「子どもはカエルが好き。」大人が悲鳴を上げると、カエルを気持ち悪いものだと思ってしまいます。苦手な人は、離れてみてください。--これは公園にカエルを見に来た子どもたちの保護者に向けた注意です。「大人向け」にポスターを掲示した管理者にその理由や思いを聞きました。
「ヒキガエルの産卵を見に来た子どもたちが『がんばれー!』と応援している一方で、カエルの多さや体の大きさに『イヤー!キャー!』と叫んでいる大人の声が気になる。楽しくカエルを見ている子どもに対して良くない。来週、オタマジャクシで水面が真っ黒になる前に、大人へのメッセージを掲示しました」
今月12日、そんな文章とともに1枚の写真が投稿されました。写真に映っていたのは、東京都練馬区の光が丘公園内に掲げられたポスター。そこには、大きなヒキガエルと3匹の黒いオタマジャクシの絵も描かれています。公園管理を行っているSATO Masahiroさん(@hatomasahiro)の投稿には、掲示した理由に記されていました。
この投稿には、「人間って成長すると何故か生き物触れなくなって段々と嫌悪対象にしていきますよね...高校の頃クラスメイトが騒いでる中逃がしてあげてたのでそれを強く実感しました...」といったコメントが寄せられ、いいねは5万件を超えています。
投稿者に聞きました
ーーポスターはどういった場所にあるのでしょうか。
「ここは都立光が丘公園の一画にあるバードサンクチュアリという施設で、野生生物の保全区域になっています。わたしの団体は、生物を観察しに来る人に情報を提供したり、普及啓発をするために活動しています。ヒキガエルの産卵場所になっていることも知られていて、老若男女が立ち止まってのぞき込んでいきます。これを見るために来園するというより、この季節の風物詩として、散歩の途中で立ち寄るのを楽しみにしているようです」
ーーヒキガエルが人間に近寄ってくることはありますか?
「ヒキガエルは、水中に静止し、時折ゆっくり泳いだり、産卵のためにオスがメスに抱きついたりしています。カエルは忙しくて人間に興味がないので、向かって来ることはありません。なお産卵池は柵の向こうにあります」
ーーそれでも悲鳴を上げる大人たちがいる?
「私が近くで作業をしていると、子どもたちが喜ぶ声に混じって、大人の『キャー反応』も聞こえてきます。大きなカエルが何頭もいるのを初めて見て興奮しているようです。なかなか立ち去らないので、心底イヤなわけではないのかもしれません。結果として子どもの前で『イヤー!やだ〜!』とリピートし続けてしまうことが子どもに対してよくないのではないかと気になり、ポスターを作りました」
ーーヒキガエルのことをいつしか気持ち悪いと思ってしまうのは、大人の先入観が影響しているからかもしれませんね。
「私は子どもの発達について詳しいわけではありませんが、不快動物などと言われるものに対する認知の形成には、親や周囲の人の態度が影響しているということが言われています。ポスターを作る際には、子どもの興味を止めないでほしいということだけでなく、『キャー反応』をする大人にも興味を持ってほしいという気持ちで文言を考えました。カエルが嫌な人は無理して観察しなくていいのですが、カエルはそんなに変なものではないかもしれないよ、と軽くお伝えしてみたかったのです」
◇ ◇
投稿を見たユーザーからは、
「子供の好奇心を壊さないようなそういう人になりたいですね」
「虫採って帰ったら両親とも『よく採れたな』と褒めてくれました。ガの幼虫でも『飼ってみようか』といって手伝ってくれました。それのおかげで、一生虫好きです」
「今日飼っていたツノガエルが亡くなったので気持ちわかります...最後の一息までめっちゃ頑張って生きてるんですよね。飼っていると感情も性格もあるのがわかる。どんな生物でも『気持ち悪い』で片付けたくはない」
「冬に現場仕事してると冬眠中にカエルを掘り返すことがある。ごめんなぁ、て手に乗せて陽に当ててると暖かくて目を閉じてウトウトしてる、カワイイ」
などの反応が寄せられました。
◇ ◇
SATO Masahiroさんはヒキガエルの生態について、詳しく教えてくれました。「卵は1週間くらいでオタマジャクシになります。2畳くらいの小さな池なので、本当にオタマジャクシだらけになります。ところが子ガエルになる前に、相当数が捕食者に襲われます。この池はヒバカリという小型のヘビにとって格好の餌場になっています。こうしたヒキガエルの成長や捕食者の存在について、掲示物を通して紹介しています。ヒキガエルは実は陸生のカエルです。池にいるのはオタマジャクシの時まで。5月頃、子ガエルになると上陸し、林や草地へ移動していきます。たくさんの子ガエル園路を横断していくので、また『キャー』と盛り上がるわけですが(苦笑)。最近は公園の事務所も、『カエル横断注意』というやさしい看板を出すようになりました」。公園は子どもたちにとって生命の大切さを知る貴重な場所です、大人のわたしたちも再認識しておきたいですね。