軽症じゃなかった…ただごとではない倦怠感、激しい喉の痛み 第7波コロナ感染した現役医師が伝えたいこと

渡辺 陽 渡辺 陽

新型コロナの第7波、感染の広まりにより、医療が必要な人でも医療を受けられないという事態になっています。しかし、私たちはどこか、「自分がかかるわけがない」「万が一かかっても軽症の人が多いから大丈夫」だと思っていないでしょうか。

ただ、現実には、誰もが感染する可能性があり、かなり辛い症状や後遺症に悩む人も少なくありません。それでも医療が逼迫していて在宅療養をすることが求められる今、個人も企業も何らかの「備え」をしておく必要があります。実際にオミクロンに感染した近畿大学病院皮膚科の大塚篤司教授に、「新型コロナ感染への備え」について聞きました。

ずっとベッドに横たわっていました

――最初は、倦怠感から始まったのですか。

「そうです。出張が続いていたので疲れたのかなと思っていました。夜中にベッドに横たわると寒気がしたのですが、体温が平熱だったので、エアコンの効き過ぎだろうと思って就寝しました。翌日も倦怠感は感じましたが、他に何も症状がなかったので出勤しました」

――倦怠感だけだと単なる疲労だと思ってしまいますよね。

「それだけで仕事を休むのは難しい。その日は、仕事が終わってから『ただごとではない倦怠感』を感じ、夜中に激しい喉の痛みで目を覚ましました。唾を飲み込んでも水を飲んでも辛いのです。その時初めて、『もしかしたらコロナにかかったのかもしれない』と思いました。明け方には関節痛も出てきたので、勤務先の病院でPCR検査を受けたら陽性でした」

――激しい喉の痛みは何日くらい続きましたか。

「5日間続きました。病院で処方してもらったカロナールとトラネキサム酸を飲んで、ずっとベッドに横たわっていました。とにかく喉の痛みが辛かったのが特徴です」

――療養中、帯状疱疹も発症されたのですね。

「発症後1週間で帯状疱疹が出ました。オミクロンはよく帯状疱疹を発症することでも知られています。点滴や入院が必要なこともあります。発熱外来の医師がコロナも帯状疱疹も診察、治療できることは少ないので、心配であれば帯状疱疹ワクチンを接種するといいでしょう。50歳以上であれば接種できます。市町村によっては補助金が出るところもあります。他のワクチンとは2週間以上間隔をあけた方がいいでしょう」

――感染経路は分からないのですか。

「はい。家族も感染していませんし、出張先で会った医療従事者にも感染者はいません。移動する時も必ずマスクをしていました。研究の相談をした時に、マスクを外してコーヒーを飲みながら何人かと喋りましたが、その場にいた誰も感染していないのです」

企業は休みやすい体制を整えておく

――なんとなく倦怠感を感じるというだけでは休みにくいという人は多いでしょうね。

「あの時、休もうとは思いませんでした。ただ、私が出勤したので一人濃厚接触者を出してしまいました。職場にとってはマイナスでした」

――日本人の勤勉さも影響しているのでは。

「そうですね。私が留学していたスイスでは、クリスマスや年末年始の長期休暇明けに、いきなり風邪などで休む人が何人かいました。日本人なら連休明けに休むとかあり得えません」

――休みやすくするにはどうしたらいいと思われますか。

「出勤を強要しないというのはもちろん、上の立場の人には下の人が休めるようなシステム作りをすることをお勧めします。医師の場合、患者さんが待っているので難しい面もあるのですが、一般企業や公務の場合、Aさんが休んだらBさんがサポートに入るとあらかじめ決めておけば休みやすいのではないでしょうか。仕事をチームで回せるよう事前に準備しておくといいでしょう」

救急車を呼ぶ時、呼ばない時

――激しい喉の痛みや粘膜の腫れがあると不安になりますね。

「私の場合、痰が激しく絡んで息がしにくくなり、猛烈な不安に襲われました。私は医師なので自分の呼吸の音を確かめて自宅で療養を選択しました。しかし、一般の人が冷静に呼吸音を聞いて判断するのは難しいと思います」

――どんな状態になったら、救急車を呼べばいいのでしょうか。

「東京都が目安を出しているのですが、
・唇が紫色になっている(チアノーゼを起こしている)
・息が荒い
・急に息苦しくなった
・意識が朦朧としている
一つでも当てはまれば、救急車を呼んでください」

用意しておく食料など

――行政が届けてくれる在宅療養セットはいつ頃届いたのですか。

「発症から1週間くらいしたら届きました。地域にもよると思いますが、事前に療養に必要なものをご自身で準備しておくといいでしょう」

――喉の痛みが激しくては、食べる気もしませんね。

「私は、食べないと良くならないと思ったので、カップ麺のうどんとかも食べました。特に水分は必ず補給してください。脱水は命の危険があります」

――気をつけることはありますか。

「おでこや体に貼り付ける冷却用ジェルシートですが、2009年に北海道で、生後4ヶ月の乳児のおでこに貼っていたシートが滑り落ち、鼻と口を塞いだため窒息、救急搬送されるという事故がありました。幸い死亡は免れたそうです。特に、乳幼児や身体が不自由な人が使う場合は注意してください」

大塚医師に指導いただいた在宅療養物品のリスト
※個人差があります。食品は好みのものを1週間〜10日分用意してください。
※アセトアミノフェンがない場合は、イブプロフェンでも良い。
・体温計
・パルスオキシメーター
・抗原検査キット(薬局で売っている医療用のもの)
・解熱剤(アセトアミノフェン300mgのもの)
・うがい薬(アズレン系)
・トローチ
・のど飴
・氷嚢、冷却用ジェルシート
・スポーツドリンク、水
・レトルトのおかゆなどの食料品10日分くらい
など

大塚医師によると、後遺症の倦怠感も大変辛いそうです。注意していても感染してしまうことがありますが、基本的な感染対策をして、できるだけリスクを減らす行動をしたいですね。

▼大塚篤司(おおつか・あつし)医師プロフィール

近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授

信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て、2021年4月、近畿大学医学部皮膚科学主任教授。診療・研究・教育に取り組んでいる。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー皮膚疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとしてネットニュースやSNSでの医療情報発信につとめている。Twitterアカウントは、@otsukaman 著書に『世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)など。

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