黄色いシジミ汁実食、味は
桑原参事によると、漁師がシジミを殻の色ごとに分けて卸すことはなく、最近はあまりスーパーなどにも出回らないので、黄色を入手するのは難しいという。
また、黄色は捕れる数そのものが少ない。シジミ漁師は265人いて、黄色いシジミが捕れる砂地で漁をするのは20人に満たないという。漁師の数から計算すると黄色いシジミは全体で捕れるうちの1割以下という、まさに幻のシジミだ。
どうしても黄色いシジミが欲しいと組合に協力を依頼したところ、何人もの漁師が宍道湖でシジミをかき集め、黄色に近いシジミ1キロほどをまとめて譲ってくれた。桑原さんの言うとおり、黄色というよりは茶色に近いが、通常の黒色とは明らかに色味が違う。宍道湖の中で、比較的砂地が多い松江市側で捕れたものだという。
自宅で早速、黄色いシジミを使ったすまし汁を作ってみた。調味料は少量の塩としょうゆ。一口含むと、口にあっさりとしたシジミの風味が広がる。みそ汁では気付かないが、すまし汁にすると、通常の黒いシジミの味と比べてシジミのうま味が際立つように感じた。ついつい自宅で調理してしまったが、料理人の方に協力してもらい、味の違いを見極めてもらった方が良かったと反省した。
漫画の中では黒のシジミは関東、黄のシジミは関西で人気とあった。どちらもおいしいのはもちろんだが、黒と黄で若干の風味の違いがあるのかもしれない。
黄色は不人気?
黄色いシジミが捕れる砂地で漁をする漁師はなぜ少ないのだろうか。宍道湖でシジミ漁を続ける松江市玉湯町布志名の漁師、福間弘幸さん(49)は「正直、黄色は人気が無い」と苦笑いする。
福間さんによると、消費者の中で「シジミは黒」というイメージが強いらしく、黄色いシジミが混じると「外国産ではないか」と言われることがあるという。実際、シジミを買い取る問屋からは「黄色は客の反応が悪いからあまり持ってこないで」と言われるそうだ。黒いシジミが一般的になった今、黄色は異質な物という、イメージができてしまったのかもしれない。
こうして黄色いシジミは昔より捕られなくなっていったとみられる。福間さんは「私たちからすれば黄色も立派なシジミ。こういうシジミもあるのだと、もっと多くの人に知ってもらい、黒色とともに広く売り出していきたい」と願う。
漫画をきっかけに全国に誇る宍道湖シジミの歴史や新たな一面を知ることができた。もし、スーパーで黄色いシジミを見掛けても変な色だと思わず、むしろラッキーだと思うぐらいがよさそう。黄色いシジミに運良く巡り逢うことができたならば、貴重で豊かな味を確かめてみてもらいたい。