2020年にSNSに投稿された1枚の猫ちゃんの絵。写真かCGにも見えるリアルさに目を奪われますが、この絵はなんと色鉛筆によるものでした。その作画経緯も合わせておおいに話題となり、結果的に16万人もの「いいね」(2022年6月現在)を獲得。その投稿を目にした出版社の編集者が、「なんとしてもこの絵を描けるようになるためのぬりえを出したい」と奮闘。7月にめでたく刊行となりました。
『音海はるの「ねこぬりえ」BOOK』という本で、著者の音海はるさんのお手本を前に、色鉛筆でリアルな猫ちゃんをぬりえ形式で描けるもの。猫好きはもちろん、ぬりえ好きの人、絵を描くことが好きな人にピッタリの一冊です。この本の中身を覗きながら、著者の音海はるさんにも話を聞いてみました。
15猫種のリアルイラストを、著者の音海はるさんと一緒に描くような優しい構成
『音海はるのねこぬりえBOOK』で描ける猫ちゃんはメインクーン、MIX(白黒猫)、MIX(ハチワレ・シャム風)、マンチカン、エキゾチックショートヘア、アメリカンカールなど全15猫種。いずれも著者の音海はるさんによる親切なぬりえの解説と、色鉛筆ならではの「ぬり方」「濃淡の付け方」「グラデーションの付け方」なども収録されています。
一見すれば、すごくレベルが高そうに見える色鉛筆による猫ちゃんのぬりえです。しかし、親切な解説が優しく、どことなく手にとった人と同じ目線で書かれているような印象です。このことから色鉛筆を使って、音海はるさんと一緒にぬっていくような気持ちになります。
聞けば、音海はるさんは現在も美術系の大学に通う大学生で、高校2年のときに友人の影響で色鉛筆画を始めて以来、独学でその腕を磨いてきたとのことです。本人に聞きました。
「大変ありがたいことに、作品の展示会やSNS等で私と同じように猫を塗れるようになりたいというお声をたくさんいただいていたので、今回の『ねこぬりえ』はまさにピッタリだと思った次第です。ただ、技法や塗り方の解説などの文章がとても大変でした。普段こういった執筆はしてきていないので、どう伝えたらわかりやすいのか、見てくださる方が知りたいことはなんなのかなどをじっくり考えながら執筆しました。担当の方にいろいろアドバイスをいただいたり、さまざまなご提案をいただいたりと、サポートしていただいたおかげで、最後まで執筆できました」(音海はるさん)
見本通りにぬってほしいが、それ以外のぬり方で楽しむのも◎
どこか謙虚で控えめな印象の音海はるさんですが、だからこそ読者の目線に近い解説になっているのかもしれません。ただし、「ぬる」ことに対する思いは当然強い様子。特に「ぬりえの線画には特にこだわったとも」とも。
「ぬりえの線画にもかなりこだわりましたので、見本通りにぬってもらいたい気持ちもあります。しかし、自分だけのオリジナルのぬり方でも楽しんでもらいたいという想いもあり、色を薄くしたり、線の描き方も工夫したりしました」(音海はるさん)
色鉛筆で作品に命を吹き込むイメージで描く楽しさ
音海はるさんは、生まれつき右目が見えませんが、「両目でものを見たことがないのでよくわかりませんが、ハンデを負っている感覚はありません」と言います。他方、ほとんどの作品で、下絵を描いたあとに、最初に色を入れるのは瞳だそう。「目を大切にしようという思いから、最初に集中して描くようにしています」とのことです。
また、作品の制作を重ねていくにつれ、「色鉛筆で作品に命を吹き込むイメージで描く楽しさに気づきました」「今回の出版をきっかけに『色鉛筆』という身近な画材にも数多くの表現方法があり、奥深さがあることを伝えたい」とも語ってくれました。
最後に改めて本書への思いについても聞きました。
「私の『ぬりえ本』を本屋さんでたまたま見かけたり、知ってもらえたりするだけでも非常に嬉しいです。もし猫の塗り絵をしてみたいと思ったり、色鉛筆画に興味をもっていただいたりした際には、ぜひお手に取っていただけたらと思います」(音海はるさん)
『音海はるの「ねこぬりえ」BOOK』https://www.futabasha.co.jp/book/97845753173290000000?type=1