完成は数年後? 自宅でクラシックカー「MG-TD」を組み立て中 試行錯誤の作業もまた楽し

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 奈良県生駒市の郊外、住宅街の一角でものづくりに励んでいる久保田憲司さん。2年前まで尼崎の産業技術短期大学で、ものづくり工作センターの講師を担当していました。いま、自宅でクラシックカーの再生中です。

実際に走れる、世界初のガソリン自動車のレプリカ

 現在、街を走っているガソリンエンジンの自動車、その第1号はメルセデス・ベンツのパテント・モトール・ヴァーゲンと言われています。ものづくり工作センター時代、久保田さんはこの自動車のレプリカを一から完全に作り上げました。フレームは当然のこと、エンジンのシリンダーやクランク、フライホイール、車輪もリムから全て手作りです。

「あれのエンジンがかかって、実際に走った時はものすごく嬉しかったです」

 ものづくり工作センター時代には、これ以外にもロータスヨーロッパのEV化や、1/10スケールの700系新幹線、V型8気筒のスターリングエンジン、未完に終わりましたが一人乗りの垂直離着陸機フライング・プラットフォームなど、様々なチャレンジを重ねました。筆者が久保田さんと知り合ったのもこの頃、ロータス・ヨーロッパとフライングプラットフォームを大阪モーターショーに出展していたのを取材したのがきっかけです。

自宅で久保田技術研究所を立ち上げ

 退職後、自宅で久保田技術研究所を立ち上げ、バイクやクルマの再生とカスタムメイドを続けています。

 その一つが、ホンダが1960年代に作っていたバイク、C72をフレームからリニューアルして仕上げたオリジナルバイク、C72-Type R。美しいブルーのフレームは、斬新なスタイルながらノスタルジックな印象を湛えています。「自分の乗るバイクが欲しかったから」という言葉通り、いま久保田さんの日常の足として活躍しています。

 デザインスケッチを作って、そのイメージ通りに実物を製作していく。アルミ製のタンクもまず木型を作製して、自分で叩いて形にしました。タンクのキャップもエンブレムも、全て一から手造りです。

 自宅の庭先を工場にして、部品レベルから製作していく。かつて省エネレース用にカブのエンジンをベースにDOHC化とか、そういうことをしていた久保田さんにとってはごく当たり前の工作なんでしょう。まるで「世界最速のインデアン」のバート・マンローさんみたいです。

 

70年前のスポーツカー、TD-MGを再生中

 久保田さんは現在、自動車のレストアに取り組んでいます。MG-TD。1949年から1953年の4年間イギリスで製造された二人乗りのスポーツカーで、約3万台製造されて、その3分の2以上がアメリカに輸出されたモデルです。

 いわゆる「修理」の範囲を超えて、ボディもフレームもエンジンも完全にバラバラにして補修、再構築するという完全なレストア作業。MGのボディは枠組みが木造で、その上から鉄板を貼ったような構造なので、クルマの製作なのに木工の作業が多くてなかなか大変なのだといいます。

 

「暑いでしょ、作業してても汗だくです。あんまり急いで根詰めて作業しません。せやけどちょっとずつでも毎日なんかしてんと、日が開いたら止まってしもてほったらかしてしまうからね」

 確かに、ちょっと放置すると面倒になってずっと放置になってしまいますよね。

 

「このMGは普通に乗りたいから、オリジナルにこだわりすぎません。例えばセルモーターとかも国産の部品で形が合いそうなやつを安くで見つけてきて加工します。こないだは画像で「これ、合いそう」と思ってスバルのを落札したら、回転方向が逆で失敗しました」

 試行錯誤しながらの作業も、実に楽しそうです。

 いまはフレームとエンジン、前輪だけのMGですが、なんとか年内には形にして乗りたいのだといいます。筆者もその完成が楽しみなので、この先も注目して取材を続けたいと思います。

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