3年間も通行止め インフラを守るための気の長~いお話 阪神高速14号松原線の喜連瓜破ー三宅間

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 阪神高速の14号松原線、喜連瓜破(きれうりわり、大阪の難読地名ですね)と三宅ジャンクションの間が、6月1日水曜日午前4時から通行止めになります。期間はなんと3年間。阪神高速ではこれまでにない長期の通行止め工事です。いったいどのような工事なのでしょうか。

橋の中央部が垂れ下がってきている

 阪神高速で大阪市内から阪和道や近畿道、西名阪道に向かうときに通るのが14号松原線。阪神エリアに住む筆者も、伊賀や奈良方面に向かうときにはよく利用している道です。吉野や天川村に行くのにも松原線の三宅で降りれば国道309号にそのまま入れますし、年に何度か使います。その松原線の喜連瓜破から三宅JCTの間で、高架橋の架け替えを伴う大規模なリニューアル工事が行われるのです。

 阪神高速はこの区間で、長居公園通(国道309号)瓜破交差点の上を高架で跨いでいます。長居公園通は片側3車線の広い道で、また交差する府道5号内環状線も同じく片側3車線の広い道なので、交差点部分は高架橋の橋脚の間隔が広くなっています。

 こういう橋脚間のスパンが長い部分をカバーするための橋として、この部分には「有ヒンジラーメン橋」という構造が採用されました。コンクリートの伸び縮みを調整する目的で、真ん中の部分にヒンジと呼ばれる、固定せずに繋いだ部分を設けてあります。ただ、これは構造上ある程度沈下(垂れ下がり)が出ることがわかっていました。阪神高速の瓜破交差点部分では、建設当初(1979年)の見込みでは5センチほど沈下してそこで安定するだろうと考えられていたそうです。

 ところが実際には予想を超えて沈下が進み、24センチほどにもなってしまいました。そこで2003年、橋桁の下にストラットと呼ばれる部材を取り付けて、左右の橋脚部分の橋桁からワイヤーで引っ張る「下弦ケーブル構造」という方法で補強工事が行われました。ちょうど、吊り橋を逆にしたような構造です。両側からテンションをかけることで、弓矢の矢のようにストラットが上に押し上げられて、ヒンジの部分を支えるのです。

補強工事から20年、抜本的な対策が必要に

 建設から24年目の補強工事で、ある程度沈下は抑えられましたが、それからまた20年近くが経ちました。現在では、最初の状態からで20センチほどの沈下があるといいます。コンクリート自体の経年劣化なども考えると、対症療法ではなく抜本的な対策が必要ということで、2015年には架け替えの方針が決まりました。そして2020年、6号大和川線の開通で、たとえば3号神戸線から2号淀川左岸線、5号4号湾岸線で三宝から松原へ抜ける新しい迂回路ができたことなどもあって、いよいよ工事に入ることになったのです。

 今回の工事で、瓜破部分の高架橋は、ジョイントのない鋼製の橋桁に取り替えられます。街中で場所の余裕がない中、さらに下の一般道は通行止めにせずに工事を進める関係で、どうしても工期が長くなってしまいます。もし通行止めにせず、たとえば片側交互通行というようなやり方で工事を進めると、おそらく工事期間は10年を超えてしまうといいます。

 

 これから3年の通行止め。不便ですし、渋滞も増えそうです。しかし阪神高速も建設されて半世紀、老朽化は進んでいるでしょう。100年後も安全に利用するためのリニューアルプロジェクトに、ユーザーとしてできる範囲で協力していきたいものです。

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