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『サイコ』で殺人鬼演じた名優の父 家庭では仮面をかぶった秘密主義者 微妙な親子関係を『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のクライマックスに重ね合わせた

石井 隼人 石井 隼人

父親はモーテルのマザコン女装殺人鬼。

悪夢的山荘ホラー『KEEPER/キーパー』が5月29日に公開される。監督は、ニコラス・ケイジ主演の『ロングレッグス』(2025年)で一躍名を挙げたオズグッド・パーキンス(52)だ。

パーキンス。…その名にホラー映画好きならばピンとくるかもしれない。アルフレッド・ヒッチコック監督による不朽の名作『サイコ』(1960年)に出演したアンソニー・パーキンスの息子だからだ。

仮面を外さない父

父アンソニーは、死んだ母親の姿に扮して殺人を犯す『サイコ』のノーマン・ベイツ役で一躍ブレイク。しかしその強烈な印象が仇となって『サイコ』俳優というレッテルはなかなか剥がれず、さらにはプライベートのスキャンダルも相まって、晩年は低予算映画を主戦場にするように。

『サイコ』の続編『サイコ3/怨霊の囁き』(1986年)では監督兼主演を務めるなど、数々のB級作品で熱演してくれたアンソニーはホラー映画好きにとっては神俳優。しかし息子にとってはつかみどころのない複雑な父親だったようだ。

仕事部屋と思われる一室からオンラインインタビューに応じたオズグッド監督は、1992年にエイズによる合併症で60歳で逝去した父親の実像をこう語る。

「私の父親であるアンソニー・パーキンスは世間的には大スターであり、セレブリティです。しかしプライベートでの彼は極めて秘密主義者でした。性的指向に葛藤を抱えていた父は常に仮面をかぶっているようで、子供としてはずっと背中を向けられているような違和感がありました。よく知っているはずなのに、本質的には知ることのできない存在。まあ役者だから常に本当の自分とは異なる仮面をかぶるのは当然ですが…」

恋人への疑心暗鬼が描かれる『KEEPER/キーパー』同様に、オズグッド監督の作品には「身近な人の秘密/嘘」をストーリーのスパイスにしたものが多い。そこに惹きつけられるのは、父アンソニーとの微妙な親子関係が拭いされない核としてあるからか。

「アート面において僕に決定的ショックを与えたのは『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のクライマックスです。暗黒仮面姿のダース・ベイダーがルーク・スカイウォーカーに向かってこう言うわけです。『私はお前の父親だ』と。それは究極の秘密が明かされる瞬間であり、未練や葛藤、善悪という枠を超越して“誰かの父親になる”という極めて深遠な瞬間です。僕の監督作において“本性がわからない”“別の顔で欺く”というモチーフが繰り返されるのは、僕と父親の複雑な関係が理由としてあると思います」

パーキンス一族のレガシー

父親に対するわだかまりを打ち明けるオズグッド監督の背後を見てみると、テーブル上に一つのフィギュアが飾られているのが目に留まった。女装姿の男性が頭上高くナイフを振りかざしている姿。『サイコ』のノーマン・ベイツの最も有名な場面を模した、父アンソニーのフィギュアだ。

「ノーマン・ベイツのフィギュアを部屋に飾っているのは父親へのリスペクトの表れですか?」と問うてみたものの、オズグッド監督は肩をすぼめて笑うだけ。明確な答えは得られなかった。

でもオズグッド監督が、父アンソニーひいてはパーキンス一族のレガシーを継承しようとしているのは明らかだ。

オズグッド監督の映画デビューは、意外なことに子役として。父アンソニーが主演を務めた『サイコ2』(1983年)で少年時代のノーマン・ベイツを演じた。それは不器用な父親による、映画を通しての親子のコミュニケーションだったのだろうか。オズグッド監督も倣うように、自らの子供たちを自身の監督作品に登場させている。

「実は祖父も俳優だったので、僕の監督作品に子供たちを登場させたことで、祖父、父、私、そして子供たちと、4世代のパーキンス家がスクリーンに登場する事になりました」と芸能一家である誇りを口にしながら「いつも奇妙なホラー映画ばかりを撮っているので驚かれそうですが、僕の根底にあるのは“素敵な映画を作りたい”という映画愛。先人たちが作り上げた映画文化に敬意を払って、芸術の栄光のためにやらねばという使命感すら持っています」

亡き父も草葉の陰で喜んでいるはずだ。

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