黄金色の稲穂をながめながら、SDGsの純米吟醸酒「環(めぐる)」を飲み比べ。稲刈りを体験。山田錦の田んぼで、なごみませんかー。
最高峰の酒米山田錦の生産者らがそう呼び掛けるツアーが15日に兵庫県内で開かれる。
コウノトリ、ハクチョウが訪れる田んぼ
訪れるのは全国の有名酒蔵が求める山田錦生産地帯である北播磨の加西市。豊倉町営農組合が化学肥料や殺虫剤を使わずに生態系の力で稲を育む田んぼには、コウノトリのつがいがたびたび立ち寄り、冬はハクチョウが飛来する。
「稲穂が垂れる田んぼで日本酒を味わいながら、農業について知ってもらう企画を一度やりたかったんです」と同組合の岩佐尚宣さんは語る。
「環」は、食と農のごみを発酵して得られる有機肥料「消化液」で育てた山田錦で醸した純米吟醸酒だ。
発酵時に得られる自然エネルギー「バイオガス」は、都市ガスと同様の成分で給湯や発電に使える。
呑むことで地域の資源が回る。地球環境の負担を減らす
呑む人の輪が広がることで、地域の資源循環と自然エネルギーへの転換、農業や地域の脱石油化の流れを地域からつくる。そんなミッションを担った「環」の新しいものづくり「地エネの酒 for SDGs プロジェクト」は、地酒4蔵元と4農家、神戸新聞社の連携で2020年にスタートした。
豊倉町営農組合(加西市)は、化学肥料と除草剤、殺虫剤を使わない酒米づくりのための稲作技術として「冬みず田んぼ(冬期湛水)」を導入している。
冬から水を張る田んぼには微生物が増え、雑草の発芽を抑えるクリーム状の「トロトロ層」ができる。これに、水を深く保つ「深水管理」の農法を組み合わせることで1年目は雑草の抑制に成功した。
だが、農薬をやめた2年目の田んぼは思わぬ事態に見舞われる。「オオアカウキクサ」という赤い浮き草に田んぼが一面おおいつくされてしまったのだ。稲の苗を倒してしまう赤い浮き草を枯らせることを優先する必要があり、深水管理を断念して水を抜くと、今度はヒエなどのやっかいな水田雑草が多発した。この事態を知った環を扱う酒販店、料理店、消費者らが田んぼに駆けつけ、数回の草取りの応援でなんとか乗り切った。
3年目となる今年は除草機を導入して雑草をかなり抑えられた。「日本酒を輸出する酒蔵は世界からこうした栽培が求められていると話す。環を飲んで持続可能な酒づくりの輪に加わる人が増えればうれしい」と岩佐さんと語る。
福寿、盛典、富久錦、播州一献
ツアーでは、穂が実る加西市豊倉町の山田錦の田んぼをまず訪問。岩佐さんから冬期湛水などの説明を聞いた後、希望者は稲を手刈り体験できる。田んぼでは、プロジェクトに参加する播州一献(宍粟市、山陽盃酒造)、富久錦(加西市)、盛典(加古川市、岡田本家)、福寿(神戸市東灘区、神戸酒心館)の4銘柄の「環」を試飲できる。
弓削牧場で循環システムを見学。スイーツ味わう
三木市内で昼食。道の駅に寄った後、弓削牧場に移動。乳牛の尿やチーズ製造時の「乳清」などを発酵させてバイオガスと消化液を作る設備や、消化液を使って無農薬で栽培するハーブなどの野菜畑を見学。レストランで牧場の牛乳やチーズを使ったケーキを味わいながら、プロジェクトの説明を聞く。4蔵の「環」の販売もある。その後、神戸酒心館を訪ねる。
ツアーは、JR神戸駅、姫路駅を経由して現地に向かう。ツアー料金は7980円。全国旅行割の利用条件を満たす必要がある。申し込みなど詳しくは神戸新聞旅行社TEL078・362・7013