「怖いけれど、最後は胸にジーン」秋の京都で楽しむ怪談話 明治の名作「牡丹灯籠」が朗読劇になって甦る

山中 羊子s 山中 羊子s

 明治時代に活躍した落語家、三遊亭圓朝の怪談作品「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」はその後、歌舞伎化されたり、映画化されたりと、芸能や文学面に大きな影響を与えている。この10月10日には怪談朗読劇で知られる女優のまつむら眞弓さんが京都の名刹「鹿王院」でリメイク上演。「於露新三妖異噺(おつゆ・しんざ・あやしのはなし)」となって甦る。一体、どんな内容なのか。

まつむらさんの怪談朗読劇の原点となった作品

 まつむら眞弓さんは東映京都撮影所俳優部所属の女優さん。ライフワークとして力を入れているのが、京ことばによる「怪談朗読劇」だ。

 初演は、いまから12年前の2010年の京福電鉄の嵐電車内。三遊亭圓朝が25歳の時に書き上げたといわれている怪談噺「牡丹灯籠」だった。これは「四谷怪談」や「皿屋敷」と並び、日本三大怪談ともいわれるほどの怪談の名作だ。そして、この「牡丹灯籠」はまつむらさんの怪談朗読劇の原点といえる作品でもある。

 一般的に知られる「牡丹灯籠」のストーリーは、浪人の新三郎が旗本の娘、お露と出会い、互いに一目惚れする。お露は夜ごと牡丹灯籠を持って新三郎を訪れ、逢瀬を重ねるが、実はお露の正体は「亡霊」だったというもの。やつれていく新三郎を見た寺の和尚がお札を新三郎に授け、家中の戸という戸に、お札を貼って籠もるようにと告げる。そして、和尚は「期限の日の夜が明けるまで戸を開けても、家から出てもならない」と告げるのだが…。

紅葉の名所、鹿王院で楽しむ怪談朗読劇

 今回の「於露新三妖異噺」は、まつむらさんが独自の発想で「牡丹灯籠」をリメイクした作品だ。若狭の国の小浜に伝わる八百比丘尼がもののけ語りの会を開いているという設定で、まつむらさん扮する八百比丘尼が牡丹灯籠を語るところから始まる…。登場人物5人を1人で演じ分けているのも見逃せない。

 1人芝居でもあるまつむらさんの怪談朗読劇を盛り上げるのが、津軽三味線ひびき会主で京都民謡民舞連合会会長でもある川合絃生さんが奏でる美しくも悲しい三味線の音色。さらに今回の舞台は紅葉の名所でも知られる右京区嵯峨北堀町にある名刹「鹿王院」(ろくおういん)の中の、普段は入られない客殿での上演となることも話題のひとつだ。

 庭が見える客殿での公演なので、秋の虫の音色も聞こえてくるかもしれない。ちなみに、怪談朗読劇は約50分。長年観てきたファンは「毎回、迫力満点。今回の作品は名作で、7年ぶりに演じられるので、楽しみにしている人は少なくありません。怖いけれど、最後に胸にジーンと来るのは、まつむらさんの朗読力です」と語ってくれた。

 まつむらさんは「今回は怪談の名作中の名作をアレンジしています。多くの人に楽しんでいただければ、幸いです」と意気込んでいる。京都探索を兼ねて、怪談朗読劇を楽しむのはいかがだろうか。

◇「於露新三妖異噺」

日時:2022年10月10日(月・祝日)1回目16:00~、2回目18:00~(上演時間は約50分、開場は各回30分前)
会場:「鹿王院」(京都市右京区嵯峨北堀町24 ※JR「嵯峨嵐山」駅下車徒歩約5分。京福嵐山線「鹿王院」駅下車徒歩約3分)
木戸銭:2000円(拝観料400円含む、※拝観は18時まで)
定員:各回30名(未就学児は観覧不可)
申込・問い合わせは「京都もののけ語りの会」
090-1951-4240

kaidan_mayumi@yahoo.co.jp

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