猫も「リハビリ」する時代に…ただ、犬よりも回復が難しい理由は?

理学療法士 下神納木 加枝

ネコデミー ネコデミー

人間のように、猫ちゃんも「リハビリ」をすることがあるのをご存知でしょうか。ペットの先進国である欧米やオーストラリアなどでは30年以上も前からペットのリハビリテーション(以下リハビリ)が実施されていました。ペットの高齢化に伴い、日本でもここ数年需要が高まり、獣医療の現場に広がり始めています。

【ポイント】
・ペットのリハビリが、日本で広がり始めている
・骨折や病気など、リハビリが必要になるケースがある
・猫ちゃんのリハビリは、ワンちゃんより難しい

獣医療はこの十数年で大きく発展し、多くの専門分野で外科手術が行えるようになりました。そこで必要になってきたのがリハビリです。整形外科手術や神経外科施術などの術後に、機能回復の重要性が注目されるようになりました。

また、予防接種や駆虫薬が普及するなど予防医学も進んだほか、フードも改良されて栄養状態も維持できるようになり、ペットの長寿化もすすんでいます。シニア期にはヒトと同じような身体の衰えが出てくるため、ケア・サポートの面からもリハビリが求められるようになりました。

一方、ペットには生まれつき関節が不安定な個体もいます。特に幼少期に親から早い時期に離された犬猫は、運動量が少なく筋力の発育が不十分なまま大人になってしまうこともあります。若い時期から予防的に「健康的なカラダづくり」をする必要性にも関心が高まってきています。

リハビリが必要になる状態とは?

交通事故や高い所からの落下による骨折や靱帯損傷など、整形外科系の術後にはリハビリがよく行われます。特に多いのは脊椎骨折や骨盤骨折のケースです。後ろ足の運動麻痺による歩行困難や排尿障害を伴うこともあります。また大腿骨などの骨折では関節の可動域が狭くなったり筋力低下によって歩行困難になることから、リハビリに取り組みます。

神経系では特発性多発神経根障害や多発性筋炎などにより四肢麻痺が起こるため、リハビリを行います。

循環器系でネコに起こりやすいのが心筋症です。その中でも肥大型心筋症の合併症で腸骨動脈塞栓症が起こり後肢麻痺が出現します。1~3日以内に急激に悪化することもあるので早急に治療が必要です。その後リハビリが求められます。

そしてシニア期ではネコは20歳を超える年齢のネコも最近は多くなりました。できるだけ自分で動けるようにするため、ケアが必要になってきます。

猫ちゃんのリハビリにはコツがいる

ネコのリハビリは、実施件数をみるとイヌに比べるとかなり少な目です。

イヌの場合は徒手療法、バランスボールなどを使用した運動療法、水中トレッドミル(水の中で歩く)や水泳などのハイドロセラピーなどがありますが、ネコはそもそも人に触られることが苦手だったり、水も怖がったりすることが多いので、リハビリがストレスにならないように工夫しながら進めていきます。

徒手療法とは直接患者(患畜)に触る手技のことですが、できるだけストレスにならないようにコミュニケーションをとりながら実施します。また、物理療法としてレーザー治療器などを使うこともあります。

ペットのリハビリは二足歩行であるヒトのリハビリで実施されてきたことを活かして、四足歩行の場合の筋肉や関節の動きを分析してプログラムを作成していきます。ヒトの場合は治療方針の決定はほとんどが患者本人が行いますが、ペットの場合は飼い主さんが決めることになります。人とペットが健康的で心身ともに豊かな生活が送れるようなサポートとして、リハビリは社会に必要なものになってくるでしょう。

◆下神納木 加枝(しもこうのき かえ)大阪府堺市出身。1982年生まれ。認定動物看護師。2005年理学療法士国家資格取得。7年間病院勤務。オーストラリア短期アニマル理学療法セミナーに参加。2012年から動物病院にてリハビリに携わり、現在つくば市でペットケアサロン経営、横浜市の動物病院、港区のペットのメディカルサロンの2カ所で契約。公益社団法人茨城県理学療法士会常任理事。愛猫ちゃんのためのお役立ちビデオ講座『ネコデミー』でも講師を務める。

【インスタ】
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