お金、防災、健康…あの「うんこドリル」が企業や官庁と相次ぎコラボ ユーモアもりもり「人生を豊かで幸せに」

堤 冬樹 堤 冬樹

 小学生らに人気の「うんこドリル」が活躍の場を広げている。ドリルの出版社が企業や国などと積極的にコラボし、防災やお金、健康といった暮らしに欠かせない多様な学びを提供している。どの教材もユーモアもりもりながら、内容はいたってクソまじめ。担当者は「遊びと勉強の境界線を溶かし、大切な学びにつなげたい」と力を込める。

 うんこドリルは、文響社(東京)が2017年に出版。子どもたちが大好きなうんこに着目し、漢字問題の全例文に「うんこ」を入れるなど楽しみながら学習できるドリルだ。国語や算数をはじめとする小学生向けだけでなく、未就学児や中高生用の教材も含めると100種類以上あり、シリーズ累計発行部数は950万部とすこぶる快腸、いや快調だ。

 同社は学校の勉強のみに尻を落ち着けることなく、外部団体とのコラボ企画である啓発シリーズを2019年にスタート。まず消防庁と一緒に、救急車を呼ぶべきか迷った時の相談電話「♯7119」の広報サイトを手掛けた。

 さらに、お金の使い方や社会での役割をテーマにした「うんこお金ドリル」(金融庁)、地震や台風編がある「防災」(横浜市など)、体や健康への理解を深められる「体温」(オムロンヘルスケア)、米づくりや持続可能性に関する「食とエネルギー」(ヤンマー)などなど、これまで約20団体と連携してウェブアプリや冊子を作製。主に「うんこ先生」が繰り出すクイズ形式で、大人でも「うーん」とうなってしまうことも。問題の選択肢やデザインにうんこが随所にちりばめられるなど「らしさ」は健在だ。

 今年6月にサイトで公開されたのは、ずばり「トイレマナー」。全国の小学校から要望が多かったといい、パナソニックとタッグを組んだ。独自の調査では、小学生の6割以上が「学校でトイレを我慢したことがある」と回答したほか、約3人に1人が便器のフタを閉めて流す習慣が身についていないことが分かったという。そこで、「授業中でもうんこに行きたくなったら行く」「うんこは恥ずかしくない」といった心構えに加え、トイレの流し方やトイレットペーパーの使い方などをクイズを通して詳しく紹介している。

 「子どもたちが生きる上で身近でありながら、深く大切な学びを伝えたい」。そのようにコラボ企画の思いを大便、ではなく代弁するのは、文響社うんこ事業部で「うんこアンバサダー」を務める萩野里咲さん(27)。「堅いテーマやネガティブなイメージがあるものでも、ハードルを低く、楽しく親しみやすく伝えられるのがうんこドリルの魅力です」

 今では好意的に受け止められることが多いが、2~3年前は営業先から「ふざけすぎでは?」「炎上しないか?」と心配され、心が折れそうになったことも。ただ、とっぴな雰囲気をプンプンにおわせつつも、学びへの誠実な姿勢に対して共感を抱く団体が増えていったという。

 「今後も積極的にコラボ展開したい。それぞれの学びがつながり合って、子どもたちの人生が豊かで幸せなものになればうれしいです」と萩野さん。これからも大いに気張って、「うんこ」の可能性を追求するつもりだ。

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