マンガ「美味しんぼ」にも登場 幻の黄色いシジミを探せ! つてを頼りに1キロ入手、すまし汁を作ってみた

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 料理漫画の名作「美味しんぼ」(原作・雁屋哲、作画・花咲アキラ、小学館)で「宍道湖にはうま味がすっきりとした黄色いシジミが存在する」という話が掲載された。シジミの殻は黒色のイメージ。「黄色いシジミ」は実在するのか、追った。

 漫画「美味しんぼ」で宍道湖のシジミの話が登場するのは、14巻(1988年刊行)の「椀方試験」。関東の一流料亭の昇格試験で、料理人がシジミのすまし汁を出され、期限までに同じ味のものを作るよう言われる。しかし、知る限りのどんなに新鮮で良いシジミを使っても、同じような豊かな味が出せない。実は、そのすまし汁はシジミの本場、宍道湖の黄色いシジミを使って作ったものだった、という内容。

 作中ではシジミの殻の色は育つ海底の環境によって違い、泥地で育ったものは黒色、砂地で育ったものは黄色くなる。泥地で育った黒いシジミにはわずかに泥の臭いが付くため、すまし汁にすると泥のない、黄色いシジミの豊かな味わいとの差が明瞭になる、と展開していく。

 山陰では、シジミのみそ汁を飲む人は多いが、殻の色や微妙な味の違いを意識している人は少ないのではないか。漫画の話ではあるが、黄色いシジミは実際に存在しているのだろうか。

実在の人物がマンガに登場

 島根県はシジミの漁獲量日本一の県として知られる。宍道湖漁業協同組合(島根県松江市袖師町)によると、シジミの年間漁獲量は3880トン(2020年)に上り、全国の約4割を占める。特に宍道湖のヤマトシジミは「宍道湖シジミ」のブランド名で全国的に有名という。

 組合の桑原正樹参事(36)は「話の内容はかなり現実に即している。ただ、色は黄色というよりは茶色に近い」と話した。漫画の中で黄色いシジミについて紹介し、宍道湖の自然を守る重要性を説いた組合長のキャラクターは、実際に取材を受けた、当時の宍道湖蜆(シジミ)組合の井原信夫会長がモデルだったことも教えてくれた。

 島根県の研究機関、県水産技術センター内水面科(島根県出雲市園町)によると、シジミの生息地によって殻の色の違いが目立つのは事実とのこと。ただ、必ずしも泥地なら黒、砂地なら黄と決まっている訳ではない上、殻の色が変わる詳しい原因は分かっていないという。

 桑原参事は「味については、同じヤマトシジミなので、殻の色によって大きな違いが出ることはないのでは」と話した。漫画「美味しんぼ」は全国で取材し、しっかりした調査もされている、という話を聞いた。黄色いシジミのすまし汁をぜひ味わってみたいと思った。

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