ロシア制裁に及び腰のASEAN諸国 米中など大国のはざまで板挟み

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ロシアがウクライナに侵攻してから3カ月あまりとなる中、昨今はロシア軍兵士の士気低下なども問題となり、プーチン大統領は苛立ちを強めている。しかし、それでもプーチン大統領は強気の態度を崩しておらず、欧米とロシアの対立は長期化が避けられず、中国は傍観的な立場を続けている。一方、中小国はこういった大国間争いをどのように思いっているのだろうか。特に、日本と経済的な繋がりが深いASEANは強い不満を抱いているようだ。

それは、最近の岸田総理のASEAN歴訪からも見て取れる。岸田総理は欧州歴訪の前にインドネシアとベトナム、タイを相次いで訪問した。訪問の背景には、コロナ禍で停滞した日本ASEANの経済関係をさらに深める目的もあったが、最大の狙いは対ロシアや対中国でASEAN各国に足並みを揃えるよう促すことだった。

しかし、インドネシアとベトナム、タイともロシアによる侵攻の停止を求めているものの、それ以上のことは控える立場で、シンガポール以外のASEAN諸国は欧米主導の対露制裁には加わっていない。

今年11月に開催されるG20主要20カ国・地域の首脳会議について、議長国となるインドネシアのジョコ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を招待するほか、ロシアのプーチン大統領が出席する予定だと明らかにした。

米国のバイデン政権はロシアのG20会議参加に強く反発したが、ジョコ大統領は「G20の結束を望んでいる。亀裂を生じさせてはならない」と呼び掛けた。結果的に、岸田総理のASEAN3カ国歴訪では、日本と各国との間で考え方の違いが浮き彫りとなったと言えよう。

インドネシアとベトナム、タイだけでなく、他の国々を含めASEANには米中対立やロシアによるウクライナ侵攻など主要国間の争いごとに巻き込まれたくないという思いがある。

ASEANの中でも、ラオスやカンボジア、ミャンマーは長年中国から多額の経済支援を受けており、中国との結び付きが強い。たとえば、米国は昨年12月、中国がカンボジア南西部にあるリアム海軍基地などカンボジア国内で軍事的影響力を拡大させているとして、カンボジアに対して軍事への転用が可能な製品などの輸出規制を発表し、ラオスでは最近首都ビエンチャンと中国昆明を結ぶ高速列車が開通した。

一方、インドネシアやマレーシア、フィリピンは安全保障では米国、経済では中国という形で、正しく米中対立の狭間で難しい外交舵取りを余儀なくされている。インドネシアやマレーシア、フィリピンは南シナ海の領有権問題で中国と争っているが、この件で米国との結束を前面に押し出すと返って中国との経済関係にヒビが入る可能性があり、各国ともそこに大きな政治的ジレンマを抱えている。

よって、インドネシアやマレーシア、フィリピンなどが抱くのは、米中対立など大国間争いをASEANに持ち込むな、ASEANを米中対立の新たなフィールドにするなという率直な思いだろう。

ましてや、今日のロシアによる侵攻はなおさらだろう。ベトナムが長年ロシアと友好関係があるように、ASEAN各国にはそれぞれの対ロシアがあり、米国や日本などが対ロシアで結束を図ってくることを良く思いっていない。また、これはラオスやカンボジア、ミャンマーに当てはまるだろうが、中国が傍観的な態度を維持している現時点では、中国の顔色を窺いながら行動するしかないという現実もあろう。

おそらく、ASEANだけでなく、中東やアフリカ、中南米の多くの国も同じような思いだと想像できる。ウクライナ侵攻により、ロシア産の石油や天然ガス、小麦の輸出が規制され、世界各国では生活必需品の価格高騰が起こり、抗議デモや衝突などが相次いでみられる。中小国・途上国にとってのウクライナ紛争は、我々とはまた違ったものなのであろう。

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