家族になれて良かった
ーーもともとどんなきっかけで「柴犬」と暮らすことに?
「祖父母を続けて亡くし、家の雰囲気が暗くなった時、近所のペットショップでウィッシュに出会いました。その日は買う予定ではなかったのですが、ウィッシュを抱っこした幸福感で購入を決めました。つまり、私も批判されやすい衝動買いをしてしまったと言えます…。けれどウィッシュと家族になれてとても良かったと思います。家の中はにぎやかになり、お留守番中のウィッシュは今日はどんな悪いことをしているのか…とワクワクしながら家に帰っていました」
ーー「柴犬は賢い」とツイートされていましたね。
「飼い主への信頼も厚く、家に帰れば大喜びで迎えてくれます。かと思えば、ツンデレなところも魅力で、飼い主が家に帰ってきたのに目もくれず、無視してるのかと思えば尻尾を嬉しそうにパタパタ振ったり、名前を呼ぶと耳を平らにしながら走り寄ってきます。本当はものすごく嬉しいのに、それを悟られないように平静を装ってる姿がとても可愛いです」
ーーウィッシュくんは緑内障で両目の眼球を摘出していてお目めが見えないのだとか。
「ウィッシュは表情が豊かで、ニコニコ笑ったり、鼻に皺を寄せて怪訝そうな顔をしたり、目がなくても顔や雰囲気で喜怒哀楽がわかり、コミュニケーションが取りやすいです。ちゃんと家の中の涼しい場所を理解して、扇風機の前を陣取ったり、クーラーの効いた部屋でヘソ天になって寝ていたりします。とても無防備で、多少突っついても爆睡して起きなかったり、寝顔がブサイク…なのも可愛いです」
安易に動物への想いを捨てないで
ーーこれから「柴犬」と暮らしたいと考える方にどんなことを伝えたいですか?
「柴犬に限らず、動物を飼うことは簡単なことではないと思います。言葉が話せない分、人間が察してあげないといけないし、我慢強いせいで病気の予兆を見逃さないよう常に観察しておく必要があります。もちろん、食事、病院、ワクチン、保険、トイレシートなどの消耗品など、飼育費用も想像以上にかかります。クラウドファンディングで飼育資金を集める人もいますが、もっての外だと思います。命を預かるからには、それ相応の覚悟が必要です。最期まで面倒を見る自信がないのなら絶対に手を出さないこと。動物のために時間もお金も惜しまないことが大切だと思っています。その課題をクリア出来れば、きっと良いパートナーとして犬や猫と一緒に暮らせると思います。
どんなに凶暴で手がつけられない子でも、飼い主が見捨てた時点でその子の一生は終わりです。飼い主が見捨てれば敏感な動物たちはそれを察知し、飼い主への信頼は失われてしまいます。どうか安易に動物への想いを捨てないでください。ちゃんと『家族』と向き合い、最期まで愛情たっぷりに育ててあげて欲しいです。動物たちはきっと想いに応えてくれると思います」
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「柴犬」は日本の天然記念物に指定されている日本原産の「日本犬」。見た目が可愛く、小柄で飼いやすいサイズですが、猟犬や番犬として活躍していた犬種であり、自立心や警戒心が強く、活発で頑固です。ドッグランで誰とでも仲良くなれる洋犬や、抱っこが好きな小型犬と同じ感覚で飼い始めると「後悔」するかもしれません。しかし、「柴犬」の特性を理解し、個性や性格を受け止めて向き合えば、「柴犬」は楽しくて頼りになる、最高の相棒になってくれるはずです。
柴犬に限らず、「生き物」との暮らしは理想と異なることがほとんどです。SNSで発信されるペットたちの「可愛い」姿は、飼い主さんたちのたくさんの愛情や工夫、日々の積み重ねがあるからこそ。見えているのはごく一部分です。
「生き物を飼うと決めた瞬間から、もう家族の一員。人と同じよなぁ」
「ペットショップの方には、不幸な子を作らないために柴犬飼いの大変な部分もちゃんと伝えてほしいと思います」
というリプライも寄せられていたように、何よりも大事なのは、覚悟と責任を持って「家族」と向き合うこと。困ったり悩んだりした時は、かかりつけの獣医さんや信頼出来るドッグトレーナーさん、また、SNSを通じて柴飼いさんたちにアドバイスを求めてみるのもいいかもしれませんね。