デスクが散らからない人の「習慣」はすごいけど…努力しても同じようにできないときは? 公認心理師のツイートが話題

中将 タカノリ 中将 タカノリ

デスクが散らかっていない人の習慣がSNS上で大きな注目を集めている。きっかけになったのは公認心理師で漫画家の白目みさえさん(@misae_yjm)による以下のような投稿。

「デスクが散らかってない人を観察してみたところ

何か作業が一区切りする度に『整理』『片付け』の時間を設けていた。クリアファイルや引き出しなど『片付ける場所』が既にあって、時には『とりあえずBOX』的なものも用意されていた

まさに『お片付け術』実践中じゃん!って 思ったんだけど…」

白目さんはさらにデスクが散らかっていない人の習慣について

「いつその術を身につけたのか聞いてみたら 『別に誰からも教わってない』とのこと
『お片付け術』は『できる人』にとっては 自然にできるほど簡単だけど
『できない人』にしてみたら 『その術を覚えて忘れないように実践する』の ハードルが既に高い」

「『努力過程ではなく結果が全て』なのであれば 無理に努力して苦手な方法を練習するよりも 自分に合った方法で辿り着いてもいいと思う
一見『理想通り』の方法ではなくても 『片付け』が上手になるより 『無くしたら困るもの』にGPSをつける方が 結果として無くしものは減る」

と分析し

「どうして自分はみんなと同じ方法を 試しても同じようにできないんだろう… と思ったときは 『それなんのためにやるんだっけ?』 と一度考えてみて欲しい」

と呼びかける。

たしかにデスクを整理整頓することのそもそもの目標は、仕事を効率よく進めたり、必要なものを見失わないようにすること。整理整頓に気を取られ、それに執着したりストレスを溜めてしまうようなら初めから別の手段をとればいいのだ。

白目さんの一連の投稿に対し、SNSユーザー達からは

「あああ、本当にまさにその通りだと思いました……」
「俺は整理されないままのとりあえずボックスが増えていくんだよなぁ」
「ただ、デスクが整理されてる事が必ずしも本人の作業にメリットがあるとは限らず。
一見(他人から見れば)散らかっていても、本人にとっては意味のある配置(マッピング)されてる物だったりするので。社内の風紀を優先しすぎて個別の事案を押しつぶす事にならないようにバランスは必要かなと」

など数々のコメントが寄せられている。

   ◇   ◇

白目さんにお話を聞いた。

ーー今回のご投稿の趣旨をお聞かせください。

白目:あの投稿の趣旨としては、私は心理士の仕事をしておりますので、伝えたかったのはどちらかというと後半でして。

「片付け」がきっかけではあるものの「片付け」に限らず「努力をすればできるだろう」と思われる事柄はたくさんあります。ただ発達障害の方や精神疾患をお持ちの方にとってはその「努力」の量が他の人と全然違うということがあります。

片付け以外の例ですと、「聴きながらメモを取るとミスが減る」というミスを減らすための方法がありますが、同時作業が苦手な方や文字を書くのがそもそも苦手な方であれば、聞くことに集中した方がミスを減らすには有効です。

でもいつの間にか「メモを上手に取ること」を評価される空気になることがあり、ミスがなくてもメモを取らないだけで責められるという事態にも発展しやすくなります。

だからこそ「なんのためにやるんだっけ?」と一度考えてみて欲しいという意味を込めて一連のツイートを書かせていただきました。手段と目的を取り違えないようにというのは、私も臨床現場で常に意識していることなので、そこを伝えたくて書かせていただきました。

ーー白目さんご自身は片付けに自信がある方ほうでしょうか?

