これがガラスのカケラ?…長い年月を波で磨かれた美しさ 姉妹で営む工房から生まれた「シーグラスアート」

平藤 清刀 平藤 清刀

シンプルな線で描かれたイラストにシーグラスを組み合わせたデザイン。飾りすぎない余白が、視覚的に余計な情報を与えず、ある種の癒しさえ覚える。そんなシーグラスアートの魅力について、岡山県倉敷市で妹のみほさんと一緒に「ゆきみ工房」を営むYukiさんに話を伺った。

インテリアを探していたら偶然目についた

シーグラスはビーチグラスとも呼ばれ、長い年月にわたって波に揉まれて丸みを帯びたり磨かれたりして、独特の風合いを醸し出すガラス片のこと。海岸や湖畔で見つかるほか、人工的に磨かれたものもある。その美しい特徴をアート作品に活かしたのが、シーグラスアートである。

昨年(2021)5月、Yukiさんの妹・みほさんが、自宅に飾るインテリアを探していた。

「フリーマーケットのサイトでカワイイ雑貨を探しているときに、たまたまシーグラスアートを見つけたらしく『お姉ちゃん、一緒に選んでくれない?』っていわれたんです」

Yukiさんもすぐ気に入って、みほさんと2人でひとつずつ購入すると、今度は「自分たちでもつくりたいな」という想いが湧いてきた。

「シーグラスって、どうやって手に入れるんだろうと思って、同じくフリーマーケットのサイトで検索してみたら、売っている人がいたので取り寄せてみたんです」

海岸や湖畔に打ち上げられた漂着物を収集したり観察したりする「ビーチコーミング」で拾えるだろうと思ったら、そう簡単ではないという。

「海岸まで拾いにいったことがあるんですけど、全然なくてね。あんまり人の手が入ってない海岸で、入手しやすいスポットがあるみたいです」

同じ形には二度と巡り合えない制約がある中での創造が面白い

Yukiさんは高校時代の選択科目で美術をとっていたという。またグラフィックデザインの職業訓練で、デザインやスケッチなどの素養を身につけた。

「水彩画や色鉛筆画をポストカードにして、販売してみたことがあります」

ご本人は「趣味ていどです」と謙遜するが、シーグラスアートにもその経験が活かされているのではないだろうか。

Yukiさんは、シーグラスアートの魅力を「制約のあるところが面白い」という。

「例えば絵画は、イメージを無限に広げていける自由度が大きいです。シーグラスは同じ形がないし、色も4色ぐらいしかないところで作品をつくっていくので、それが難しくもあり楽しくもありですね」

ちなみに作品のつくり方は我流だとか。「自分でもつくりたい」と思ったときに、他の作家さんの作品を丹念に観察して、シーグラスが接着剤で紙に貼り付けられていることを知った。

「文字は印刷で、イラストは直接手描きしています。そこへガラス用の接着剤でシーグラスを貼り付けていきます」

接着の工程が意外に難しいそうだ。

「接着面が凹面になっていたら、接着剤が十分につかず、作品を立てたときにストンと落ちてしまうことがあります」

縦10cm、横8cmぐらいの小さなものから、大きいのはA4サイズまで、これまで600点近い作品をつくってきた。シーグラスのほかにも「シー陶器」や「シーレンガ」と呼ばれる陶器やレンガの小片も素材になる。

今後のことを尋ねると、やや不安があるという。

「まず、シーグラスがコンスタントに手に入り続けるかどうかという不安があります。そして作品のアイデアが、新しく浮かぶかということも。新規のお客さんに見つけてもらう努力も怠れないし、ハンドメイドの世界を続けていくのは、本当に大変です」

クリエイターとしての苦悩や苦労を滲ませるYukiさん。だがシーグラスアートがもっとメジャーになってほしいという願いも抱いているようだ。

Yukiさんの作品が欲しいという人がいる限り、魅力あふれる作品が生み出されることを期待したい。

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▽ゆきみ工房 Twitter
https://twitter.com/YUKIMIKOBO

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