tl_bnr_land

「カラオケ番組の絶対女王」と呼ばれて……新妻聖子 “ただうまいだけの歌”との違いは? 鋭い観察眼「細部に神は宿っている」

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

日本トップレベルの“歌うま”として多くの人に認識され、コンサートやミュージカルで観客に感動を与え続けている新妻聖子さん。しかし、10年ほど前は「なかなか名前を覚えてもらえない」との葛藤も。急転したきっかけは、「最強カラオケ王No.1決定戦」。6連覇を果たし“無敗の絶対女王”に。

「いまだによく『カラオケ番組観てますよ!』と声を掛けていただくのですが、実はもう何年も出ていません」と笑う新妻さん。「よほど当時のインパクトが強かったのか、“カラオケ番組の新妻さん”という記憶があるみたいです」

当時を振り返っての思いや転機、歌うまの秘訣などをインタビューでうかがった。

■本気の勝負で挑んだカラオケ番組

父の仕事の都合で11歳から7年弱をタイで過ごした帰国子女でもある新妻聖子さん。音楽好きの両親の影響で幼い頃よりさまざまなジャンルの歌に触れ、学生時代から歌手を目指した。

そして、5000倍のオーディションを勝ち抜いて、2003年の『レ・ミゼラブル』(エポニーヌ役)で、彗星のごとく舞台デビュー。その後もミュージカルのヒロインなどに抜擢されるように。

英語のポップスも流麗に歌い上げ、美しいビブラートや音程の精度といったテクニックはもちろん、彼女が歌い出すと一気に曲の世界が壮大に広がっていくのが圧巻だ。

順風満帆に見えたが、「一度舞台を観ただけのミュージカルファンではないお客様からは、『〇〇役の人すごく歌がうまかったね』という印象で止まっている」、と当時は感じることも多かったのだそう。

そんななか転機となったのは、テレビ朝日系音楽バラエティー『関ジャニ∞のTheモーツァルト 音楽王NO.1決定戦』の企画「最強カラオケ王No.1決定戦」だった。

「最強カラオケ王No.1決定戦」の挑戦者たちは、新妻聖子さんを目標に勝負の台に立ち、歌声を披露して、「やはり勝てない」というふうに肩を落とし去っていった――。

当時の心境をたずねると、「採点は“ガチ”でしたので、もうプレッシャーなんてものじゃなくて……! 番組も『絶対女王』というフレーズで盛り上げてくださっていたし、雰囲気的に私が負けるわけにはいかない。回を重ねるとそのプレッシャーがさらに大きくなり、収録日に必ず体調を崩すようになりました。足が震えて、歌唱する台に上がる時、転んだこともあります。本当によく頑張った!」と、自分を鼓舞するように笑顔で振り返る。

万全ではなかったというのが信じられないほどの歌唱力。過酷なプレッシャーの番組に出演し続けた理由を、新妻さんはこう打ち明ける。

「もちろん点数で競うのですが、そのなかで“本当にいい歌を聴かせたい”“いいパフォーマンスで競わせたい”という理念のある番組だったので、そこに共感し、出演を続けました。

(カラオケ採点機器の)100点だけを目指すと、諦めないといけない表現がたくさん出てくるのですが、そうではない戦いだったので、私には向いていました」

■“新妻聖子”としての記憶が積み上がる喜び

その結果、歌声だけでなく、これまで覚えてもらえなかった名前が視聴者や観客の記憶に残っていく。

「新妻聖子と名前を認識して、劇場に足を運んでくださる人が増えたと感じたのが、ちょうどそのカラオケ番組に出演するようになった2016年頃。チケットセールスも目に見えて伸びましたし、客席の“期待感”というか、空気が違うのを感じました」

それまで彼女の舞台を観ていた人も、カラオケ番組であらためて、「あの歌のうまい人だ!」と「答え合わせ」ができたのではないだろうか。

「顔と名前を知った状態で足を運んでくださるから、お客様の中にもきちんと記憶が積み上がっていくわけです。それまではラベルが付けられず消えてしまっていた観劇体験が、“新妻聖子”という名前が認知されたことによって、ステージを重ねるごとに加点として積み上がっていく。そんな手応えを感じるようになりました」と、明かしてくれた。

