「美容院脳卒中症候群」という症状をご存知でしょうか? その名の通り、美容院での症例が多い症状なのですが、聞き慣れないという方がほとんどかもしれません。症状が引き起こされる原因や対処法などを吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――初めて聞く病名だったのですが、「美容院脳卒中症候群」とはどのような病気なのですか?
美容院で髪を洗ってもらう際、アゴを上げた体勢になりますよね。男性の場合はうつ伏せの体勢であることが多いのですが、うつ伏せであれば特に血管等に影響はありません。しかし、女性に多い仰向けの体勢ですと椎骨動脈(ついこつどうみゃく)が狭まってしまうため、危険だといわれているんです。
――どのような症状が出るのでしょうか?
椎骨動脈というのは小脳のあたりに位置していますので、めまいや吐き気、さらに脳梗塞を発症するようなひどい場合には対象物が二重に見えたり、ろれつがまわらないなどの症状が起こることもあります。
――症状が出た場合にはどうすれば良いのでしょうか?
血流悪化によって一時的に脳貧血になっているような状態ですので、首をまっすぐにして休憩を取っていただければと思います。ほとんどの場合が一時的な症状なのですが、長時間の圧迫によって血流が滞ったことで血栓ができていた場合、再度血管が開くと血栓が脳に飛んでしまい、脳梗塞が引き起こされるということもあります。
――予防はできるのでしょうか?
できるだけ悪い条件がそろわないようにすることが大切です。たとえば、脱水になっていて液が固まりやすい条件になっていたり、逆に貧血で血圧が低くなっていたりすると余計に危険性が高くなります。仰向けの姿勢で頸椎が後屈されることが症状を引き起こす原因となりますので、少しでもめまいなどの症状が出た場合には、すぐに姿勢を改めるということも重要です。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科