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バックパッカーに人気の出版社、活動終了を発表 往年のファン「さようなら私の青春」「人生を変えてくれた」「バイブルでした」

金井 かおる 金井 かおる
作家の蔵前仁一さん(本人のXから)
作家の蔵前仁一さん(本人のXから)

 旅行専門の出版社「旅行人」(東京都練馬区)は5月19日、出版、販売活動を終了したと発表しました。同社代表で作家の蔵前仁一さん(70)はまいどなニュースの取材に対し、「会社を平穏に閉じられ、やり切った気持ち。今後は旅を楽しみたい」と話しました。

「バックパッカーの教祖」として人気に

 蔵前さんは1980年代、アジア各国を旅した記録「ゴーゴー・インド」「ゴーゴー・アジア」(いずれも凱風社)を出版しました。当時はインターネットもスマートフォンも普及しておらず、紙のガイドブックが主流の時代。リュック一つ、体当たりの貧乏旅行記は多くの若者に影響を与え、蔵前さんは「バックパッカーの教祖」と呼ばれました。

 1988年10月に自ら、バックパッカー向けのミニコミ誌「遊星通信」を創刊。モノクロ12ページ、定価100円、発行部数50部でのスタートでした。滞在していたアフリカで手書きの誌面を仕上げ、日本の読者へエアメールで直接送ったことも。順調に部数を伸ばし、1993年10月に誌名を「旅行人」に変更し、月刊化。1995年には発行部数2000部を達成し、有限会社旅行人を設立しました。

経営者になっても野心なく

 執筆陣の中には、旅を通じて出会った人たちもおり、多くの旅行作家を世に送り出しました。その一方で、蔵前さん自身は、経営者としての責務が増え、自由気ままに旅をする機会が減りました。

 「執筆された人たちに、好きな本を出してもらうために出版社を作った。雑誌を作るのは楽しみで、本を作るのも大好き。でもビジネスマンとしての野心はない。会社経営は責任が出てくるし、面倒臭い。時間にも縛られる。経営者の仕事は自分には向いていないから嫌だった」(蔵前さん)

 インターネットの発達に伴い、旅の情報を得るツールは紙からデジタルへ移行。月刊「旅行人」は2012年に休刊し、その後は「細々と単行本を出してきました」(蔵前さん)。

10年ほど前から会社を畳む準備

 年齢のこともあり、会社を畳むことは10年ほど前から考えていました。社内の在庫を廃棄処分するのは忍びなく、バーゲンセールをくり返しながら、徐々に規模を縮小。ようやくめどがついたタイミングで活動終了を発表しました。会社のホームページも閉鎖する予定だといいます。

 現在の心境は。

 「会社を平穏に閉じられ、やり切った気持ち。肩の荷が下りてうれしい」(蔵前さん)

 今後は個人として執筆活動を続ける予定。中国や東南アジアへの旅も計画しており、「この年になって(責任が)軽くなるのはうれしい。今後は旅を楽しみたい」と声を弾ませました。

     ◇

 終了を知った往年のファンらは、SNS上で「さみしいお知らせ」「長い間お疲れさまでした」「インターネットがない頃のバイブルでした」「人生を変えてくれた出版社」「さようなら私の青春」などと反応しています。

     ◇

▽蔵前仁一さん…1956年鹿児島県生まれ。慶応大学法学部政治学科卒。主な著書は「新ゴーゴー・インド」「新ゴーゴー・アジア」「シベリア鉄道9300キロ」(いずれも旅行人)、「旅で眠りたい」(新潮社)、「あの日、僕は旅に出た」(幻冬舎)など多数。最新刊は「ホーボー・インド」(産業編集センター)。実家は鹿児島県霧島市にある1917(大正6)年創業の老舗旅館「旅行人山荘(旧・丸尾温泉旅館)」。

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