自信を持って書いているのに誤読されるカタカナってありますよね。代表的なのが「シ」と「ツ」、「ソ」と「ン」でしょうか。微妙な角度やはね、はらいによって、「ガソリン」が「ガソソソ」になる悲劇も。そんな謎を解き明かす自由研究が話題です。
「お手軽な自由研究をしました!グラデーション見てると混乱してくるのでぜひそこだけでも見てみてください」と、Twitterユーザーのみっけ(@q_micke)さんが投稿した自由研究のテーマは「「シ」と「ツ」、「ソ」と「ン」の境界をさぐる」。2万以上のいいねを集めて話題です。
公開した図解の見どころは、「「シ」から「ツ」、「ソ」から「ン」へ微妙に変化していくグラデーション」。角度を少しずつ変えていますが、凝視しすぎて「シがだんだん笑っている人の顔に見えてきました」「シもツもにっこりマークに見えてきた」というコメントも。脳が混乱するユーザーが相次いでいるようです。
趣味や仕事でロゴデザインのような「文字の形」を扱うことがあるみっけさんに聞きました。
ーあらためて、カタカナって難しいですね
「カタカナは記号的で難しいなと常々思っていました。その中でもよく似た「シとツ」「ソとン」は普通に書いてもややこしいと思います。似ているけどなんとなく見分けている文字の境界があるのかないのか、探ってみました」
ー他にも混乱を招きそうな字は
「リプライでは、「ソとン」以外にも「リ」がある!というご意見をいただきました。確かに似てますよね」
ー日本語になじみがない人の目にはどう映るのか、想像するのも面白そうです
「日本語以外でもこういったことはあると思うので、そこも気になります!」
漢字のゲシュタルト崩壊現象
日本心理学会のサイトでは、「漢字のゲシュタルト崩壊現象」について解説しています。
同じ漢字を長い間、あるいは繰り返し見続けていると、各部分がバラバラに知覚されたり、その漢字がいったいどんな漢字であったかわからなくなってしまうという経験は広く共有されており、一般的に漢字のゲシュタルト崩壊現象と呼ばれています。
なぜこのような現象が起こるのでしょうか。サイトの解説によると、ファウスト(Faust, 1947)は、図形などをちらっと見たときにはそれが何であるか知覚できるのに、そのまま注視し続けると、すぐにそのパターンの全体的印象が消失し、わからなくなってしまうという失認症の症例を報告し、このような現象をGestaltzerfall(ゲシュタルト崩壊)という用語を使って記述しました。この失認症の症例ほど極端ではないにせよ、通常でも持続的に注視すると同じように全体形態の認知が減衰してしまう可能性があるのです。この一例が漢字の「ゲシュタルト崩壊現象」となります。
実際に、ある特定の漢字、例えば「貯」(以降、注視漢字と呼びます)を、長時間(約25秒間)見続けたあと、注視漢字と同じ漢字(「貯」)や同じ構造をもつ漢字(「訴」)が提示された場合、それらの認知反応時間が遅れることが示されています。これに対して、一部分が同じでも構造が異なる漢字(「賃」)や読みだけが同じ漢字(「著」)が示された場合にはこのような反応時間の遅延は生じないといいます。また、このような持続的注視による反応時間の遅れは、漢字に似たような構造をもつパターンであれば起きることが示されています。
漢字のゲシュタルト崩壊現象は、長時間パソコンの画面を眺めたり、テレビゲームを行ったりして生じる目の疲れと異なるものだと考えられています。