白目:自信はありませんし、好きではありませんが「やります」。

というのも私は記憶力があまり良くないので、物がどこにあるのかということを瞬時に思い出せません。場所を決めておけば覚えておく必要がなくなるので、「記憶を外に置くため」に片付けているなと思います。

あとは人が来るときに「きれいにしてるね」と言われたいという見栄っ張り根性で片付けてはいますが、普段は「とりあえずBOX」が増えていくタイプです。余暇が出来たからと言って片付けにわざわざ時間を割く方ではありません。

ーーご投稿にある、自然に片付けできる人を観察した感想をお聞かせください。

白目:たまたま社内のマナー研修のようなものがあり、その資料の中に「お片付け術」のようなものがあったのでなんとなく一読し、実際に片付けている人を見てみると、作業が終わるごとに机の上がきれいになっていることがわかりました。

それで「これを実践中なのか」と聞いてみたのですが「いや昔からこんな感じだけど」と返された次第です。

その方は元々お片づけが好きで、秘訣なども聞いてみたのですが、「そもそも物を増やさない。最低限の物しか置きたくない」と答えられ、その方にとっては「片付けていたいから片付ける」というようにお片づけ自体が目的のようでした。

そこでも「目的が私と違う」と思いました。同じ「片付け」でも彼女のように「片付けていたいから」が主目的であるが故に物を増やそうとしない人もいれば、私のように紛失を避けるためやスッと必要なものを探せるように片付けている人もいるんだと思いました。

私は便利なものは取っておきたいタイプですし、ものが多いことについて困ってはいないので、彼女のように「物を減らしてても片付けておきたい」という思いは持てないなと思いました。

ただ彼女が実践していた「一区切りしたら一回片付ける」はやってみようと思いました。私の場合は「一区切り」が「終業時間」なのですが、どこかで一度区切りをつけることで作業効率も上がるかなと思いましたので、それは実践しています。なんとか今のところできています。

ーー「デスクは綺麗であるべき」というような世間の同調圧力へのご感想は

白目:私は「デスクが汚い方がいい」と伝えたいわけではありません。一言で言えば「困ってないならどっちでもいいのでは?」という感想です。逆に言えば「困ってること」があるのなら対処を考える必要がありますが、それは必ずしも「片付け」ではないかもしれません。

先のお答えと重複するところもありますが、基本的には「なんのために?」に立ち返る必要があると思います。「物が無くなるから」であれば、コピーを取っておく、最初から原本は持たないなど、片付け以外の方法でも対処できるかもしれません。「見た目が汚いから」であれば、デスクを移動させたり散らかったところを引き出し内に収めたり段ボールに詰め込んだり…という形で対処できるかもしれません。

もちろん被害を受けている側がその被害に対して怒るのはわかります。虫が湧いたとか書類を紛失されたとか。それは怒って改善点を求めるのも理解できます。その対処法のひとつが片付けであることも多いでしょう。

ただ自分が迷惑を被ったわけでもないのにデスクが汚い人に「腹が立つ」という方もいらっしゃいます。その原因のひとつとしては「自分だってやりたくないけど頑張ったのに」という思いがあるのではないかと思います。

また子育て中のアカウントの方も多いので、「子育てのやり方」も一人歩きしがちで、「なんのために」を見失いがちであるため、自分の中にある「謎のプレッシャー」から解放されたというお声もいただきました。

   ◇   ◇

読者の皆さんも物事に取り組む上で、いつの間にか目標と手段がすり替わってしまっていたということはないだろうか?家事や仕事にプレッシャーを感じる時は、一度立ち止まってより自分に合った方法を見つけるのがいいかもしれない。

なお今回の話題を提供してくれた白目さんは5月19日に、心理士として相手が信頼する話の聞き方や人が自殺に陥る心理プロセスなどについて綴った「白目むきながらカウンセラーやってます」(竹書房)を出版予定。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

   ◇   ◇

【白目みさえさん関連情報】

▽Instagramアカウント
https://instagram.com/misae_mon/
▽Twitterアカウント
https://twitter.com/misae_yjm
▽ブログ
https://hibishirome.nbblog.jp
▽「脱力系育児マンガ 日々白目むいてます」(SBクリエイティブ)
https://amazon.co.jp/gp/product/4815608849/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4815608849&linkCode=as2&tag=shiromemisae-22&linkId=837f67084766ac99dfa0f1311074b7b2
▽5月19日発売予定「白目むきながらカウンセラーやってます」(竹書房)
https://amzn.to/3MR0PId

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