【漫画】「人の気持ちが分かる子に」発達障害を抱える娘のため母が描いた漫画に感動「授業で使いたい」「泣けた」

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

『子どもがマンガで相手の気持ちを考える事が出来た話』というタイトルでTwitterに投稿された水谷アスさん(@mizutanias)の漫画が注目を集めています。

水谷さんの娘さんであるハナさんは、発達障害の一種である自閉症スペクトラム(ASD)を抱えています。普段は控えめで、トラブルも少ない子どもだそうですが、時には同級生の子どもと衝突したり、登校拒否になってしまったりすることもあるそうです。

今回の漫画はそんなハナさんにまつわる実話をもとにしたもの。

仲の良い友達のMちゃんと喧嘩になり、「学校に行きたくない」と言いだすハナさん。すっかり頑なになり、何を言っても効果がなさそうです。そこで水谷さんは漫画で伝えてあげることにしました。

どんな内容なのかというと…。

漫画には、カンガルーとコアラが登場します。

カンガルーは、木の上にいるコアラを自分のお腹の袋に入れて一緒にお散歩をしようとしました。でも、木で葉っぱを食べていたかったコアラは、「散歩なんて行きたくない、カンガルーさんよりお母さんの方がいい」と言ってしまいます。ショックを受けたカンガルーも、「大っ嫌い」とコアラを突き放し、二人は喧嘩になってしまいました。

しかし、本当は仲良くしたい二人。何がいけなかったのだろう――と考え、相手の気持ちをよく考えずに強引に行動したり、ひどいことを言ったりしてしまった自分も悪かったのでは…と思うようになり、互いに謝ります。

そして、また仲良しに。お散歩も二人で楽しく行くようになったのでした――。

喧嘩をしながらも、仲直りしてまた一緒に楽しく過ごせるようになったカンガルーとコアラのお話に、ハナさんも学びがあったようです。

自分の気持ちのままに行動したり、言いたいことを言ったりするばかりでは、相手を傷つけたり、喧嘩になったりします。でも、お互いが少し立ち止まって相手の気持ちを考えたり、感謝の言葉をかけ合うことで、気持ち良く、良い関係を築けるようになります。

そのことに気づいたハナさん。お友達のMちゃんとも仲直りできたそうです。良かったですね!

このような水谷さんの漫画のリプ欄には多くの感想が。

「これ道徳の教科書にのればいいのになぁと思いました」
「私は学童保育で先生をしているのですが、多学年が入り乱れていて娘さんのように中々気持ちをまとめられずにいる子もいます。そんな子にこの漫画を読ませてあげたい」
「子供は特に相手の立場になって考えるのって難しいですよね…」
「子供同士の喧嘩だと原因がハッキリしないし理屈じゃなかったり、よく解らないうちに解決していたりするから難しいですね」
「自分もついカッとなって棘のある言葉をぶつけてしまいがちで、冷静になってから後悔することが多々あります。漫画と同じように互いに非を認め合って仲直りし合うこと、本当に素敵です」
「泣けた!思いっきり泣けた!名作や!素晴らしい!」

漫画に感動したという声や、対人関係の難しさについてなど、さまざまなコメントが寄せられました。 

コミュニケーション力などの社会スキルを身に着ける訓練に

自閉症スペクトラム(ASD)の方には、「社会的相互作用の障害」「コミュニケーションの障害」「想像力の欠如」という、特徴的な三つ組みの障害があると言われています。これらの性質から、人の気持ちが理解できず身勝手な言動に出たりして、社会的な軋轢や対人トラブルを生みやすい方が多いといいます。

しかしながら、ASDの方もまったくその能力が備わっていないのではなく、一般の方よりはゆっくりではありますが、徐々に他者の気持ちを推しはかり、相応の社会スキルやコミュニケーション力を身に着けることは可能とされています。

それらを身に着けるうえで、とても有効とされているのが、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)です。

SSTとは、さまざまなシチュエーションを設定したロールプレイングや、グループディスカッションなどを通じて、社会性や生活能力を身に着ける訓練です。近年、発達障害や精神障害のある方々の支援施設や、クリニックのデイケアなどでも広く取り入れられています。また、一般的な社会生活を送るうえで必要なスキルについて学べるため、障害者だけでなく、あらゆる人に適応できるという面もあります。

今回の水谷さんの漫画は、まさにSSTに関する内容。対人力や人の気持ちを理解する能力がまだ乏しい子どもにとって、その大切さについて学ぶ機会はとても大切です。

「自分の視点でしか物事を考えられない子に、他者の視点を教えてあげること。小さい頃から絵本を読むのが大切っていうのはそういう意味もあるのかなと。自閉傾向の有無に関わらず、これって多分どんな子どもにも、大人にも必要なことなんじゃないかなーと思っています」 (水谷さん)

水谷さん自身も苦労を乗り越えた一人

実は、水谷さん自身もASDという障害を抱える方の一人。以前は、他者としょっちゅう衝突したり、社会でうまくやっていけなかったりした時期もあったそうです。

しかし、最近では自分とは違う他人の価値観を面白いと感じられるようになるなど、自分なりに人との心地よい関わり方を見いだせているとのことです。

また、水谷さんは現在、一人の環境で作業するのが向いているという自身の適正が分かったこともあり、子どもの頃から憧れていたという漫画制作を、子育てと並行しながら行っています。

そんな水谷さんですが、今後の課題は自分の漫画作品を収益につなげることだといいます。「もし、私の描くテーマを使いたい媒体さんがありましたらお仕事いただけたら嬉しいです」と話します。

実際、今回の漫画について「学校で使いたい」「SSTの題材にしたい」といった声も多く、水谷さんの作品は大きな注目を集めはじめています。

また、ASDのある方は、聴覚に対して視覚の情報処理が優れていることが多く、絵や表を用いた視覚的な支援が望ましいとされています。水谷さんは、自身の漫画はそのような視覚支援の分野にも活かせるのではないかと考えています。

これまでさまざまな苦労をされながら、ようやく自分に合った環境や夢を手に入れつつある水谷さん。挑戦はまだ続きます。

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■水谷アスさんのTwitterはこちら→https://twitter.com/mizutanias

■水谷アスさんのnoteはこちら→https://note.com/tetom_note

■水谷アスさんの活動ページはこちら→https://peraichi.com/landing_pages/view/mizutani

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