■録音した歌声を聞いてみると――

そして2025年8月に、17年ぶりのミュージカル・アルバム『MUSICAL MOMENTS 2』をリリース。新妻さんが何度も出演した『ミス・サイゴン』の名曲「命をあげよう」、城田優さんとのデュエット「Beauty and the Beast」、 “エンダー”と親しまれている「I Will Always Love You」など、全10曲が収録されている。

そのレコーディングに入る前の2025年1月に、44歳で第二子を出産。新生児だった次男を抱っこしながらレコーディングを進めたというエピソードは、さながら『ミス・サイゴン』のヒロイン、キムのよう。育児と並行し妥協なく仕上げたと言う渾身のミュージカル・ベスト盤だ。「誰が聴いてもいい曲、日本語の音源が存在していない曲を優先的に選びました」。

デビューしてから22周年…歌への向き合い方は、どのように変化しているのだろう。

「今は無理のない範囲でコンサートやテレビ出演を続けていますが、総じて取りつくろわず、ありのままでいたい、というのを意識しています。コンサートやライブでは、目の前にいる人に喜んでいただくという、シンプルなイメージを大切にして」

もともと専門的な歌の勉強はせず、「歌が好き」という気持ちを軸にこの世界に飛び込んだ彼女は、「どうすれば歌がうまくなりますか」と訊かれることもよくあるそう。そんなときの答えはいつも決まっている。

「『練習するしかないです』とお答えします。生まれもった声質、音感、音域というのは人それぞれありますが、やはり練習しなければうまくなりません。私も『好きこそものの上手なれ』で、こだわってこだわって取り組んできました」

今も変わらず練習するうえで大事にしているのは、「現状把握です。自分の今の現在地をクリアに把握すれば、伸びます。自身で美化してしまっているところも、録音した歌声を聞くと、現実を突きつけてくれると思います」と、説得力のある言葉。

それは彼女自身、大好きなセリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンの歌を歌う時も実行した。

「ココまで歌えているという気持ちがあっても、録音した声はそうじゃなかったりします。では何が足りないのか。音程のキープ力なのか、ニュアンスなのか、声のフレキシビリティなのか……。そこを突き詰めていく作業になります」

そうやって、ほんのわずかなことに調整を重ねていくのは、「細部に神は宿る」という信念のもと。

「心に張りついて離れない歌というのは、ほんのちょっとしたことなんです。表現としてあえて逸脱していい部分もあれば、絶対に高い精度で決めなければならない音もある。“ただうまいだけの歌”と“プロの歌”の違いは、やはり細部に宿るものだと思います」

そこに気づける鋭い観察眼が、心をわしづかみにする歌を生み出している、とも言えるだろう。「いつも自分を批評的に見ながら、同時に、誰よりも自分の味方でありたいとも思っています」。

◇ ◇

17年ぶりのミュージカル・アルバム『MUSICAL MOMENTS 2』は、通常盤CDが3,500円。「サントリーホール」で開催したデビュー20周年記念コンサート『Seiko Niizuma 20th Anniversary Concert Tour ~HARMONY~』のライブ映像を収録したBlu-rayもセットの、Deluxe Edition(初回限定盤)は7,000円。

今後の主なコンサートは、3月7日(土)・8日(日)に大阪・枚方市総合文化芸術センターで『ミュージカル・ガラ・コンサート』、5月6日(水・祝)に軽井沢・大賀ホールで『新妻聖子アコースティックコンサート』に出演予定。

なお、1月20日にNHK総合で生放送される『うたコン』にゲスト出演。『うたコン ばけばけコラボ&冬うたSP』と題した同番組内で、「ペチカ~冬景色」を披露する。

■Official Website: https://www.seikoniizuma.com
■YouTube: https://www.youtube.com/@NiizumaSeiko
■Label Website: https://www.jvcmusic.co.jp/seikoniizuma

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース