涼風真世40周年記念ライブで、ドラマティックな歌声を披露「今までにない幸福感を味わいました」

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

宝塚歌劇団月組トップスターとして男役を極め、1993年に退団後も女優、歌手、声優として幅広く活躍してきた涼風真世さん。昨年デビュー40周年を迎えた彼女が、コロナ禍で開催を見送っていた待望の記念ライブ『涼風真世 40th Anniversary Live Time to shine “Fairy”』を、4月15日にビルボードライブ大阪、22日にビルボードライブ横浜で行いました。

涼風さんにとってはビルボード初登場、ソロのライブコンサートとしては2019年9月の『MAYO 100%』以来のステージ。観客との距離が近い大人の空間で、どんな歌声、表情を見せてくれたのか。大阪と横浜(共に2ndステージ)のライブをレポート。さらに、今の心境や今後の展望を聞きました。

小池修一郎さん作詞・SUGIZOさん作曲「地球の涙」を初披露

照明が暗くなり、聴こえてきたのは神秘的な台詞から始まる新曲「地球の涙」。2021年9月にリリースされたデビュー40周年記念アルバム『Fairy ~A・I~ 愛』に収録されている、小池修一郎さん作詞、SUGIZOさん作曲の新曲が、いよいよ観客の前で初披露されました。客席から登場し、ゆっくりと歩きながら歌い出す涼風さん。「この地球が 叫んでる」とさまざまな災害や紛争を憂いながら、“地球への愛”を綴る壮大な世界に一気に引き込まれます。

マニピュレーターを迎えたアレンジに、ピアノやドラム、ストリングスの音色がまざり合う力強いサウンド。そこに溶け込む彼女のドラマティックなボーカルはやはり唯一無二。今の時代を反映するメッセージが、渦を巻きながら魂の奥に到達するような歌声に心揺さぶられます。この最初の1曲で、彼女の生み出す独特の世界観が、赤や青のライトに染まるビルボードの空間に調和していきました。

歌い終わると、茶目っ気たっぷりに「むかし妖精、いま妖怪。涼風真世でございます!」とおなじみの挨拶。「こうして皆さまとお会いできるのは奇跡。今日は音楽を通して涼風真世の歴史を振り返っていきたいと思います」と笑顔に。

宝塚在団中から“歌の妖精”と謳われた涼風さんの大阪(2nd)での装いは、黒いジャケットにタイトな黒いパンツ、フワフワのヘア。2曲目、松任谷由実さんの「やさしさに包まれたなら」を優しくも包容力ある歌声で届けながら、端から端まで客席を見渡し、手を振る姿はやはり“永遠のフェアリー”です。宝塚トップ時代の代表作『PUCK』で松任谷さんから楽曲を提供してもらった縁もある涼風さん。「ユーミンさんの曲はあったかい気持ちになります。これからも歌い続けていきたいです」と話します。

瞬時に役が入れ替わる宝塚時代のメドレーや、一人デュエット

自身の足跡も紹介し、15歳のときに初めて宝塚歌劇の舞台に出会い、きらびやかな世界に心奪われて入団を決意したことなどを、身振り手振り、時には歌もまじえながら楽しげに披露。大劇場公演の初ソロで銀橋を渡ったという思い出の曲「It’s All Right with Me」などを軽やかに歌います。

続いて宝塚バウホール主演作のメドレー。弾むような曲に観客がクラップで応える「スウィート・リトル・ロックンロール」、いまも健在の男役低音ヴォイスで心情を一音一音に込めて歌い上げる『リラの壁の囚人たち』『赤と黒』などのナンバーは、40周年ならではのスペシャルな選曲で、フロアの興奮も高まっていきます。

さらに、初舞台から10年後の月組トップお披露目公演『ベルサイユのばら』より「我が名はオスカル」をはじめ、『銀の狼』『珈琲カルナバル』『グランドホテル』など、トップスター時代の歌をダイナミックなアレンジのサウンドと共に聴かせます。間奏でのたたずまいは実にクール、曲が始まり振り向くと、役が舞い降りたように情感豊かに歌うパフォーマンスで、鮮やかに作品世界へといざないます。

妖精パックの歌の前には、ジャケットを脱ぎ白いトップスで、「パック誕生」を愛らしい声色のロングトーン、振付も再現しながら披露。その直後には悪魔のメフィストフェレス役として「黒い翼」を、妖しい魅惑の粉を振りかけるように歌い上げるなど、変幻自在な声で魅了。

