそうです。

「歯磨きをする」、「勉強する」、「ゴミを捨てる」といった、日常でやるべきことついてそれぞれシートにまとめておきます。シートはマジックテープで取り外し可能になっており、できたものから剥がして、達成シートに貼っていきます。

それまでは、お母さんに次から次へとやるべきことを言われて混乱していたというハナさん。しかし、リストを作ることによって、日々の決まりごとが一目で分かるようになり、水谷さんもあれこれ指示をする必要がなくなったといいます。

さらには、その達成度によって、報酬(ごほうび)を与えるシステムも導入。

これらの取り組みによって、ハナさんは親が指示しなくても、自分からやれることが増えたといいます。

LINEの「リマインくん」を活用しよう

特性上、複数のことを覚えることが苦手でも、そのような状況に対処しなければならないこともあります。主婦業の傍ら漫画制作も行っている水谷さんは、日々たくさんの用事をこなす必要があります。

そんな水谷さんが“外部記憶ツール”として愛用しているのが、LINEのサービスである「リマインくん」。

これは、要件と時間を設定しておけば、そのタイミングで内容を通知してくれるというスグレモノです。

「ゴミ出し」や「娘の持ち物」、「母親に電話」など、忘れがちだった日々の細々した用事も、リマインくんに予め設定しておき、通知することで、忘れずに行うことができるようになりました。

そんな日々お世話になっているリマインくんに、「いつもありがとう」と伝えてみた水谷さん。すると、なんと「お役に立てて光栄です」と返事が。さらに、「好き」と入力してみたところ、リマインくんから「『好き』だよ!ファイト!!」とメッセージが来たそうです。

このような「対話ごっこ」も楽しめるとのことです。 

冷蔵庫のホワイトボードに「買い物リスト」「献立表」を書こう

日々「選ぶ・考える」という行為が苦手な水谷さん。

以前はつい考えなしに野菜を買って結果ダメにしてしまったり、切らしていた調味料を買い忘れたり…といったこともよくあったそうです。

そんな買い物時の対策として、冷蔵庫にホワイトボードを設置。

「野菜」「日用品」「調味料」などの項目に分け、必要なものはすぐに書き込むように。家族も必要なものを書き込むことができ、一度の買い物で皆が必要なものを忘れずに買ってこれるというシステムです。

また、献立表を作り、一週間の料理のスケジュールもまとめておきます。

これによって、献立を日々考えるという手間を省き、買い物もスムーズに。

さらに、買い物時のメモの書き方を上記のホワイトボートと同じ並びにしたり、スーパーの陳列と順番を合わせたりと、ちょっとした工夫を重ねることで、より効率化が図れます。

発達障害の有無にかかわらず有効です

自身の経験も踏まえ、発達障害の方に役立つ工夫について紹介した水谷さん。ツイートのリプ欄には、多くの反響が。

「やることリスト販売して下さい!」
「絵も可愛く、わかりやすくて素敵ですね!」
「リマインくん使ってみます」
「アスさんのマンガって、とってもわかりやすくて全然症状を知らない私でも、少しでもこんな風にすればいいんだって参考になります」
「自閉持ちかはわかりませんが、なんとなく当てはまることややってしまうことがちょいちょいあり、こういった情報はとてもありがたいです!ありがとうございます!」

このように、たくさんの喜びの声が寄せられました。

発達障害の診断を受けていない方からの、「役立ちそう」というコメントも。確かに、発達障害の有無にかかわらず、情報をうまくまとめたり、効率よく作業を進めたりすることが苦手な方はいるでしょう。その意味で、今回紹介されている方法は、多くの人に役立ちそうです。

実際、水谷さんによると、「今回のライフハック集は日頃から困っていない人にも有効だったりします」とのこと。誰でも日頃のちょっとした工夫によって、より生活はしやすくなるものですね。

また、リプ欄には「努力より工夫なんだな」というコメントもありましたが、水谷さんは「努力の結果生まれた工夫である事は知っておいてもらえると嬉しいなと思います」と話されています。

水谷さんの「やることリスト」は、noteでも詳しく紹介されており、100円でデータをダウンロードすることも可能です。

興味がある方はぜひチェックしてみてください。

「方法を変えれば誰にもできる」という、理解を広めたい

素晴らしいアイデアを共有してくださった水谷さんに聞きました。

――素晴らしいアイデアの数々を紹介されていますが、思い付いたきっかけは?

水谷さん:きっかけというよりは、その都度困ったことがあったら試してみる…という試行錯誤の繰り返しから生まれました。特に子どもの「やることシート」に関しては、いろんな失敗を重ねた上で今回のものが出来ています。主に参考にしたのは、子どもの通っている療育施設で使っているおしたくボードです。療育施設も日々いろんなお子さんに対して個別に素材を作ってくださるので、本当にありがたいなと思っています。

――工夫することによって、生活にはどのようなプラスの面がありましたか?

水谷さん:これまでは、「家にあるのに新たに買っては賞味期限を切らして捨てる」ということが多かったのですが、買い物関連の工夫で食品ロスがすごく減りました。また、食品ストックの意識も強くなったので、防災準備もできています。

また、やることリストを通じて、子どもがやることを理解し自主的にやってくれるようになったことで、イライラすることが少し減りました。子育ては日々課題山積みですが…(笑)。

――より効率よく作業をするためには、本人の努力や工夫はもちろんですが、周囲の方々の協力も必要かと思います。

水谷さん:まずは社会の理解がどんどん進んでくれたら良いなと思います。効率よく作業するための方法を本人が見つけても周りの理解がなければ難しいので。「口頭よりも視覚的な指示の方が助かる」と伝えても「そんなものは甘えだ」、「口頭で理解できるように努力しろ」と言われてしまう事がまだまだ現状多いと思います。

――まだまだ無理解は根強く残っていそうですね。今後、社会や世間に対して、こうあってほしいという願いはありますか?

 水谷さん:なかなかうまくできない人に対して、「駄目なやつだ」と決めつけるのではなく「方法を変えればやりやすいのかも」という視点があって欲しいな、と思います。お互いに「こんな人もいるんだ」、「じゃあ、こうしてあげればいいんじゃないの?」と、当たり前に考え合える社会になってくれたら嬉しいですね。

  ◇  ◇

水谷さんは現在、毎週水曜にTwitterとInstagramで自身の日常を主観的な視点で描いた『自閉日記』を更新。これまでのエピソードをまとめたものも、無料電子書籍として2巻まで配信中です。また、月曜・金曜にはTwitterとnoteにて、『さくら組の恋話』という創作話を公開されています。こちらは、発達障害に関する描写は出てこないものの、水谷さん的には“無自覚な当事者”という感覚で描いているそうです。

さまざまな漫画を制作されている水谷さんですが、その根底には、「みんな同じでなくてもいい」というメッセージが込められているといいます。

さらに、noteではサブスクを行っており、 先読みが出来るプランと創作裏話が読めるプランがあるそうです。「興味が沸いたら1ヶ月だけでも読んでみていただけると嬉しいです」 とのことでした。

■水谷アスさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/mizutanias

■水谷アスさんのInstagramはこちら
 →https://www.instagram.com/as.hana.maru.saku/

■水谷アスさんのnoteはこちら
 →https://note.com/tetom_note/m/m6f1b2be482b8

■無料電子書籍『自閉日記』はこちら
 →https://www.amazon.co.jp/dp/B0B4X89G2N

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