「小銭大歓迎」ーー大阪にある書店のレジに14日、こんなポスターが張り出されました。「小銭大歓迎 ATMの入金手数料値上げでお困りの方、当店は両替金手数料値上げでツライです。どうぞ小銭を使ってやって下さい」。ユーモラスなイラストには思わず顔がほころびましたが、背景には小売業の苦悩が隠されていました。
「うちなら小銭大歓迎なのになあ」
ポスターを掲示したのはダイハン書房高槻店(阪急京都線高槻市駅)。ポスターを手掛けた同店店長に聞きました。
──ポスターを張ろうと思ったきっかけは?
「(銀行手数料値上げの)ニュースを見ていて、慈善活動をしている方が『振込は今日までにしないと手数料がかかるから』と仰っているのを見て『うちなら小銭大歓迎なのになあ』と思ったのがきっかけです。 小銭の入金に苦悩している人がいて、小銭の両替に苦悩している小売業がある。これってなんだか変ですよね。同じことを考えた人も多いはず、と思いながら書きました」
──「両替手数料値上がりでつらいです」とありますが、2021年2月の銀行の両替有料化が引き金でしょうか?
「その通りです。それまでは完全無料でやりくりしておりました」
──やはり両替手数料値上がりのダメージは大きかったですか?
「現在、最寄りの銀行では釣り銭用の両替が10枚まで無料です。10枚は雑誌510円のお買い物をされたお客様が千円札を出されたらお釣り490円=9枚でほぼ終了です。これでは商売出来ませんので、有料の両替に頼るしかありません。 11〜500枚、棒金10本で両替手数料400円なので、毎回釣り銭を確認しながら棒金10本をなるべく効率的に両替するようにしています」
「自分のプライベートな買い物でも、なるべく硬貨を使わず千円札を崩して小銭を貯めて、店で両替しています。やってみて気付いたのですが、これをやっても1日せいぜい10枚くらいしか貯まりません。 わずかな枚数だけど、月間棒金5本分くらいになるならと細々続けています」
──銀行での両替手数料は具体的にいくらほど?
「当店で月間4〜5000円といったところです。これはざっくりな計算ですが、鬼滅の刃45冊分の売上利益です。鬼滅の刃は23巻完結なので、約2セット分ですね。たかが数千円もバカにならないのが伝わりますでしょうか…」
──特に必要な金種は?
「圧倒的に100円玉です。次に10円。 500円、50円、5円は5枚分の価値なので、減りも遅いです。常備しているのは10円玉の3分の1くらいですね。逆に溜まるのは1円玉です。1円玉は端数に出されるお客様が多いので増えます。袋代を3円頂くようになりましたので前より増えている気がします」
小銭をめぐる「4コマ漫画」も公開
同店の公式Twitterアカウント(@booksDAIHANtaka)では昨年5月、「コロナ禍真っ只中で営業時間短縮を余儀なくされていた時、何かちょっとクスッとできる話題を」との思いから、スタッフが描いた4コマ漫画を公開しました。
内容は小銭入れがパンパンにふくらんだ高齢の買い物客に対し、レジカウンターのスタッフが「小銭出していいですよ」と小銭の受け渡し用トレイを差し出すシーンから始まります。小銭で山盛りになったトレイの中身を金種ごとに積み上げて数えるスタッフ。「整頓しお返しする時のスッキリ感がたまらない」のだとか。
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同店店長によると、冒頭のポスターは張り出して半日ほどしか経っていないため反応はまだないそう。店のTwitterにも写真を投稿し、反響を呼ぶことに期待を寄せています。
ゆうちょ銀行、17日から手数料新設
ゆうちょ銀行では17日から、硬貨取扱料金とATM硬貨預払料金が新設されます。
硬貨取扱料金は「お預け入れや払込み等の各種お手続きの際に、窓口へ硬貨をお持ち込みの場合、枚数に応じた料金がかかります」とし、硬貨枚数51~100枚で料金550円、101~500枚で825円、501~1000枚で1100円(以降500枚ごとに550円加算)。1~50枚は無料。
また、ATM硬貨預払料金は「ゆうちょATMでの貯金のお預け入れ・払戻しに硬貨を伴う場合、硬貨預払料金がかかります」。硬貨を伴う預け入れの場合、硬貨枚数 1~25枚で料金110円、26~50枚で220円、51~100枚で330円。硬貨を伴う払戻しでは硬貨枚数1枚以上で料金110円がかかります。