また、アルバム『Fairy ~A・I~ 愛』に収録されている他の曲も次々と披露。「大好きな歌です」と胸に手をあててから歌い出した「愛の面影」。『エリザベート』よりトートとルドルフの二役を歌い分けた「闇が広がる」では、アルバムの涼風ルドルフの声に合わせて、トートとして歌い切る“一人デュエット”。

この斬新な趣向に観客が驚いていると、そのまま客席奥に消えて、フェミニンなワンピース姿で登場し、男性パートと女性パートを新譜で同時収録した『ロミオ&ジュリエット』の「愛(エメ)」や、『マリー・アントワネット』の「愛したことだけが」も、自身の歌声とデュエットする形で届けてくれました。

「また演じたい」クレアの大ナンバー、ジンジンと伝わる歌声の振動

「私は様々なミュージカルに出会い、様々な女性を演じてきました。その中でもとても印象深い怖い役でした」と笑い、「歌います!」と気合いを入れてからスタートしたのが、ミュージカル『貴婦人の訪問』の「正義」。元恋人に復讐を果たすため黒豹と共に故郷に戻ってくる大富豪の未亡人クレアが、想いをぶつける大ナンバーです。

ジェットコースターに乗っているような振幅の激しいメロディに合わせて、全身を使ってエネルギッシュに歌い上げる涼風さん。その歌声の振動が、足元までジンジン伝わってくる迫力。歌い終わり、「クレア、元気でいるかな~。機会があればまた演じたいです!」と語ると、この日一番の拍手が沸き起こりました。

さらにオリジナル曲の「眠りの果て」「空だけはそこにある」を、万感の思いを込めて歌います。「今も歌を歌い続けていくことができる。こんな幸せなことはありません。見守り支えて下さっているすべての皆さまのおかげです」と何度も感謝。鳴りやまない拍手に応えて、真っ白な細身のドレスで再び登場し、アンコール曲「A-YU-MI(歩み)」を届けました。涼風さん自身が60歳の節目に人生を振り返って作詞した曲で、その目には涙が光っていました。

22日にはライブ配信も行われ、最後にカメラに向かって「ありがとう! 今度は生で会おうね」とメッセージ。「緊張していても歌を歌うと落ち着くんです。これからも歌っていってもいいですか?」という言葉に、惜しみない拍手が送られました。

◇  ◇

「宝塚トップ時代の歌を、当時と同じ音域で歌いました」

公演後に、涼風さんご本人に今回のライブについて、また今後の展望についてもお話を伺いました。

ーーライブを無事に終えられていかがですか。

「皆さまのお顔が見える距離で、生でお会いできたことに、今までにない幸福感を味わいました。初めてのビルボードライブでしたが、いつも新しいことに挑戦したいと思っているので、また新たな扉が開けたような気がします。40周年記念ということで、歌いながら今までの想いをかみしめることが多かったです」

ーーアルバム『Fairy ~A・I~ 愛』の曲をまずは聴いてもらいたいという想いが?

「はい、その想いが強くありましたので、1曲目に「地球の涙」を選びました。この曲は今の世の中の現状について考えることを提案できるような気がして、大切に歌わせていただきました。またデュエット曲は、アルバムの音源を活かした新たな趣向になりました」

ーーそのほかの選曲について。

「宝塚トップ時代の主題歌をすべて歌いたいという夢が叶いました。当時と音域など変えていないので、皆さまの心の記憶とリンクすればいいな、という気持ちで歌いました。また『貴婦人の訪問』は、涼風真世40年の歴史の中でターニングポイントになった作品。チャレンジの歌でしたが初めてライブでお届けすることができて嬉しかったです」

ーー今後どのような活動をしていきたいですか?

「オファーを頂ける限り、舞台人として役を演じるお仕事は続けていきたいですし、歌手としてもずっと歌っていきたい気持ちは変わりません。声のお仕事も一生続けていきたいです。また、40年歌い続けてきた私にできることは何かと考えたとき、私が日常でやっているボイストレーニングやストレッチを、皆さんにお伝えできる機会があればいいな、という想いが新たに芽生えました。歌を通して何かを残せるお仕事に携われたらいいですね」

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また、今回おこなわれた4月22日開催のビルボードライブ横浜公演は、5月24日に「MUSIC ON! TV(エムオン!)」で放送予定となっています。

■涼風真世オフィシャルブログ https://ameblo.jp/suzukaze-mayo/
■涼風真世 https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A007938.html

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