なぜ分かりにくい? 参院選、試行錯誤を繰り返す比例代表制度

村山 祥栄 村山 祥栄

参議院議員選挙(6月22日告示・7月10日投票)の火蓋が切って落とされる。全248議席のうち半分の124議席が改選の対象となる。選挙区74人、比例代表50人という椅子を巡って各党が争う。投票所で我々に手渡される投票用紙は2枚で一枚は都道府県ごとに割り振られた選挙区(一部合区あり)の投票用紙と比例代表という投票用紙だ。

分かるようでよく分からないのがこの比例代表という制度だ。なぜなら、この制度はコロコロ変わる上に衆議院選挙の比例代表とも混同されやすく、とにかく分かりにくい。

もともとは戦後、参議院全国区という名で全て個人名を書く制度として出発した。個人で全国を駆け巡ることで莫大な選挙費用が掛かることから、全国区を文字って銭酷区、8億なら当選、7億なら落選という8当7落などとも揶揄された。また参院選は夏の熱い時期にあたり、全国を駆け巡った結果疲労が蓄積し、選挙後に当選者が死亡するという不幸も重なり、1980年に制度が改変された。

1983年から1998年までは、政党名を書く制度となり、当選順位は全て党が決める拘束名簿式が導入されるようになる。そうすると今度は党への貢献度が重視され、水面下での名簿順位争いが過熱する一方、民意が十分に反映されないなどの批判も出てくる中、2001年より名簿順位を予め決めない非拘束名簿式へ再び改変されて今日に至っている。

現在、この比例代表の投票用紙は、政党名でも個人名でもどちらを書いてもよい。例えば、A党の立候補者Bさんの場合、「A党」と書いても「B」と書いてもいずれもA党の票になる。党名・個人名の合算した党の票数に応じて50議席を割り振っていく。

じゃあ、個人名いらないのでは?と思うなかれ、政党内での当選順位を決めるのは、個人名の多い順で決まる。候補者がこぞって「党名ではなく個人名を」と呼び掛けているのはその為だ。ここまでならまだ理解できると思うが、さらに2019年より特定枠という新たな制度が導入された。これは、原則票数で党内の順位を決めるのだが、その例外として一部党が指定した候補については優先的に順位を付けることが出来るという制度でまさに「特定枠」なのだ。

したがって、政党として「どうしてもこの候補を当選させたい」と思えば特定枠を使い名簿順位一位すれば党として議席を確保できた時点で当選となる。前回の参院選でれいわ新選組の山本太郎氏が100万票近い大量得票したのにもかかわらず落選し、知名度のなかった船後靖彦氏と木村英子氏が当選したのはこの特定枠を活用したものだった。

結局、選挙制度というのは何がいいのか、未だにその解は見つからないまま試行錯誤を繰り返しているが、ぜひとも現行の制度とその経緯をご理解を頂き投票所に足を運んでもらいたいと思う。

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