多くの人にとって、一生に一度のライフイベントである「家づくり」ですが、「家は3回建てないと理想の家にならない」という言葉は本当なのでしょうか? 戸建注文住宅に住む全国の男女297人に、自宅の間取りについて「後悔した・失敗したと思ったことはありますか」と聞いたところ、半数以上(56.6%)の人が「後悔した・失敗した」と回答していたそうです。
ホームインスペクション(住宅の建物診断)や不動産業務支援などを手掛ける「株式会社南勝」が、2021年11月に行った調査です。「自身または家族が建てた築1年以上10年以内の戸建注文住宅」に居住中の全国25歳以上65歳未満の男女を対象にインターネットを通じて聞きました。
「後悔した・失敗した」と回答した168人に、「後悔している間取りはどこなのか」を聞いたところ、最も多かったのは「窓の位置」(26.8%)、次いで「狭いバルコニー」(17.3%)、「ウォークインクローゼット」(14.9%)をあげたといいます。
後悔した主な間取りパターンについて、同社代表取締役で、「住宅専門チャンネル Youtube不動産」で建築・不動産などのノウハウを解説している印南和行(いんなみ・かずゆき)さんは、以下のように解説しています。
【1:窓の位置】
広々としたリビング空間を演出するのに窓は重要ですが、窓の問題で多いのは、隣の家や近くの道路からリビングが丸見えになること。窓の位置を決める場合は、必ず近所の家の窓や周りからの視線を確認して、その視線から窓の位置をずらして配置するようにしましょう。視線を避けるために、高い位置に窓を付ける「ハイサイドライト(高窓)」も良いでしょう。ただ、ハイサイドライトの向こう側が隣家の2階の窓や近所のマンションから丸見えになったりする可能性もあるので、高いところからの視線もしっかりと確認してから設置してください。
【2:狭いバルコニー】
洗濯物や布団を干すためにバルコニーが必要という人も多いかと思いますが、昨今は花粉やPM2.5、黄砂等のために洗濯物を外に干すのをやめたという人や、共働きで夜しか洗濯物を干せないため、部屋干しニーズが高まっているとも言われています。
狭いバルコニーでは、結局洗濯物も布団も干さず、全く使っていない人も結構います。また、バルコニーの下に部屋があると、防水メンテナンスに結構費用がかかってしまうので、バルコニーが必要なければ、思い切ってなくすのもありです。
【3:ウォークインクローゼット】
収納の中でまず思いつくのがウォークインクローゼットですが、1帖程度のウォークインクローゼットだと、入って人が立っている所と奥の角部分がデッドスペースになってしまいます。
では、2帖程度あればどうでしょうか?この場合は、両側にハンガーパイプが付けられるので、角がデッドスペースになることはありませんが、やはり人が立つスペースはデッドスペースになってしまいます。その通路を有効にしようとすると、今度は通路が狭くなってしまい、結構動きづらいウォークインクローゼットになってしまうのです。
収納スペースの形は変わりますが、両側のハンガーパイプのスペースだけクローゼットとして部屋に付けると、デッドスペースはなく、面積が有効に使えるようになります。
ウォークインクローゼットを検討する際は、本当にウォークインクローゼットが必要なのか?単なるクローゼットではダメなのか?をしっかり検討してください。
【4:リビング階段(リビングにある階段)】
リビング内に階段を設けると、2階に行くためにはリビングを通らなければならないので、リビングに動線が集中し、「家族とのコミュニケーションが取りやすい」「リビングが開放的に見える」というメリットがありますが、子どもが友達を連れて来るようになると、友達も通ることになるので、散らかっていると気になりますし、くつろぎづらくなりがちです。
開放的なスペースを作ると、冷暖房効果が落ちてしまうだけでなく、音やニオイが階段スペースから2階に上がってしまうというデメリットがあります。もちろん、冷暖房効果は家全体の断熱性や気密性を高めることで解決できますし、音やニオイも対策はできますが、それはそれでお金がかかってしまいます。
【5:ウォークスルー型シューズクローク】
シューズクロークには、行き止まり型の「ウォークイン型」とそのまま家に上がっていく「ウォークスルー型」があります。「ウォークスルー型」の場合、家族がそちらを通って家に上がることを想定しているので、玄関がスッキリ片付くというメリットがありますが、その分ある程度の広さが必要なので、無理に設置すると玄関が狭くなってしまいます。玄関を広くとれる余裕があって、玄関に靴を置きたくないというこだわりがなければ、お勧めしない間取りです。また、シューズクロークはニオイが籠りやすいため、窓や換気扇を設けることがポイントです。
【6:トイレの位置】
家の間取りを考える上で、最後に帳尻合わせのように決まったトイレは後悔することが多いです。トイレの位置としては、リビングの近くにする場合、玄関の近くにする場合、水回りの近くにする場合などがありますが、それぞれの間取りで失敗があります。
▽リビングそばのトイレ
リビングでくつろいでいる家族がいる時や食事をしている時などに、トイレの出入りが見えてしまうと気になりますが、何よりも自他共に問題になるのは音です。防音対策をしっかり施していれば良いかもしれませんが、ニオイなどの問題もあるので、お勧めしない間取りの1つです。
▽玄関正面のトイレ
トイレのドアが玄関から見えると、家族の誰かが玄関でお客さんと話をしている時、トイレに行きづらくなってしまうので、トイレのドアは玄関から見えない位置にすることがお勧めです。
▽脱衣所を通るトイレ
脱衣所や洗面所を通らないと行けないトイレは、入浴のため脱衣所に鍵をかけると、トイレに行けない事態が出てきます。トイレは独立させて、別のドアから入れるようにしましょう。