ホテルのプールで娘が… 医師が直面した背筋が凍る出来事「とっさの時に何もできないだめ親父でした」

竹内 章 竹内 章

水に親しむ機会が増える季節です。名古屋市の開業医がクリニックのアカウントで、「今日娘が一瞬目を離した隙にホテルのプールで溺れて死にかけまして」と始まる出来事を投稿しました。日本救急医学会のインストラクター資格を取得したこともあるそうですが、動転してしまい溺れた際の対応がすぐにできなかったそうです。交通事故、自然災害を除く不慮の事故で亡くなる子どもは毎年200人以上。1〜4歳では溺水と窒息、5〜9歳で溺水が多いといいます。「医者でもとっさの時は何もできないだめ親父でした」(開業医)と自戒を込めた背筋が凍った経験とはー。

開業医の男性はホテルのプールで娘さんを遊ばせていました。ホテルの部屋に帰る準備をしていたところ、静かだなと思いすぐに探しに行きました。プールの底から慌てて引き上げた時は、娘さんの唇は紫で呼吸はなかったそうです。プールに居合わせた2人の医師が介抱し、救急隊が到着するまでには、娘さんは意識を取り戻しました。大泣きする娘さんに「大丈夫かな」と安堵したそうです。開業医に聞きました。

ー大事に至らなくて本当によかったです。どんな状況だったのでしょうか。

「娘の身長は110センチ。水深は120センチ程度でした。両腕に浮き輪を付けていたのですが、外してしまい静かに沈んでいったようです。段差があったので、泳げないのに1人で降りて行って深みにはまったようです」

ー引き上げた直後は

「幸運にも引き上げて間もなく息をし始めたので、ドクターは体を横にして水を吐かそうとしてくれ、呼吸状態も脈拍を見てくれました。私自身は溺れた子供に何をしていいか自信がありませんでした」

ーお子さんは本当に怖かったと思います

「はっきりとした言い方ではないですがプールは嫌だと言ってます。当日は病院からホテルに帰った後発熱しました。帰宅後は夜中に起きて大泣きしたので覚えているのかもしれません」

ー「生きた心地がしませんでした」とツイートしていましたが、その出来事をあえて投稿したのは

「不慮の事故が起きないよう万全の対策をしてください。万が一溺れた場合、2、3分で見つけて引き上げたら助かる可能性が高いのです。もちろん事故を起こさないことが大切であり、やはり一瞬たりとも目を離さないつもりで水遊びを楽しんでください。同じ思いをする親御さんが1人でも減ればと思います」

不慮の事故は長期的には大幅減少

子どもの死因はかつて感染症が多くを占めていましたが、現在は先天的な病気や悪性新生物(がん)、不慮の事故が多くなっています。厚生労働省「人口動態統計(2020)」の子どもの死因順位によると、不慮の事故は0歳で5位、1〜4歳と10〜14歳で3位、5〜9歳で2位です。一方、交通事故、自然災害を除く子どもの不慮の事故による死亡数は、長期的な推移をみると、1980年の2545人から減少傾向にあり、2015年には247人と35年間で10分の1以下と大幅に減少しました。

消費者庁がまとめた「子どもの不慮の事故発生傾向」(令和3年度)によると、2016年から2020年の子ども(0~14歳)の不慮の事故1314件のうち、0歳が350件を占めます。さらに0歳~4歳では718件になります。

溺水(溺死)は、2016年~2020年で278件の死亡事故がありました。浴槽での溺水が131件と最も多く、次いで海、川など自然水域での溺水事故が99件でした。年齢別には、0歳~1歳は浴槽での溺水、より活動的になる5歳以上は自然水域で多く起きていました。医療機関からは自宅の家庭用プールで溺れた事例も報告されており、消費者庁は「小さな子どもは10センチの深さの水でも溺れる恐れがあります」と付き添う大人が子どもから目を離さないよう注意を促しています。

佐久市・佐久医師会が子育て不安の軽減を目的に展開する「教えてドクター!プロジェクト」でも、溺水を減らすため「子どもは静かに溺れます」とサイトで訴えています。「子どもが溺れるとき、バシャバシャと音を立てたり声を出して助けを求めるイメージがあると思いますが、現実は違います」と呼び掛けています。

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