ホストにハマった女性は、繁華街から抜け出せず八方塞がりになりがち。パーッと遊んですっきり!なんてタイプは少なく、もがきながらお金をかき集め、苦しみの中に僅かな光を見出す人が多いからこそホスト通いをやめられないのです。
ある女性、A子(30代)の話をしましょう。彼女がホストクラブに足を踏み入れたのは友達と初回料金3000円という安さに惹かれ、冷やかし気分で入店したのがきっかけでした。当初は「ハマるわけがない」と思っていた彼女も、ゴージャスな内装やイケメン揃いのホストたち、そして非日常的な体験に徐々に心を奪われていきます。
彼女はお気に入りのホストを見つけると、彼に会いたい一心で頻繁に通うようになり、収入のほとんどをその生活に注ぎ込むように。もともとOLとして働きながら夜職で貯めていたお金も、いつの間にかホストクラブへの資金に変わり、ついには昼の仕事を辞めて夜職一本に。A子はホスト通いと収入確保のための労働に追われる日々を送っていました。
そんな彼女から、先日再び連絡がありました。現在もホスト通いを続けており、担当ホストが十分なメンタルケアをしてくれないから話を聞いてほしいとのこと。「ホストにメンケアを求める時点で、まだ彼にかなり入れ込んでいるのだろう」と予想して話を聞いてみると、案の定でした(苦笑)。
本人曰く、前よりも気分の浮き沈みが激しくなっており、ストレスのせいで稼ぎが落ちているそう。安定した収入に陰りが見え、繁忙期に差し掛かる時期に成績が振るわないと焦っているようです。
収入が減れば、当然ながらお店で大金を使えません。ホスト自身も売上ランキングを常に気にしていることから、太客の稼ぎが下がるのは彼にとっても死活問題なのです。
A子に毎月どのくらいの金額を捧げているのか?と聞いても、彼女は詳細を明かしません。しかし収入のほぼ全てを突っ込んでいるらしく、家賃と光熱費以外はだいたい彼のものだと言います。洋服も最近は購入できておらず、美容室は半年に一回で、楽しみは毎月のネイルだけ。
なぜ労働と節約を繰り返してまでホスト通いをやめられないのか?と聞いてみると、彼女は「担当のことは腹立つ日も多いし、喧嘩もいっぱいするけど、顔見るとほっとする。ようやく居場所を見つけた感じなんだよね。もう夜職をするのは嫌だよ?おじさんキモいし。でも大金を使うと今までに体験したことがない高揚感が得られるの」と語っていました。
ホストにハマる女性たちのほとんどが、非日常と刺激を求めています。「今までにない経験」をすると、共に時間を過ごした相手に特別な感情が湧き、ある種の魔法にかかるのでしょう。だからこそ、“やめたくてもやめられない”へ繋がるのだと、話を聞いていて分かりました。
ただ、周りが見えなくなると冷静な判断ができなくなるため、のめり込むという行為は非常に危険なもの。最近あったパパ活にまつわる事件などが良い例ですよね。
みんな基本的に“何か”へ依存していて、それがモノであったり、ペットだったり、映画鑑賞などの趣味だったり。居場所を探すのは、人間として当たり前のことなのかもしれません。しかしながら依存先がモノではなく人になると、話が複雑化しやすいのが怖い部分といえましょう。感情を持つもの同士が絡み合えば、心が揺さぶられるのも仕方がない話です。
A子はホスト通いをやめたいけどやめられず、稼ぎが落ちたことにより、私にセクシー女優って稼げるの?と話を進めてきたため「結局オチはそれかい」とうっかりツッコんでしまいました。この様子では、彼女はしばらく夜遊びをやめられないでしょう。収入が減ったからもう行かないのではなく、お金を増やして何とか店に通う方法を見つけるつもりですから。
世の中では「夜のお店をなくせば解決」と言う人も多いけれど、私はそう思いません。働き手が余裕のない客をそそのかすのもいけませんが、そもそも繁華街はお金に厳しい人の居場所ではないのです。
そして彼女の話を聞いて感じたのは、心の闇でした。寂しい、悲しい、誰かと一緒にいないと自分がだめになってしまうという思いです。心の隙間を埋め、正気を取り戻さなければ、何かに狂う人間は減らないでしょう。
夜職という商売や飲み屋をなくすのではなく、まずは人々の中に潜む闇を取り払う方が繁華街のトラブルを減らす秘訣なのではないのかと…。A子のような女性が減り、みんなが幸せになれる方法はないのかと、彼女の話を聞きながら思ってしまうのでした。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。