元宝塚歌劇団月組トップスター・珠城りょう「まだ何にでも挑戦できる!」という境地へ

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

宝塚歌劇団を卒業して約半年、元月組トップスターの珠城りょうは、少し伸びた髪を揺らし爽やかな笑顔を見せる。「今年の1月から新しい事務所に所属し、いろんなことがスタートしているのですが、やはり人との向き合い方はなんら変わらないです。自分が大切にしてきたものを、これからも大切にしていきたいです」。

そんな彼女のぶれないスタンス、現在の心境、4月5月に行うファーストコンサート『CUORE(クオーレ)』(イタリア語で「心」の意味)について、話を聞いた。

Official髭男dismの楽曲で初の生パフォーマンス

「在団中は、お芝居、歌、踊りのすべてにおいて『心』が大切だと思ってきました。私自身のコンサートは初めてとなるこの舞台でも、大切にしてきたものをパフォーマンスに込めてお届けし、その『心』を受け取ってくださったお客様が、元気に前向きな気持ちになっていただけるものにしたいです」と語る珠城りょう。

そんな思いで臨むコンサート『CUORE』の構成・演出・振付は、数々の映像や舞台に携わってきたベテランの川崎悦子。また、ミュージカルなどで活躍する俳優の上口耕平をはじめ、実力派の共演者がそろい、スペシャルゲストとして元雪組スター・彩凪翔、元星組スター・愛月ひかるを迎える。

「川崎先生には『何か新しいものに挑戦してみたい』とお伝えし、川崎先生も『珠城さんのダイナミックさを活かしたダンサブルなコンサートにしたい』とおっしゃってくださいました。どんな新しいことに挑戦するかは、お楽しみにしていただきたいです」と明るく話す。

長身で小顔、スタイル抜群の彼女のキレのあるダンスは、観客を大いに惹きつける。「今までは男役というジャンルのダンスをやってきたので、その男役の枠がなくなったとき、自分の表現はどういうふうになるのだろうと、とても興味があったんです。川崎先生の振付で、また新しい自分に出会えると思いましたし、ワクワクしています。家では音楽をよく聴き、そういうときに自然と体がのったりしますけど、舞台でダンスを表現するのはまた全然違います。そのときにしか味わえない解放感、爽快感があるので、それをまた感じられるのかと思うととても楽しみです」。

現時点で公表できる楽曲は、宝塚在団中にカバーし話題となった、Official髭男dismの「Amazing」。「ファンの皆さまにとって映像と音でしか知らなかった楽曲ですが、今回生で初パフォーマンスさせていただきます! 宝塚の曲もいくつか歌います。在団中に演じたものではなく、下級生時代にファンの皆さんが、『この役を珠城さんで観たかった』と挙げてくださった中から選ばせていただきました」と、ファンの『心』に寄り添った内容なのが彼女らしい。

また、スペシャルゲストの彩凪、愛月については、期がそれぞれふたつ上、ひとつ上と近かったため、下級生時代からたくさん刺激をもらったという。「『タカラヅカスペシャル』(年に一度、各組のスターたちが集うイベント)では自身の組のこと、お芝居のこと、男役のことなど熱く語り合ってきました。そして『いつか一緒に芝居をしたいよね』と言い合っていたので、ぜひお二人と宝塚の曲を歌えたらいいなと思っています」。

5年間トップとして踏ん張れたのは、月組のみんなの存在があったから

宝塚在団中は早くからの抜擢に応え続け、入団9年目で月組のトップスターに就任。『グランドホテル』などの海外ミュージカルから、武将の生き様を誇り高く演じた日本物まで、幅広い舞台で魅了した。

「私が5年間トップとして踏ん張れたのは、どんな荒波のなかでも信頼してついてきてくれる、月組のみんなの存在があったからです。みんなと築いた絆は、今振り返ってもありがたく、温かいものでした。さらに先生方、スタッフの皆さま、たくさんの方から愛情をいただいてやってこれたので、その皆さまの思いを胸にこれからも頑張っていきたいです」と、感謝の言葉を忘れない。

在団中は宝塚の舞台を観劇するとき、勉強として学ぶ部分が多かったが、「今は同じ時代をともに過ごしていた皆さんが、このような厳しい状況の中でもキラキラと夢を届けてくださっている姿に、純粋に『素敵だな、愛おしいな』と思います。本当に『みんな健康で頑張ってほしい!』という気持ちで温かく観ています」と卒業後の心持ちも変化した。

また昨年11月、花組・月組誕生100周年に際して行われた公演『Greatest Moment』では、歴代のスターたちに交じり、フレッシュに華やかに歌やダンスを届けた彼女は、先輩OGから忘れられない言葉ももらった。

「『まだまだこれからだよ。これからの人生のほうが長いんだから!』というお言葉をいただき、私は卒業後の新しい道のなかで、『元宝塚トップ』の『宝塚』がなくなったら、自分には何も残らないんじゃないかと思っていたのですが、『まだ何にでも挑戦できるんだ!』と気づきました。色々な形でご活躍されている先輩の皆さんとご一緒した時間は、私にとりとても意味があり、幸せでした」

新たなボイストレーニングで歌の概念がかなり変わった

「一日24時間では足りず、日々奮闘していた」トップ時代とは違い、今は穏やかな日々。「自分のマイペースさ、のんびりしている性格を再認識しています」と笑う。「在団中とは運動量も激減していますので、いいパフォーマンスやプロポーションを保つためジムに通い、自宅で筋トレをし、食事にも気をつけて過ごしています。今年1月から、今コンサートの歌唱指導にも入っていただく『花れん』さんのボイストレーニングにも通い出しました。そのレッスンの方法が独特で、音域だけではなく細かなところを色々と突き詰めて新しいことに臨んでいます。歌の概念がかなり変わりとても楽しいです」と声を弾ませる。

この先の未来も、柔軟な姿勢で進んでいきたいという。「舞台、映像、それ以外のお仕事にしても、『珠城りょうにやらせてみたい』というお声をいただけば、まず挑戦してみたいです。これから活動していく自分には何が合うのか、何が求められているのか模索し、一度やると決めたら臆せずチャレンジしていきたいです」。

その第一歩となる「珠城りょう 1st コンサート『CUORE』」は、4月30日(土)~5月3日(火・祝)に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」にて、5月13日(金)~5月15日(日)に「東京国際フォーラム ホールC」で上演。チケットは3月26日(土)から発売開始。彩凪翔のゲスト出演は4月30日(土)、愛月ひかるのゲスト出演は5月13日(金)・14日(土)。

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