京都大学定食、銀治郎丼…独自メニューが売り「餃子の王将」FC店が閉店 「ここが私の台所やった」 

京都新聞社 京都新聞社

 京都で40年余り、個性的なスタイルで親しまれてきた「餃子の王将」フランチャイズ(FC)店の烏丸鞍馬口店(京都市上京区)が昨年11月末、閉店した。「学生に優しい」オリジナルのメニューをそろえてきたが、店長が契約の定年を迎え、惜しまれながらその歴史に幕を下ろした。

 北海道や青森、名古屋―。閉店が決まって以降、全国からかつての常連客らがひっきりなしに訪れた。

 最後の日となった11月30日も、京都で学生生活を過ごした男性(25)が東京から足を運び、当時からの友人の男性(25)=京都市北区=と、かつてよく注文したという焼きめしセットをかき込んだ。「大学生の時は週に一度は学校の帰りに来た。僕らの青春の場所です」と当時を懐かしんだ。

 店長の國本政道さん(70)は、王将1号店の四条大宮店などで修行し、1979年11月に店を構えた。鍋をしっかり焼いて、野菜やご飯をいためる。そんな基本を忠実にしてきた料理と温かな人柄で、人気を集めた。

 学生の町である京都らしく、訪れる人は多くが大学生。彼らにおなかいっぱいになってもらおうと、単品注文よりも価格を抑えたセットを充実させた。

 「京都大学定食」や「大谷大学定食」「龍谷大学定食」など、市内8大学の名前を冠した定食。客がファンだった歌手浜田省吾さんのナンバーを引用した「J.BOY」や、アルバイト店員の名前を使った「銀治郎丼」。

 ジンギスカンやギョーザ、八宝菜、唐揚げといった料理を組み合わせるだけでなく、焼きめしの上にあげそばを載せるなど、個性的なメニューで楽しませた。

 「ようお金を使ってもろうて、ようかわいがってもろうた」と國本さんは笑顔で振り返る。両親と来ていた子どもが、大学受験合格や就職、結婚の報告をすることも。時には客がこぼす悩みにカウンター越しに耳を傾け、朝まで飲み明かした。

 2020年末に体調を崩したことで一時は調理場を離れ、大好きだった酒もやめたが、「店をやめようと思ったことは一度もない」という。

 フランチャイズ店の契約にある70歳の定年を迎えるため、2021年夏に閉店を伝える紙を店頭に貼ってからは、感謝の声が相次いで届いた。「いつもおいしい料理をありがとう」「ここが私たちの台所やった」

 客の言葉一つ一つが妻の恵津子さん(68)の胸に染みた。「すてきなお客さんがいるこの場所にあったからやってこられた」と謙遜しながら「うれしかった」と頰を緩ませる。

 閉店後は、同じ場所で次男の雄嗣さん(35)が建物を受け継ぎ、中華料理店「大雄燕[だいゆうえん]」として12月に再出発。國本さん夫婦も手伝っている。

 王将の最終日は営業終了時間の午後10時を過ぎても、常連客が笑い声を響かせていた。食事を終えても名残惜しそうにメニューにカメラを向け、國本さんと握手を交わす。そのうちの一人から店員らにビールが振る舞われ、國本さんはノンアルコールビールで乾杯した。

 「最後にふさわしい日やね」。閉店の11月30日は、國本さんの誕生日。その瞬間を家族と店内で迎え、烏丸鞍馬口店の歴史を終えた。

 FC店の閉店が相次ぐ理由

 京都府内では「餃子の王将」のFC店の閉店が相次いでおり、この5年で7店舗がなくなった。五条桂川店(西京区)も今年1月15日に営業を終えたばかり。王将フードサービスによると、代表者の70歳の定年や、商圏変化による売り上げの落ち込みが理由という。

 王将のFC店制度は1974年に始まった。全店共通メニューを基本にしつつ、地域の特色に合わせたオリジナル商品の販売やサービスの提供を認めている。古くからのFC店はその利点を生かし、個性的なメニューやサービスを展開していた。2020年に閉店した出町店(上京区)は、30分間皿洗いで食事を無料提供するユニークな取り組みで知られた。

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