「そっくりさん」というより「春菜のお母さん」 選挙ポスターで話題の「ハリセンボンそっくり市議」を直撃

竹内 章 竹内 章

「だから…ハリセンボンじゃねーよ」と自らにツッコミを入れた選挙ポスターが奏功してか、熾烈な兵庫県尼崎市議選で4選を果たした須田和(むつみ)さん。6月7日の当サイト『「だから…ハリセンボンじゃねーよ!!」春菜そっくりの市議選立候補者が話題 選挙ポスターに鉄板ギャグ』記事内では「カンニング竹山、マイケル・ムーア(映画監督)、KFCカーネル・サンダース、シュレック、ステラおばさんに続き、名を刻まれるべき逸材」といじらせていただいたが、ベテラン市議たる当人はどう思っているのだろう。「ポスターよりも実物の方が雰囲気がある」という証言もある。会いに行った。

真夏日となった6月某日午後、尼崎市議会議事堂の応接室。「この部屋、暑ない?」と入ってきた須田さんは、Tシャツにオレンジ色のジャケット。明らかに選挙ポスターの雰囲気に寄せている。朗らかに「記事、読んだよ~」。聞けば、その日のうちに、テレビ朝日系列の朝の情報番組「グッド!モーニング」のディレクターからアポが入り、夜にZOOMでインタビュー。火曜朝に放映されると、故郷広島の高校の同級生が「むっちゃんやん!」とテレビの前で腰を抜かし、選挙について研究しているという人から「ぜひ選挙ポスターを送ってほしい」と連絡もあったそう。ネットの力、恐るべしである。

よどみなく進む会話、というかおしゃべりが止まらず、時折目を細めて大笑いする。須田さんの第一印象は朗らかなおばちゃん(1956年生まれ)である。尼崎JR脱線事故があった2005年当時、記者は尼崎市役所を担当していたが、須田さんが市議に初当選したのは2009年であり、お会いするのはこの取材が初めて。記者はハリセンボン春菜を取材したこともないため、あくまで個人の感想だが、「そっくりさん」というより「春菜のお母さん」(もちろんこちらもお会いしたことはない)に近いではないだろうか。なお春菜同様、須田さんもお肌のツルツル感が半端ない。

須田さんによると、1期目のころから「おばちゃん、ハリセンボンに似てるね」と子どもに話しかけられるのはざら。当初は「芸人さんかあ」と思う程度だったが、期数を重ねるうちに情報番組で「ハリセンボンそっくり市議」と取り上げられることが相次いだ。「でも自分から『春菜そっくりでしょ』とはよう言わんわ。春菜さんは30代(吉本興業のHPによると、1983年2月23日生まれ)やから、六十過ぎの私が言うのは失礼かな思て」。

「角野卓造じゃねーよ」でブレーク後、朝の情報番組「スッキリ!!」のサブMCに抜擢されるなど、お笑い以外にも活動の場を広げる春菜がずっと気になっており、その胸中は、めいの活躍を郷里から見守るおばのよう。東京・阿佐ヶ谷であったハリセンボンのライブに駆け付け、「お世話になってます」と差し入れをしたこともある。「吉本のスタッフさんが『春菜、呼びましょうか』と気を使ってくれたんですが、恥ずかくて『いいです、いいです』と」。もう完全に親戚のおばさんである。

さんざんいじった後にいうのもなんだが、須田さんは、市民オンブズ尼崎が公表した議員通信簿で2期連続1位である。後援会をつくらないことをモットーにしており、選挙戦では組織に頼らない活動をしている。三田市から引っ越してきたので、尼崎に強い地盤があるわけでもない。2013年の市議選で再選を果たしたものの、得票は初当選時より大きく減らした。

その苦い経験から生まれたのが、2017年の選挙からポスターに書いたあの「ハリセンボンじゃねーよ」とギャグとイラストが得意な友人が描いた似顔絵である。そして新型コロナウイルス禍の中、厳しい戦いとなった今回も。「『そこまでしなくても』とおっしゃる方もいます。でも選挙ポスターに『なにこれ?』と立ち止まってくれた人が誰かと会話のネタにしてもらい、そこから議会や尼崎の街づくりに興味関心を持ってくれればこれ以上の喜びはありません」

4選を果たしベテランの域に達した須田さんは、2022年予定の中学校給食の充実やシニア世代市民の知見を活かす街づくり、ひとり親家庭の就労支援策の拡充などを目指しているそうだ。そして、「スッキリ!!」で安定したトーク力を磨き、親しみやすいキャラとして新しい立ち位置を築いた春菜。

いつか、夢の対談実現しないかな。吉本興業さん、この企画どうでしょう。

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