「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」。香川県の地元紙、四国新聞の12月20日付朝刊にこんなメッセージ広告が掲載されました。子どものスマートフォンやゲームの利用時間を制限するとした香川県独自のネット・ゲーム依存症対策条例(ゲーム条例)を念頭に置いたもので、広告出稿元のゲムトレ(東京都渋谷区)は「子どもたちがサンタさんに欲しいものを「ゲーム」とお願いできるように、ゲームが障害ではなく、教育としての魅力があることを伝えたいと考えました」「ゲームを障害と考える一側面だけではなく、クリアすることで育まれる自己肯定感や世界中のユーザーとつながり感じる多様性など、正しくゲームと向き合うことで生まれる学びがあります」としています。
同社の小幡和輝代表が広告にふれたツイートには「最高にロックですね!」「かなり挑戦的な広告だなぁ」「香川県で広告出す勇気も凄いです」など賛同の声が上がり、いいね!は1万5千超。香川県民はこのメッセージ広告をどう受け止めたのでしょうか。
ゲムトレはゲームを使った教育事業を手掛け、主力事業の「ゲムトレ」では、ゲームを「楽しく脳を鍛える習い事」と位置づけ、子ども向けのゲームのオンライン講座を提供しています。同社サイトによると、例えばオンラインゲームの「FORTNITE」(フォートナイト)では、過度なグロテスク表現がなく、認知力や情報処理能力が向上するとしています。
話題になった15段の新聞広告は、文豪夏目漱石が東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業後、当時、低俗と見られていた小説家としてデビューし、代表作『吾輩は猫である』などで文化人になったことに触れ「ゲームの捉え方も変わりはじめた」と述べています。続けて、ゲームのプレイを通じて得られる試行錯誤や仮想空間上での達成感の分かち合いを挙げ、「ゲームは人生を豊かにする力がある」と訴えています。小学低学年も読めるよう漢字にふりがなも打っています。
香川県のゲーム条例は家庭内でのゲームの利用時間を制限する全国初の条例として2020年4月施行。罰則規定はありませんが、18歳未満のゲーム時間は平日1日60分、休日90分、スマホの利用は中学生以下が午後9時まで、それ以上は午後10時までという目役を定め、保護者にルールを守らせる努力義務を課しています。報道によると、この条例の内容や制定過程に問題があるとして、県内外から反対の声が上がっており、香川県弁護士会は廃止を求める会長声明を出している他、県内の大学生が「条例は憲法違反」として、県を相手に損害賠償を求めて提訴しています。
ゲムトレのサイトによると、小幡代表は10年間の不登校を経験しましたが、その間、ゲームを通じて多くの友人に恵まれ、大会への出場を通じて自己肯定感を高められたといい、それが起業につながったと記しています。今回のメッセージ広告については、「ゲーム好きならば誰もが一度は言われたであろう、この言葉を反転させました。伝えたいメッセージは、世代間の価値観や文化の違いにより子どもたちが苦しめられているということ。子どもは野球を頑張ることと同じようにゲームを頑張っています。なぜ、野球は評価されるのに、ゲームは悪とされるのでしょうか」などとコメントしています。
メッセージ広告は、東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナード内でも12月26日まで掲示されています。