障害ある子猫、歩けたと思ったら骨折繰り返し 難病「骨形成不全症」疑いも、人間の治療薬で奇跡の“回復”

渡辺 晴子 渡辺 晴子

手足などに生まれつき障がいを持つ黒猫の玄(げん)ちゃん(雄、生後9カ月)。昨年9月から突然、原因不明の度重なる骨折に悩まされました。

翌月に動物病院を受診。遺伝子検査や外部研究機関での画像診断などを経て、11月に難病といわれる「骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう)」の疑いがあると告げられました。これまで猫が骨形成不全症と断定された症例は日本国内ではなく、治療方針が確立されていないとのこと。しかし、獣医師の勧めもあり骨密度を上げる薬の投与を始めたところ、徐々に骨密度が改善。今年3月には通常の生活では骨折する心配がない程度にまで回復してきたといいます。

玄ちゃんの闘病を支えてきた飼い主の「mei✽難病猫と闘病中」(@meioxonabari)さんは「骨形成不全症と言われて、とても不安でした。手探りの中で投薬をスタートさせましたが、玄の骨折はゼロに。通常の生活が送れるレベルにまで良くなり、とてもうれしかったです。ただ、これからも骨密度の向上、あるいは維持するための投薬は続きますし、まだ15歳のシニア猫と同等程度にしか骨密度がないので、もう少し上げてから減薬できればと」と話しています。

生まれつき下顎と手足などに遺伝性の奇形…黒猫の「玄」ちゃん

昨年8月、飼い主さんの自宅で生まれた玄ちゃん。出産直前に保護された澪(みお)ちゃんが母猫です。玄ちゃんの姉妹3匹は別のおうちにもらわれていきました。玄ちゃんは遺伝性の奇形があり、手足がねじ曲がった状態で生まれる「四肢奇形」や下顎が極端に短い「下顎短小変形」などの障がいがあります。

飼い主さんによると、玄ちゃんの両前腕は常に前倣え、両ひじは直角のままの状態で固まっているとのこと。後ろ足も骨がゆがんでいて、いわゆるがに股の状態だそうです。また、下顎(あご)が本来の長さより短いため、口を完全に閉じることができず、かみ合わせが悪くてかむ力も弱くなりがちだといいます。こうしたハンディがありながらも、玄ちゃんは飼い主さんの懸命なフォローもあって元気に過ごしてきました。

動き回れるようになった矢先、骨折を繰り返すように

「玄は授乳期から拒食を繰り返していたため、私の小指にミルクやちゅーるを塗ってなめさせるなどして水分補給やカロリー摂取の補助としていました。9月には固まった肘膝関節のもみほぐしや訓練のかいあり、たどたどしくも歩けるようになったんです」と飼い主さん。

さらに「ようやく玄ちゃんが動き回れるようになった矢先、骨折を頻繁にするようになって、大きな骨折だけでも15箇所以上。ひどいときには1日で2度の大きな骨折をして病院に駆け込むこともあったり…さすがにおかしいと思って10月にかかりつけの獣医さんに診てもらい、症例を調べてもらいました。自身でもインターネットで情報収集をしたところ、同じ症状で闘病していた猫のチャッピーちゃんを見つけ、骨形成不全症という難病を知ったのです。そこで詳しい検査などをしたところ、やはり玄も骨形成不全症を疑われたんです」と振り返ります。

人間の治療薬投与にチャレンジ 2カ月過ぎて骨密度が上がり改善へ

骨形成不全症というのは骨がもろく弱いことから、骨折しやすくなり、骨の変形をきたす先天性の病気。「指定難病」に認定されており、ヒトでも日本国内で推定6000人ほどの患者がいるといわれています。これまで骨形成不全症が疑わしい病状の猫はいましたが、猫で骨形成不全症と診断された症例は少なくとも日本国内ではなく、確立した治療法がないそうです。

治療法が確立されていないとはいえども、飼い主さんは玄ちゃんを「どうしても助けたい」という強い思いもあり、獣医師に勧められた投薬治療を決意。診断された11月から、人間の骨形成不全症の治療でも使われる「ビスホスホネート製剤」の投薬を始めました。

投薬2カ月を過ぎた今年1月から徐々に骨密度が上がってきて、2月には格段に骨密度が上昇。ここで、玄ちゃんの骨折する頻度も大幅に減ってきたそうです。3月と4月連続、さらに骨密度は改善して、通常の生活を送る分には骨折する恐れがなくなるレベルになったといいます。

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