猫パンチが元気のバロメーターだった猫 動物病院で遺した絆は、いまも続く 

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 こばやし動物病院には「かけがえのない絆を大切にし、愛と笑顔を分かち合います」という理念があります。スタッフはこの理念をもとに、飼い主さまとのコミュニケーションを通して、動物たちの治療にあたっています。今日は、すでに亡くなったタマリンちゃんが飼い主さまと私たちに残してくれた絆のお話です。

 タマリンちゃんは、とにかく気位の高い女の子。若い頃は、まさに血気盛んで、ワクチンを打つのも、つめ切りをするのも一大事でした。しかし、高齢になってから腎不全を患い、通院生活が始まりました。

 病院嫌いのタマリンちゃんにとっては大変なことだったと思いますが、お母さんと一緒に通院し、お注射も甘んじて受け入れてくれました。治療が終わり、キャリーバッグに入った瞬間に「よくもやったわね、シャー!」とパンチが飛んでくるのですが、この一撃が元気のバロメーターでした。

 診察中にはお母さんともたくさんお話をして、おうちでのケアで困りごとがあれば一緒に解決し、うれしいこともつらいことも共有してきました。そんな中、時折プライベートな話題に及ぶこともり、音楽好きなお母さんが、バイオリンを弾けるスタッフがいることを知ると「すてき。私も弾いてみたい」とおっしゃり、院内で開催されたコンサートで、バイオリン演奏にチャレンジしたこともありました。

 1年2カ月にわたる治療の末、タマリンちゃんが19歳で安らかに眠りについてから、はや2年がたちました。くしくも院内では、昨年から飼い主さまご家族を対象にしたバイオリン教室が始まっており、タマリンちゃんのお母さんもレッスンに通っています。タマリンちゃんが築いてくれた絆は、こうして今も続き、タマリンちゃんのお話をしたり、タマリンちゃんと同じように頑張っている子たちを応援してくれたりと、お母さんの愛と笑顔は、現在病院に通う動物たち、飼い主さま、私たちスタッフに元気を与えてくれています。

◆小林由美子(こばやし・ゆみこ) 獣医師。1990年開業の埼玉県ふじみ野市「こばやし動物病院」院長。米国で動物の東洋医学、自然療法を学ぶ。治療はもちろん予防やしつけなどにも造詣が深く、講演活動も行う。ペットと飼い主双方に寄り添う診療が信頼を得ている。

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