「京都・西陣の職人仕事残したい」 はぎれでアクセサリー、帯地で洋服…学生が起業続々

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 京都市上京区の西陣地域を拠点に大学生2人が起業し、若い感性を生かしたものづくりに挑んでいる。廃棄される絹糸や帯のはぎれを再利用したアクセサリーと、西陣織の布地で仕立てた洋服で、それぞれブランドを立ち上げた。2人は「日常使いできる商品を開発し、伝統産業の技術を未来につなげたい」と意欲を語る。

 アクセサリーを手掛けるのは京都外国語大4年宮武愛海さん(23)=中京区。一昨年秋に西陣の事業者が集う「西陣サロン」に参加したことがきっかけで、西陣織やレースの製造業者に出会った。会社を訪ねると、縫い損ねた絹糸や帯地のはぎれが捨てられており、「こだわりの素材なのにもったいないと感じた」という。

 糸や生地を譲り受け、知り合いのハンドメード作家とともにピアスやネックレスを作り、昨年6月にアクセサリーブランド「sampai」を立ち上げた。ブランドのホームページを通じて販売している。宮武さんは、不要品に手を加えて価値のある物に作り変える「アップサイクル」は「若者に関心の高い分野。身近なものから伝統産業に関心を持ってもらいたい」と話す。

 一方、西陣織で仕立てた洋服のブランド「N’s1182」を設立したのは京都産業大3年前田雄亮さん(21)=上京区。祖父の代から西陣織を製造する家に生まれた。幼い頃に比べて家に出入りする業者や職人の数が減り、業界の衰退を肌で感じてきたという。

 需要を復活させたいと思いついたのが、帯地を洋装に利用することだった。一昨年11月、市などが主催するビジネスコンテストに応募したところ、準優勝。手応えを感じ、本格的にズボンやジャケットの製作に取りかかった。

 「洋服に適した生地を完成させるのに、予想以上に苦労した」と前田さん。帯地は長さ5メートル弱だが、ズボン1着に10メートル近く必要なため、特別に織ってほしいと職人を説得した。雨やクリーニングを考慮して耐水テストを繰り返し、肌触りにもこだわった。試行錯誤の末、昨年12月に黒とグレーの絹地で仕立てたズボンとマスクが完成した。

 前田さんは「西陣の職人の仕事を残すために、いかに日常使いしてもらえる品を作るかが課題。ジャケットや帽子などアイテムを増やしたい」と話す。販売に向け準備中で、商品はインスタグラム「ns1182jp」で見ることができる。海外にも販路を広げたいという。

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