「威嚇できる正当性を見つけ、常態化を狙う」…これが中国のやり口 国交正常化から50年、力関係が逆転した日中関係

治安 太郎 治安 太郎

9月29日で、日中国交正常化からちょうど50年となった。この50年間で日中の力関係は大きく逆転した。昔、中国は経済的援助を必要しており、対外的に政治的要求を押し付けてくることは殆どなかった。日本はその最大のドナー国であり、中国はドナー国日本を重視し、日本は中国が民主的に発展することを期待していた。しかし、今日、それは見事に打ち砕かれ、長年中国が内に隠していた本音が外へ露骨に示されるようになり、各国との間で亀裂が先鋭化しているのである。

米中対立の緊張が続く中、9月下旬、バイデン大統領が中国が台湾に侵攻すれば米軍が介入すると明言したこと対し、中国政府は強烈な不満と断固たる反対を表明し、中国人民が持つ国家の主権と領土を守る強い決心や断固たる意志、強い能力をいかなる人も過小評価してはならないと強くけん制した。

米中対立の緊張は、8月のペロシ米下院議長の台湾訪問がトリガーとなり、緊張がワンフェーズ高まっている。バイデン政権も同訪問によって対立が深まることは前もって熟知しており、ペロシ氏には正直呆れたという本音も見え隠れする。訪問直前、中国外務省は台湾訪問が実現すれば強い対抗措置を取らざるを得ないとけん制し、習国家主席も7月下旬にバイデン大統領と電話会談し、ペロシ訪問を“火遊びをすれば火傷する”と表現した。

しかし、これまでの中国の動向を追ってくれば、今日、中国の1つの狙いがより表面化してきている。それは、“威嚇できる正当性を見つけ、常態化を狙う”という中国の行動だ。

上述の通り、中国はペロシ訪問で事前に米国や台湾に釘を刺していた。しかし、それが現実になると、中国は台湾を囲むような形で軍事演習を行い、中国軍機の中台中間線越え、台湾離島へのドローン飛来などが大幅に増加するようになった。これらはペロシ訪問以前には殆ど見られなかった現象だ。

ここで明らかなのは、中国は表向きにはペロシ訪問に強い不満を示したものの、本当は米国や台湾に対してより強いけん制を行うため、そういった威嚇できる正当性を見つけ、それによって実施した“より踏み込んだ軍事的威嚇”を常態化させようとしていたことだ。

この“威嚇できる正当性を見つけ、常態化を狙う”という中国の狙いは、過去の例からも明らかだ。今年の9月11日で、当時の野田政権が尖閣諸島の国有化を宣言してからちょうど10年となったが、その後、中国では反日デモや日本製品の不買運動が実施され、パナソニックの工場やトヨタの販売店などが放火され、日系のスーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。

それだけでなく、国有化宣言以降、中国船による日本の接続水域への進入日数が大幅に増え、今日まで中国船の尖閣諸島への領海侵入などが常態化している。これもペロシ訪問のように、国有化宣言以降、中国がより踏み込んだ軍事的威嚇を取るようになり、それが常態化したという点で共通している。ペロシ訪問も国有化宣言も、中国により踏み込んだ行動を取る正当性を与えてしまったのである。

日中国交正常化から50年が過ぎ、大国化した中国は今後ますますその本音を内外に示し、圧力を強化してくることだろう。習指導部は、中華民族の偉大な復興、台湾独立阻止、太平洋分割統治など多くの国家ビジョンを掲げている。それを実現するため、中国はここで紹介した“威嚇できる正当性を見つけ、常態化を狙う”という行動を繰り返し、そうやって既成事実を積み重ね、台湾周辺において中国有利の軍事・安全保障環境の構築を強化していくことだろう。 

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