「最近、冷たいもので歯がしみる…」 知覚過敏のメカニズムとは、歯ぎしりやビールの飲み過ぎが原因かも?

山本 智行 山本 智行

 冷たいものや酸味の強いもの、歯ブラシの毛先が当たったときにピリッとした痛みが走ったりするのが「知覚過敏」です。その原因はなんなのか。どう対処したらいいのか。吉本興業所属で唯一の歯科医芸人”パンヂー陳”こと、陳明裕さんが解説してくれました。(聞き手・山本 智行)

陳さん、最近暑くなったんで、冷たいものを飲む機会が増えたんですけど、虫歯ができてるわけでもないのに、歯がしみるんですけど…。

陳明裕(以下陳):それは、知覚過敏ですね。

--おやっ、きょうはストレートですね。で、どんなメカニズムで起こるんですか?

陳:正式には象牙質知覚過敏症と言いますが、普通、象牙質はエナメル質という人体で一番固い組織やセメント質で覆われているんですが、簡単に言うと何らかの原因で象牙質が露出したりして、刺激が神経に伝わりやすくなるために起こります。

--象牙質ですか。それがなんで、露出するんですか?

陳:それは、山本さんの様にお年を召してくると、加齢や歯周病で歯茎が下がって「象牙質の露出」が起こったりします。歯周病の予防は歯ブラシが基本ですので、しっかり磨いてください。

私、なるべく歯医者に行かんで済むようにめちゃくちゃ歯磨きしてますよ。その証拠に歯と歯茎の境目が楔形に擦り減ってきてますもん。

陳:ちょっと待った。そのすり減りから象牙質が露出してるのかも知れませんね。それは、くさび状欠損と呼ばれ、確かに横磨きや過度な歯ブラシ圧も原因の一つと言われていますが、歯ぎしりや過度な食いしばりが関連していることが多いんです。山本さん、寝てる時に歯ぎしり、してはるんちゃいますか?

確かに、歯ぎしりがひどい、と言われたことがあるような。

陳:一説には歯ぎしりの力は、100キロに及ぶとも言われていますので、実際に擦りあわされる面の摩耗や咬耗だけじゃなく、歯頚部のエナメル質へのダメージも楔状欠損の要因と考えられています。歯ぎしりがひどいようならマウスガードをして寝ることを、お勧めします。

あと、知覚過敏は食生活との関連も深いです。酸を含んだ食品や飲料の摂取でエナメル質表面に酸蝕が起こって、それが知覚過敏を誘発することもあります。

そんなこと言われても、酸性の食べ物を全部避けるわけにも行きませんし、夏ですからビールも飲みたいですし、スイカも食べるでしょう。スイカが酸性食品かどうか知りませんが。

陳:スイカはPH6くらいなので大して酸性は強くありませんが、ビールのPHが4前後、スポーツ飲料や乳酸飲料が3.5、コーラにいたっては2.5くらいですので要注意ですね。

ってことは、私の知覚過敏は、仕事帰りの一杯が原因かも知れないってことですか?

陳:一杯で済んではらへんでしょう!食べ物や飲料の酸でエナメル質が脱灰されても、再石灰化で修復されますので、飲む回数を減らすとか、お酒を飲むときはチーズとかヒジキ、ワカメなどの海藻類などのアルカリ性食品をおつまみにして飲めばある程度は中和されます。

それとフッ素。フッ素は歯から溶け出したカルシウムやリンの再石灰化を促進する作用がありますので、フッ素入りの歯磨き剤や含嗽液の使用もオススメです。

それならチューハイは?

陳:ダメダメ。缶チューハイはPHが3弱くらいの製品が多いのでビールより酸性は強いです。できれば、お酒じゃなくお水にしてください。「自分磨きは歯磨きから」とも言いますし、とりあえずこれ以上歯茎が下がらない様に、歯磨きを心がけてください。

「自分磨きは歯磨きから」ですか。私、歯磨きし過ぎで歯の横がすり減ったって、さっきも言いましたけど、それだけじゃなくて、最近は磨くとすぐに血が出るんですよ。歯磨きを控えた方がいいですか。

陳:控えるのは、お酒だけにしてください。歯肉に炎症が起こっていると、歯磨きですぐ血が出ますけど、血が出るからと言って磨くのを控えたら、ますます炎症が進んで悪循環になってしまいます。お口の健康のためには文字通り通り「血のにじむような努力」が必要。100~200グラムの適正な歯ブラシ圧を守り、出血は気にせず磨いてください。

歯磨きで知覚過敏が治りますか?

陳:軽度なものならば再石灰化で象牙質の露出が改善されることもあります。硝酸カリウムなどを含んだ歯磨剤が効果的なこともありますし、歯科医院にお越しいただければ、樹脂などで露出部分を被覆したり、低出力レーザーを照射したり、色々な対応が可能です。

その前に、山本さん、ちょっと、舌を見せてみて。
あっ、これは、かなりやっちゃってますね!

人の舌見て、変な言い方せんといてくださいよ。何なんですか?

陳:鏡でご自身の舌を見てみてください。舌の側面に歯の圧痕が残ってるのが分かります?これは舌が歯を押さえつける癖がある証拠なんですが、ふだんの舌の位置が正しい位置にあれば、まずこのような圧痕は残りません。これがある人はかなりの確率でTCH(Tooth Contacting Habit)と言いまして、上下の歯をふだんから、かみ合わせる癖のある人が多いんです。

はぁー?歯はかみ合わせるためのものなのに。かみ合わせていて何が悪いんですか?そんな「舌足らずな」説明じゃさっぱり分かりません。

陳:普通、上下の歯がかみ合わさる時間はトータルで1日20分くらいと言われています。舌に跡が残るってことは、かなりの時間そうしている証拠です。先ほど申しましたように食いしばりや歯ぎしりで知覚過敏症が起こるだけでなく、例えば歯は大体6時間以上持続的な力がかかると移動するので不正咬合の原因にも成り得ますし、顎関節症との関連も指摘されています。

有名な木野先生の論文では顎関節症患者さんの8割がTCHを持っているとの事です。ですから「TCHとかけて、丈の長いスカートでの外出と説く、その心は、シタが付かない様に注意が必要です」

はい、お後がよろしようで…。

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