「茶」と「チャレンジ」をかけた「茶レンジャー」が全国の茶産地に現れ、活躍の幅を広げている。茶農家が茶の入れ方を教える出前授業や大学生が企画した地元の茶店を回るスタンプラリーなどそれぞれ別の団体の活動だが、茶産業のために挑戦する志は同じだ。新たな茶レンジャーも誕生し、関係者からは「サミットを開催してもいいのでは」の声も上がる。
生産量でトップ争いをする静岡県や鹿児島県のほか、「宇治茶」ブランドが観光資源でもある京都府内の茶産地では、価格低下や生産農家の高齢化による産業衰退への危機感がある。「茶レンジャー」は、産業振興の取り組みの一環として各地でそれぞれ独自に発案された。
静岡県富士市では生産から販売まで行う茶農家らが集まり、「お茶屋戦隊茶レンジャー」を結成。急須で茶を入れる習慣を広めようと、小学校で煎茶の入れ方の出前授業を2013年から続ける。結成時のメンバーの山田典彦さん(44)は「覚えやすさと、子どもたちに身近に感じてほしくて戦隊ものをイメージした」と話し、授業では色で分けたコスチュームを着る。市内の半数以上の学校に出向き、岩手県へも進出するなど活動範囲が広がりつつある。
鹿児島県志布志市の製茶会社は、農薬などに頼らない独自農法をアピールするため、害虫駆除や雑草除去などを担う5台の機械に「茶畑戦隊茶レンジャー」と名付けた。「チャレンジ」の社風で、社長の遊び心も入った名前だ。担当者は「裏設定では、操縦する社員も茶レンジャー。やる気につながっているのでは」と話し「他の茶レンジャーが有名になってくれればこちらの宣伝になる」と前向きだ。
京都文教大(京都府宇治市)の「宇治☆茶レンジャー」は、結成して12年目になる。地域連携プロジェクトとして学生がメンバーとなり、市内で茶を扱う店を巡るスタンプラリーや、動画での発信で盛り上げる。スタンプラリーは市外からの参加も増えて1万人規模にまで拡大し、同時に「宇治茶」は観光資源として成長してきた。
名称は初期メンバーの学生の発案だった。当時から担当教員だった京都文教大の森正美副学長は「最初は『(名前が)ありきたりでは』とも思ったけれど、学生自身が一歩踏み出したいという思いが込められていると感じた」と振り返る。イベント期間中、学生が茶レンジャーとして現れるアイデアにもつながった。
他にも滋賀県には滋賀県立大の学生が活動し、静岡県島田市では中学生が考案した茶レンジャーがイベントに登場してSNS(会員制交流サイト)に投稿している。京都府内では宇治田原町が保育所での事業に「体づくりデ茶レンジャー」と命名し、同志社女子大(京都府京田辺市)の学生は昨年「茶れんじゃー」を結成して動画投稿サイトで発信する。
「安易な駄じゃれでは」という声もあるが、シンプルで覚えやすいおかげか、活動は各地で定着しつつある。宇治市の茶レンジャーでは、元メンバーが昨年10月にオープンした観光施設で宇治茶の普及に尽力するなど各地で新たな展開も見せる。
宇治市のまちづくりにも関わる森副学長は「(茶レンジャーが)各地にあるとは知らなかった。イベントで茶レンジャーサミットとかいいかも」と連携も視野に入れる。