豪華シャンデリア、美しいカトラリー「当店は中世ヨーロッパ風のお食事を…」→史実は手づかみ 「庶民はせいぜい豆スープ」

中将 タカノリ 中将 タカノリ

「中世ヨーロッパ風」についての認識がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは作家でマンガ原作者のRootportさんによる

「『中世ヨーロッパ風の食事が楽しめる体験型レストランってないのかな?』って検索したら、どの店も高い天井に豪華なシャンデリア、美しいカトラリーが標準装備で『どこが中世やねん!』って感じだ。俺は天井の低い薄暗い部屋で、ぬるいビールを舐めながら手づかみで鳩肉のパイを食べたいだけなのに…。」

という投稿。

たしかに中世ヨーロッパ風をうたったレストランや施設は数多い。しかしRootportさんが言う通り、5世紀から15世紀の実際の中世ヨーロッパでは高い天井の建築やシャンデリア、ナイフ、フォークなどの食器はほとんど普及しておらず、多くの人は劣悪な環境の中で手づかみで食事をとっていたのだ。Rootportさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「イースト発酵してないパンを皿にして料理を盛り付けて、食べ終わったらパンを床に落としたら待ち構えていた清掃犬か清掃豚がパンを貪り食べるみたいな感じでしょうか」
「皿さえ無く、パスタは手づかみ。ポレンタ(粥)も器に盛らずテーブルクロスに直置き。時々、召使いに持たせた瓶の水で手を洗う。」
「ガチ中世料理は庶民のは良くても豆のスープだなぁと思ったらフランス革命時の農村も中世レベルだったという 王族と貴族はそれほど肉食でも無かったとか」
「機械による冷凍冷蔵技術の実用化は19世紀後半。それまではぬるいビールしか飲めなかったし、輸送も大変なので醸造所の隣にビアホールがあったのです。」

など数々の共感の声が寄せられている。

Rootportさんにお話をうかがってみた。

ーー世間の「中世ヨーロッパ」に対するイメージについてどのようにお考えですか?

Rootport:おおむね近世から近代くらいのヨーロッパ文化を指して「中世ヨーロッパ」と呼んでいるケースが多いと思います。実際の中世ヨーロッパでは、食事は手づかみで、ガラスのシャンデリアもコーヒーも紅茶もジャガイモもトマトも唐辛子も存在しなかったのですが。

ーー実際に中世ヨーロッパにあったメニューや作法で、特に体験されてみたいものをお聞かせください。

Rootport:中世ヨーロッパの貴族はお抱えの猟師に狩りをさせて、鳩やウズラのような鳥類やウサギのような小動物をパイ等にしてよく食べていたそうです。そういうジビエ料理であれば、今の日本でも比較的簡単に再現できるのではと思います。

ーーこれまでのコメントや反響へのご感想をお聞かせください。

Rootport:中世ヨーロッパというと、歴史ファンの間では「暗黒時代」のイメージが強いようです。いただいたコメントも、当時の衛生観念の低さを懸念するものがとても多かったです。私としては衛生レベルは現代日本レベルに引き上げた上で、美味しい中世の再現料理が食べられたら嬉しいな…と思っています。

◇ ◇

読者のみなさんは今回のように言葉の思い違いをしていることはないだろうか?言葉はよくよく調べて使いたいものだ。

なお今回の話題を提供してくれたRootportさんは現在、原作を担当した漫画「神と呼ばれたオタク」をマンガサイト「くらげバンチ」(新潮社)にて連載中。同作は第2巻も好評発売中なので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。

Rootportさん関連情報

Twitterアカウント:https://twitter.com/rootport
「神と呼ばれたオタク」:https://kuragebunch.com/episode/3269632237305134528

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